分離分析法

クロマトグラフィー各論:順相・逆相・イオン交換・アフィニティ【薬剤師国家試験】

クロマトグラフィー各論のマインドマップ
クロマトグラフィー各論のマインドマップ

前回は、クロマトグラフィーの基本原理・クロマトグラムの読み方・定量法までを扱いました。今回はその各論、つまり個別の「なんとかクロマトグラフィー」の中身に入っていきます。

前回の「移動相で液体クロマトグラフィー(LC)とガスクロマトグラフィー(GC)に分ける」という分類を頭に置きながら読むと、位置関係がわかりやすくなります。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。物理の解説授業は分光分析法の範囲をYouTubeで無料公開しているので、読むよりも動画で一気に見たい人はそちらもどうぞ。

液体クロマトグラフィーの分離原理は5つ

吸着・分配・イオン交換・サイズ排除・アフィニティ。この5つを順に見ていきます。

① 吸着クロマトグラフィー

シリカゲルの水酸基と試料が水素結合して吸着する
シリカゲルの水酸基と試料が水素結合して吸着する
  • 固定相:極性が高く吸着能を持つもの(シリカゲル。余力があればアルミナも)
  • 移動相:極性が低い溶媒

親和性の正体は水素結合です。シリカゲルの表面には水酸基(OH)があり、極性が高い。ここに移動相中の試料が水素結合でつかまるので、極性の高い物質ほど保持されて遅く出てきます。

順相と逆相 ─ 何をもって「順」なのか

ここで順相・逆相という言葉が出てきます。これは極性についての話です。

固定相 移動相 例
順相 極性が高い 極性が低い(有機溶媒) シリカゲル + ヘキサンなど
逆相 極性が低い 極性が高い(水など) ODS化シリカゲル + 水系

固定相の極性が高いほうが「順(基本形)」で、その逆が「逆相」。この軸だけ押さえておけば、どの名前が出てきても判断できます。

② 分配クロマトグラフィー

分配クロマトグラフィーでは、移動相と担体上の固定相液体の間で分配平衡が起こる
分配クロマトグラフィーでは、移動相と担体上の固定相液体の間で分配平衡が起こる

「分配」は分配平衡で出てきた分液漏斗を思い出してください。試料が有機溶媒層と水層のどちらに行きやすいか——あれと同じことが、カラムの中で起きています。

担体にまとわりついた固定相の液体と、流れてくる移動相の液体。この2つの液体のあいだで分配平衡が繰り返されることで分離が進みます。

ODS化シリカゲル:シリカゲルに炭素鎖を付けて極性を下げたもの
ODS化シリカゲル:シリカゲルに炭素鎖を付けて極性を下げたもの

現在もっとも使われているのが逆相分配クロマトグラフィーです。固定相には ODS化シリカゲル を使います。ODS化とは、シリカゲルに炭素鎖(C18)を結合させて油っぽくした、つまり極性を低くしたものということ。固定相の極性が低く、移動相が水など極性の高い液体になるので「逆相」ですね。

ここでの親和性は疎水性相互作用です。固定相が脂っこいので、極性が低い(脂溶性が高い)物質ほど保持時間が長くなります。順相とは逆になる点に注意してください。

③ イオン交換クロマトグラフィー

陽イオン交換体のスルホ基が、正に帯電した試料を捕まえる
陽イオン交換体のスルホ基が、正に帯電した試料を捕まえる
  • 固定相:イオン交換樹脂
  • 移動相:pH や塩濃度を調整することで保持力を変えられる

アミノ酸の分離に応用されるのが代表例です。

陽イオン交換体にはスルホ基(–SO₃⁻)などが付いています。ここに、正に帯電した試料が静電的につかまって保持される。一方、負に帯電している物質はつかまらないので早く落ちてきます。あとから移動相の pH を上げていけば、つかまっていたものも帯電を失って溶出してくる——これがイオン交換クロマトグラフィーの動き方です。

陽イオン交換樹脂では、等電点が低いものから出てくる

ここは理屈で追えるので、グリシン(pI ≒ 5.97)とグルタミン酸(pI ≒ 3.22)で考えてみましょう。

移動相の pH を 5.97 としてみます。

  • グリシン:ちょうど等電点なので電気的に中性
  • グルタミン酸:pI 3.22 より高い pH にいる。つまり [H⁺] が少ない状態なので、側鎖のカルボキシ基が電離して 全体としてマイナスに帯電している

すると、グルタミン酸は陽イオン交換樹脂につかまらず、先に出てきます。一方グリシンは中性〜わずかに正に帯電した状態で保持される。

つまり 陽イオン交換樹脂では等電点が低いものから溶出し、陰イオン交換樹脂では等電点が高いものから溶出する。丸暗記しようとすると取り違えますが、「その pH でその分子は何価に帯電しているか」を考えれば毎回導けます。

アミノ酸のラベル化

アミノ酸の多くは、そのままだと紫外部・可視部で目立ちません。そこでラベル化して検出しやすくします。ここは2つセットで覚えてください。

検出 ラベル化試薬
蛍光検出 o-フタルアルデヒド(OPA)
可視部検出 ニンヒドリン

ニンヒドリンは定性分析でも出てきましたね。アミノ酸を紫色に呈色させるあれです。

④ サイズ排除クロマトグラフィー

固定相の網目に、分子量が小さいものほど入り込む
固定相の網目に、分子量が小さいものほど入り込む

押さえることは1つだけ。分子量が大きいものから出てくる。

固定相が網目のようになっていて、分子量が小さいものはその中に入り込んでしまい、なかなか出てこられません。逆に分子量が大きいものは網目に入れないので、素通りして早く排出されます。

「大きいほうが遅そう」という直感と逆なので、仕組みごと覚えてしまいましょう。

⑤ アフィニティクロマトグラフィー

生物学的な親和性を保持に利用する方法です。抗原と抗体、酵素と基質といった特異的な結合を使います。

光学異性体の分離

液体クロマトグラフィーの応用として、光学異性体の分離も押さえておきます。3つあります。

方法 何をするか
キラル固定相法 固定相にキラルセレクターを結合させておく。対掌体のどちらが複合体を作りやすいかで分離
キラル移動相法 移動相にキラルセレクターを入れる。それぞれ違う複合体を作るので分離できる
ジアステレオマー法 光学異性体に別の光学活性な試薬を結合させ、ジアステレオマーに変換してから分離

前の2つは「キラルセレクターを固定相に置くか移動相に置くか」の違いだけ。ジアステレオマー法だけ毛色が違い、性質そのものが異なる化合物に変えてしまうのがポイントです。

ガスクロマトグラフィー

移動相が気体なので、分離する試料も気体でなければなりません。したがって、気体の試料か、加熱して気化できる試料に使えます。

キャリアガス(移動相)には不活性なガスを使います。窒素・水素・ヘリウム・アルゴン。ここは覚えてください。

種類は2つ

名前 固定相 原理
気固クロマトグラフィー シリカゲルなどの固体 吸着
気液クロマトグラフィー 担体表面に保持させた液体 分配

液体クロマトグラフィーの吸着型・分配型の考え方がそのまま使えます。

昇温による分離能の向上

カラム温度を一定速度で上げていくと分離能が上がります。沸点が低いものから高いものまで幅広く含まれる試料を一度にさばきたいときに便利な方法だ、というイメージで押さえておけば十分です。

検出器 ─ ここが一番よく出る

覚えることが多いところなので、語呂を使います。

ガスクロマトグラフィーの検出器と得意なもの
ガスクロマトグラフィーの検出器と得意なもの
検出器の語呂「ガス欠でエンジンSTOP、電波と水のみあるピクニック」
検出器の語呂「ガス欠でエンジンSTOP、電波と水のみあるピクニック」

「ガス欠でエンジンSTOP、電波と水のみあるピクニック」

語呂 検出器 得意なもの
ガス欠 ガスクロの検出器の話ですよ、という前置き —
でエンジンSTOP 炎光光度検出器 S(硫黄)・P(リン)をもつ化合物
電波と 電子捕獲(イオン化)検出器 特にハロゲン
水のみ 水素炎イオン化検出器 有機物(C–H結合があるもの)
あるピクニック アルカリ熱イオン化検出器 P(リン)・N(窒素)をもつ化合物

「STOP」の S と P がそのまま硫黄とリンになっているのが、この語呂のうまいところです。

語呂には入っていませんが、もう1つ。熱伝導度検出器は有機物・無機物を幅広く検出できます。選択性は高くありませんが守備範囲が広いタイプ、と押さえておいてください。

薄層クロマトグラフィーとろ紙クロマトグラフィー

最後に、形状で分類されるこの2つ。どちらも液体クロマトグラフィーの一種です。ここは「これは何クロマトグラフィーですか」という形で問われることがあります。

薄層クロマトグラフィー(TLC)

薄層クロマトグラフィー:板を展開槽に立て、溶媒が上がっていく
薄層クロマトグラフィー:板を展開槽に立て、溶媒が上がっていく

ガラス板などにシリカゲルを薄く塗ったものを、展開槽の溶媒に立てます。溶媒が上がっていく過程で、シリカゲル(固定相)と移動相への親和性の差によって物質が分かれていきます。

シリカゲルを使う場合は、順相・吸着型の液体クロマトグラフィーの一種として扱います。

定性には Rf 値を使います。

Rf値 = 試料成分の移動距離 / 溶媒先端の移動距離
Rf値 = 試料成分の移動距離 / 溶媒先端の移動距離

Rf = 試料成分の移動距離 / 溶媒先端の移動距離

溶媒と同じだけ動けば Rf = 1(最大値)、まったく展開しなければ Rf = 0(最小値)。つまり Rf は 0〜1 の値を取ります。この Rf 値はろ紙クロマトグラフィーでも同じように使います。

ろ紙クロマトグラフィー

移動相は液体、固定相はろ紙に吸着した水分です。つまり液体と液体のあいだの分配なので、分配型の液体クロマトグラフィーになります。

薄層は吸着型、ろ紙は分配型。ここが対比で問われる可能性があるので、セットで覚えておいてください。

まとめ

  • 液体クロマトグラフィーの分離原理は、吸着・分配・イオン交換・サイズ排除・アフィニティの5つ
  • 順相=固定相の極性が高い、逆相=固定相の極性が低い
  • 吸着型の固定相はシリカゲル(水酸基との水素結合)
  • 逆相分配ではODS化シリカゲルを使い、極性が低い物質ほど保持時間が長い
  • イオン交換では、陽イオン交換樹脂は等電点が低いものから溶出する
  • アミノ酸のラベル化:蛍光ならo-フタルアルデヒド、可視部ならニンヒドリン
  • サイズ排除は分子量が大きいものから出てくる
  • 光学異性体はキラル固定相法・キラル移動相法・ジアステレオマー法
  • GCのキャリアガスは窒素・水素・ヘリウム・アルゴン。気固は吸着型、気液は分配型
  • GCの検出器は「ガス欠でエンジンSTOP、電波と水のみあるピクニック」
  • 薄層は順相吸着型、ろ紙は分配型。どちらも液体クロマトグラフィーでRf値を使う

次は電気泳動法:キャピラリー電気泳動とSDS-PAGEを読んでみてください。分離分析法のもう一方の柱です。

物理を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、物理という科目のほんの一区画です。実際には、物質の物理的性質から化学物質の分析、放射化学までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

公式をバラバラに覚えようとすると物理は苦しくなりますが、「この式がどこから来て、どこにつながるのか」が地図として見えていると、覚える量そのものが減ります。細切れに暗記してきたものが、1本の線になる感覚です。

物理のマインドマップ(¥3,500)は、その全体像を1冊にまとめたPDFです。無料サンプル(分光分析法の範囲)と、地図をたどりながら話すYouTubeの講義動画があるので、この進め方が自分に合うかどうかは先に確かめられます。

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