
CYPによる酸化の中身に入ります。
酸化反応は種類が多くて、バラバラに覚えようとすると必ず崩れます。全体像を先に置いてから1つずつ見るのが唯一の攻略法です。CYPがやる酸化は、大きく5種類です。
- アルキル基の酸化(どこが酸化されやすいか)
- 脱アルキル化(O-脱アルキル化・N-脱アルキル化)
- N-水酸化
- エポキシ化
- 酸化的脱硫反応
この記事では1〜3を扱います。4と5は「代謝で毒性が強くなる」という衛生のいちばんおいしい論点なので、エポキシ化と酸化的脱硫で独立して扱います。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。
Contents
アルキル基の酸化|端っこは酸化されやすい

炭素が一列に並んでいるとき、どこにOHが入るか。答えは端っこです。
- ω位(いちばん端の炭素)が酸化される → 第1級アルコールができる
- ω-1位(端から2番目)が酸化される → 第2級アルコールができる
「端っこは酸化されやすい」と覚えたうえで、ω位なら第1級、ω-1位なら第2級という対応まで押さえてください。構造式で問われたときに、どちらのアルコールができるかを答えさせる形が想定されます。
アリル位とベンジル位も酸化されやすい

端っこ以外で酸化されやすいのが、この2か所です。
- アリル位……C=C二重結合の隣の炭素
- ベンジル位……ベンゼン環からぴょんと1個出た炭素
どちらも「二重結合(または芳香環)の隣」という意味で同じ理屈です。不飽和結合の隣は反応しやすい、とまとめて覚えてしまってかまいません。
ベンジル位の酸化は、このあとアミノ酸抱合のところでトルエン→ベンジルアルコールとして再登場します。トルエンのメチル基は、まさにベンゼン環から1個出ているベンジル位です。
脱アルキル化|α酸化で「同じ炭素数のアルデヒド」が出る

脱アルキル化は、OやNにくっついているアルキル基が外れる反応です。
仕組みはα酸化。ヘテロ原子(O や N)のすぐ隣の炭素(α位)が酸化されてOHがつくと、そこが不安定になって結合が切れます。このとき出ていくのがアルデヒドです。
ここで国試の急所。
外れるアルキル基と同じ炭素数のアルデヒドができる
- 炭素1個(メチル基)が外れた → ホルムアルデヒド(HCHO)
- 炭素2個(エチル基)が外れた → アセトアルデヒド(CH₃CHO)
本体のほうは R-OH または R-NH になって、水っぽくなります。反応式にすると、こうです。
RO-CH₃ → ROH + HCHO RN-CH₃ → RNH + HCHO
O-脱アルキル化の例:フェナセチン → アセトアミノフェン

O-アルキル基 → アルコール + アルデヒドの代表例です。
フェナセチンのエトキシ基(O-CH₂CH₃、炭素2個)が外れて、アセトアミノフェン(フェノール性OHを持つ)とアセトアルデヒド(炭素2個)ができます。炭素2個どうしで対応しているのが、目で見てわかる例です。
N-脱アルキル化の例:メタンフェタミン → アンフェタミン

N-アルキル基 → アミン + アルデヒドです。
メタンフェタミンのN-CH₃(炭素1個)が外れて、アンフェタミンとホルムアルデヒド(炭素1個)ができます。こちらは乱用薬物の単元で、尿検査の話として再登場します。
なお、S-脱アルキル化も理屈は同じですが、国試での出題は見当たりません。「そういうものもある」程度で十分です。
N-水酸化|級数でどの酵素が働くかが変わる

アミノ基の窒素にOHがつく反応です。R-NH₂ → R-NHOH。できるものをヒドロキシルアミンといいます。
代表例:アニリン → フェニルヒドロキシルアミン

ベンゼン環にNH₂がついたアニリンがN-水酸化されると、フェニルヒドロキシルアミンになります。これがメトヘモグロビン血症を起こす物質です。
ヘモグロビンの鉄がFe²⁺からFe³⁺に酸化されてしまうと酸素を運べなくなる、というのがメトヘモグロビン血症です。アニリンそのものではなく、代謝物が原因という点が、まさに「代謝的活性化」の実例になっています。
1級・2級・3級で担当酵素が変わる

ここが国試のポイントです。
| アミンの級数 | 担当する酵素 | 生成物 |
|---|---|---|
| 第1級アミン(R-NH₂) | CYP(P450) | ヒドロキシルアミン(R-NHOH) |
| 第2級アミン(R,R’-NH) | P450とFMOの両方 | ヒドロキシルアミン |
| 第3級アミン(R,R’,R’’-N) | FMO | N-オキシド(N→O の配位結合) |
1級はCYP、3級はFMO、間の2級は両方。この対応を丸ごと覚えてください。
FMOはフラビン含有モノオキシゲナーゼの略です。CYPと同じ第Ⅰ相の酸化酵素ですが、別物として区別されます。第3級アミンからできるのは、OHがつくのではなくN-オキシド(窒素から酸素への配位結合)である点も見落としやすいところです。
国試ではこう問われる
- 第102回 問22「シトクロムP450の寄与が小さいのはどれか」の選択肢に、フェナセチンのO-脱アルキル化とN-アセチルアミノフルオレンのN-水酸化がそのまま並びました(どちらもCYPの仕事なので、これらは正答ではありません)。反応名と代表物質のセットで覚えているかどうかを測る問題です。
- 第102回 問131「染料などの工業原料に使用され、N-水酸化により代謝的活性化されて膀胱がんの原因となるのはどれか」。N-水酸化 → 発がんという流れが、構造式を選ばせる形で問われています。芳香族アミンのN-水酸化は、のちのニトレニウムイオン(活性本体の1つ)につながる重要ルートです。
- 第106回 問22「代謝物が、主としてメトヘモグロビン血症を引き起こすのはどれか」。正答は4「アニリン」。パラコート・ベンゼン・四塩化炭素・n-ヘキサンが並ぶ中での選択です。「代謝物が」と書いてあるのがヒントで、アニリン自体ではなくフェニルヒドロキシルアミンが犯人だと知っていれば即答できます。
- 第110回 問44では、第Ⅱ相反応に関与する酵素を選ばせる選択肢の中にフラビン含有モノオキシゲナーゼが混ぜてあります。FMOは第Ⅰ相、と押さえておけば切れます。
まとめ
- CYPの酸化は5種類。アルキル基の酸化・脱アルキル化・N-水酸化・エポキシ化・酸化的脱硫
- 酸化されやすいのは端っこ(ω位→第1級、ω-1位→第2級)、アリル位、ベンジル位
- 脱アルキル化はα酸化で起こり、外れたアルキル基と同じ炭素数のアルデヒドが出る。フェナセチン→アセトアミノフェン+アセトアルデヒド、メタンフェタミン→アンフェタミン+ホルムアルデヒド
- N-水酸化でできるのはヒドロキシルアミン。アニリン→フェニルヒドロキシルアミン→メトヘモグロビン血症
- 1級アミンはCYP、3級アミンはFMO(N-オキシドができる)、2級は両方
次はエポキシ化と酸化的脱硫|代謝で毒性が強くなる代表パターンを読んでみてください。
動画で学びたい人へ
この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。
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