代謝と活性化

Ames試験の原理と判定|S9mixあり/なしの4象限の読み方【薬剤師国家試験】

変異原性試験のマインドマップ
変異原性試験のマインドマップ

ここまでで、発がん物質が体内でどう活性本体に変わるかを追いかけてきました。ここからは逆向きの問いです。では、ある化学物質に発がん性があるかどうかを、どうやって調べるのか。

その入口が変異原性試験で、中心にあるのがAmes(エイムズ)試験です。

この記事の核はS9mixあり/なしの4通りの結果をどう読むか、これひとつです。国試は図や表で出してきて、「未変化体が悪いのか、代謝物が悪いのか」を判定させてきます。4象限の読み方さえ手順化できれば、初見の図でも解けます。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。

原理|「増えないはずの菌が増えた」を見る

Ames試験の原理は、ひとことで言えば復帰突然変異です。

使うのはネズミチフス菌(Salmonella Typhimurium)の変異株で、ヒスチジン要求性、つまりヒスチジンを自分で合成できないように壊してある菌です。これをTA株と呼びます。

手順のイメージはこうです。

  1. ヒスチジンを含まない寒天培地に、このTA株をまく
  2. ヒスチジンが作れないのだから、本来なら増殖できない。コロニーはほとんどできないはず
  3. ところが、そこに被検物質を加えると、コロニーがたくさんできた
  4. これは、被検物質がDNAに変異を起こして、ヒスチジンを合成できる状態に「戻した」ということ

この「壊れていた機能が変異によって元に戻る」ことを復帰突然変異といいます。コロニー数の増加=変異原性あり、という読み方です。

「復帰」の意味を取り違えない。 第99回の選択肢に「復帰変異部位のDNA配列は、野生株の当該部位のDNA配列と常に同一である」という記述が出ました。これは誤りです。機能が戻っただけで、塩基配列がもとどおりになったとは限りません(別の変異で機能が回復することもある)。「復帰」は表現型が戻ることを指します。

TA98とTA100|語呂で一発

検出したい変異の型によって、使う菌株を変えます。

菌株 検出する変異
S. Typhimurium TA98株 フレームシフト型の突然変異
S. Typhimurium TA100株 塩基対置換型の突然変異

この2つは入れ替えられて出題されるので、語呂で固定します。

「ふ」が2つ → 100 − 2 = 98

フレームシフトの「フ」が2つ、だから100から2を引いて98。TA98=フレームシフト型

残ったほう、TA100が塩基対置換型です。

  • フレームシフト型……塩基が1つ入ったり抜けたりして、読み枠がずれる
  • 塩基対置換型……塩基が別の塩基に置き換わる(点突然変異)

S9mix|細菌には代謝能力がないから足してやる

ここがAmes試験のもう一方の主役です。

細菌は、ヒトや動物のような異物代謝をしません。CYPも抱合酵素も持っていない。ということは、二次発がん物質(代謝されてはじめて活性本体になるもの)を、そのままでは検出できないわけです。

そこで加えるのがS9mixです。

S9mix = ラットの肝臓のS9画分 + NADPH などの補酵素

S9画分は、異物代謝の全体像と細胞内分画でやったとおり、肝臓をすりつぶして中速遠心(9,000×g)をかけたときの上清です。ミクロソーム(CYPがいる)と可溶性画分(抱合酵素がいる)の両方が入ったままの液なので、これを足せば第Ⅰ相も第Ⅱ相も再現できる。そこにCYPが働くのに必要なNADPHを補酵素として加えてあります。

S9は「上清」であって「可溶性画分」ではありません。 第99回に「S9mixは、動物の肝可溶性画分にNADPHなどの補酵素類を加えたものである」という選択肢が出ました。可溶性画分だけだとミクロソーム(=CYP)が入っていないことになってしまいます。細胞内分画の図を思い出して判定してください。

4象限の読み方|これが記事の核

Ames試験の判定4パターン
Ames試験の判定4パターン

S9mixなしとS9mixありの2条件で試験して、コロニー数が増えたかどうかを見ます。読み方の原則はこれだけです。

S9mix(−)の結果 = 未変化体そのものの作用 S9mix(+)の結果 = 代謝物の作用

あとは組み合わせを表にするだけです。

S9mix(−) S9mix(+) 判定 発がん物質としての分類
増加↑ 不変 未変化体に変異原性あり 一次発がん物質
不変 増加↑ 代謝物に変異原性あり 二次発がん物質
増加↑ 増加↑ どちらも変異原性あり 一次でも二次でもある(危険)
不変 不変 変異原性なし —

手順として書くとこうなる

図や表で出されたときは、次の順で読むと迷いません。

  1. まずS9mix(−)の行だけ見る。増えていれば、代謝なしで変異原性がある=一次発がん物質
  2. 次にS9mix(+)の行を見る。増えていれば、代謝物に変異原性がある=二次発がん物質
  3. 両方増えていれば両方あり、両方不変なら変異原性なし

(−)を一次、(+)を二次。この対応だけ間違えなければ、4パターンは暗記するまでもなく導けます。

3パターン目の「どっちも危ない」は、未変化体でも代謝物でも変異原性があるという意味です。4パターン目は「変異原性なく安心」。マインドマップにもこの言葉で書いてあります。

国試ではこう問われる

Ames試験は過去15年で5回(第97・99・102・105・107回)登場しています。必須問題でも理論問題でも出る頻出項目です。

  • 第105回 問22(必須)「Ames試験に用いられる微生物の菌株はどれか」。選択肢には「トリプトファン要求性酵母変異株」「トリプトファン要求性大腸菌変異株」「トリプトファン要求性ネズミチフス菌変異株」「ヒスチジン非要求性ネズミチフス菌変異株」などが並びました。①菌の種類(ネズミチフス菌)②要求するアミノ酸(ヒスチジン)③「非」がついていないか——3か所すべてを確認しないと引っかかります。
  • 第99回 問133は、TA100株でAmes試験を行った結果のグラフ(横軸=化合物濃度、縦軸=復帰変異コロニー数、S9mix添加系と非添加系の2本の曲線)を読ませる問題です。「被検化合物は、塩基対置換型の変異原性を示す」(TA100を使っているから正しい)、「被検化合物のS9mixによる代謝産物は、変異原性を示さない」(グラフの添加系の曲線がどうなっているかで判定)といった選択肢が並びました。まさにこの記事の4象限をグラフでやらせる形です。
  • 第102回 問132の選択肢2「Ames試験で用いる細菌は、ヒトや動物の組織と同様の異物代謝反応を起こす変異株である」……誤り。細菌は異物代謝をしないからこそS9mixが要る、というこの記事の中心です。同じ問題の選択肢1「Ames試験は、化学物質の遺伝毒性を Salmonella Typhimurium 変異株の復帰突然変異の出現頻度により検出する方法である」は正しい記述。
  • 第107回 問137の選択肢3「Ames試験は、細菌を用いて化学物質による復帰突然変異を評価する方法である」も正しい記述。「細菌を用いて」「復帰突然変異」という2語がセットで出ます。
  • 第101回 問23(必須)では、化審法の蓄積性の判定に使う試験を選ばせる中に「ネズミチフス菌を用いた復帰突然変異原性試験」が誤り選択肢として入っていました(蓄積性はコイを用いた濃縮度試験)。Ames試験は変異原性を見るもので、蓄積性とは無関係です。化審法の記事とあわせて確認してください。
  • 第110回 問134の選択肢1「細菌を用いる復帰突然変異試験は、試験菌株の表現型がアミノ酸非要求性に復帰することを利用する方法である」……正しい記述。「Ames試験」という名前を使わず「復帰突然変異試験」と書かれることがあるので、同じものだと気づけるようにしておきましょう。

まとめ

  • Ames試験の原理は復帰突然変異。ヒスチジン要求性のネズミチフス菌(TA株)が、ヒスチジンなしの培地で増えてしまったら変異原性あり
  • 「復帰」は表現型が戻ること。塩基配列がもとどおりとは限らない
  • TA98=フレームシフト型、TA100=塩基対置換型。語呂は「『ふ』が2つ → 100−2=98」
  • S9mix = ラット肝のS9画分(中速遠心の上清)+ NADPH。細菌に代謝能力がないから足す
  • 判定は S9mix(−)=未変化体の作用 / S9mix(+)=代謝物の作用
  • (−)で増加=一次発がん物質、(+)で増加=二次発がん物質、両方増加=両方あり、両方不変=変異原性なし

次はAmes試験以外の変異原性試験|小核・rec・pol・コメットを読んでみてください。

動画で学びたい人へ

この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。

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