代謝と活性化

加水分解とアルコール代謝|エステラーゼとADH・ALDH・CYP2E1【薬剤師国家試験】

第Ⅰ相反応のマインドマップ
第Ⅰ相反応のマインドマップ

第Ⅰ相反応の最後、加水分解とアルコール代謝です。

第Ⅰ相反応は「酸化・還元・加水分解」の3つ、と言われます。その3つめがここ。あわせて、CYPを使わない酸化の代表であるアルコール代謝も、この記事でまとめて扱います。アルコール代謝はお酒の強い・弱いの話として日常にも直結するので、患者さんへの説明にもそのまま使えるパートです。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。

加水分解|エステラーゼとエポキシドヒドロラーゼ

加水分解 プロカインとエポキシド
加水分解 プロカインとエポキシド

加水分解を担当する酵素は、場所も種類も幅広く分布しています。

  • エステラーゼ……血液、肝臓、腸粘膜など
  • エポキシドヒドロラーゼ……エポキシドを開環させる

エステルの加水分解:プロカイン

代表例は局所麻酔薬のプロカインです。エステル結合のところで切れて、こうなります。

プロカイン → p-アミノ安息香酸 + ジエチルアミノエタノール

切れる場所は -CO-O- のエステル結合。切れたあとは、片側がカルボン酸(COOH)、もう片側がアルコール(OH)になります。

ここで出てきたCOOHが、のちのち効いてきます。カルボキシ基はアミノ酸抱合の目印だからです。第Ⅱ相(抱合)反応の全体像で「COOHを持っている異物だけがアミノ酸抱合される」という話が出てきたら、ここを思い出してください。

エポキシドの加水分解:ジオール体

エポキシドヒドロラーゼは、エポキシ化と酸化的脱硫で作られてしまったエポキシドを開いて、ジオール体(OHが2つ並んだ形)にします。

本来これは解毒の工程です。反応性の高い三角形を開いて、おとなしいジオールに変えているのですから。ところがベンゾ[a]ピレンの場合、そのジオール体がもう一度CYPに酸化されて、より危険な7,8-ジオール-9,10-エポキシドになってしまう。エポキシドヒドロラーゼは解毒酵素なのに、結果として発がんの一工程に組み込まれている──ここが国試でよく問われる皮肉な構造です。

アルコール代謝|酵素・場所・律速をセットで

アルコール代謝の全体像
アルコール代謝の全体像

エタノールが分解されていく経路です。1本道なので、それぞれの段で「何が・どこで・何をしたか」を並べて覚えます。

段階 酵素 存在場所 反応の中身
エタノール → アセトアルデヒド ADH(アルコール脱水素酵素) 細胞質 OHをCHOに
アセトアルデヒド → 酢酸 ALDH(アルデヒド脱水素酵素) ミトコンドリア CHOをCOOHに
酢酸 → CO₂ + H₂O ― ― TCA回路でエネルギーに

押さえどころは3つです。

① ADHの段が律速。 全体の速さはここで決まります。

② 場所が違う。 ADHは細胞質、ALDHはミトコンドリア。抱合反応でも「どの画分か」を問われたので、ここも同じ発想です。

③ 悪酔いの犯人はアセトアルデヒド。 頭痛・吐き気・顔が赤くなるのは、エタノールそのものではなく中間体のアセトアルデヒドが起こしています。

日本人が酒に弱い理由

図にはっきり書いてあります。

日本人はADH活性が高い。日本人はALDH活性が低い。

入口(ADH)は速いのに、出口(ALDH)が遅い。だからアセトアルデヒドがどんどん作られて、どんどん溜まる。これが「すぐ頭が痛くなる」「翌日に残る=二日酔い」の正体です。

「日本人は酒に弱い」をALDHの活性が低いからと説明できるようにしておいてください。ADHのほうではありません。ここは逆に覚えている人が多いところです。

CYP2E1のバイパス

通常はADHが主役ですが、エタノールを日常的に大量に飲む人では、CYP2E1がエタノールによって誘導され、エタノール→アセトアルデヒドのバイパスとして働くようになります。慢性アルコール中毒の人ではこの経路で半分ほどを処理しているとも言われます。

CYP(シトクロムP450)とはで見たとおり、CYP2E1はエタノールで誘導される分子種です。飲酒歴のある患者さんで薬の効きが変わることがある理由の1つが、ここにあります。

国試ではこう問われる

  • 第102回 問22「生体内で起こる次の代謝反応のうち、シトクロムP450の寄与が小さいのはどれか」。正答は5「エタノールの酸化」。エタノールの酸化の主役はADHであってCYPではない、という切り分けがそのまま正答になっています。CYP2E1も関与はするけれど主役ではない、という温度感が問われた良問です。
  • 第110回 問44「薬物代謝における第Ⅱ相反応に関与するのはどれか」。正答は2「UDP-グルクロン酸転移酵素」で、アルコール脱水素酵素は誤りの選択肢として並びます。ADHは第Ⅰ相です。
  • 加水分解については、エステラーゼが薬剤・実務を含めほぼ毎年どこかに出てきます(プロドラッグの活性化、局所麻酔薬の分解など)。衛生としては「血液・肝臓・腸粘膜に広く分布する」という分布の広さを押さえておけば十分です。

まとめ

  • 加水分解の代表はエステラーゼ(血液・肝臓・腸粘膜)とエポキシドヒドロラーゼ
  • プロカイン → p-アミノ安息香酸 + ジエチルアミノエタノール。できたCOOHはアミノ酸抱合の目印になる
  • エポキシドヒドロラーゼはエポキシドをジオール体にする解毒酵素。ただしベンゾ[a]ピレンでは発がんの一工程に組み込まれる
  • アルコール代謝は エタノール →(ADH・細胞質・律速)→ アセトアルデヒド →(ALDH・ミトコンドリア)→ 酢酸
  • 日本人はADHが高くALDHが低い。だからアセトアルデヒドが溜まり、悪酔い・二日酔いになる
  • 常習飲酒ではCYP2E1が誘導されてバイパスになる

次は第Ⅱ相(抱合)反応の全体像|3パターンに分けて覚えるを読んでみてください。

動画で学びたい人へ

この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。

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