代謝と活性化

CYP(シトクロムP450)とは|反応サイクルと分子種ごとの基質【薬剤師国家試験】

代謝・代謝活性化の全体像のマインドマップ
代謝・代謝活性化の全体像のマインドマップ

第Ⅰ相反応の主役、CYP(シトクロムP450)です。

薬剤でもCYPはやりました。ただし薬剤で覚えるのは「どの薬がどの分子種で代謝されるか」でした。衛生で覚えるのは「どの発がん物質・どの環境化学物質がどの分子種で活性化されるか」です。同じ表を見ているようで、拾う情報がまるで違います。薬の側の語呂合わせ(CYP2D6でコデイン、など)は薬剤の薬物代謝の基礎とCYPの分子種の覚え方にまとまっているので、そちらは薬剤で覚えてください。ここでは「CYPは解毒酵素であると同時に、発がん物質を作る酵素でもある」という顔のほうを見ていきます。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。衛生の講義はYouTubeで全編無料公開しているので、読むより耳から流し込みたい人はそちらもどうぞ。

「P450」という名前の由来

シトクロムP450の名前の由来
シトクロムP450の名前の由来

名前の3つの部分に、それぞれ意味があります。

  • シトクロム……鉄(Fe²⁺ ⇄ Fe³⁺)を持つ色素タンパク質。ヘムタンパクの一種です
  • P……pigment(色素)のP
  • 450……一酸化炭素(CO)と結合したときに450nmに吸収極大を持つから

この「COと結合して450nm」は必須問題レベルで出ます。鉄を含むヘムタンパクだからCOと結合する、と理屈でつなげておくと忘れません。

存在場所は前回やったとおりミクロソーム画分(=滑面小胞体)。分布は広く、精子と赤血球以外のほぼすべての細胞にあります。もちろん量がいちばん多いのは肝臓です。

CYPがやっているのは「酸素を1個つける」こと

CYPによる酸化の全体像
CYPによる酸化の全体像

反応をひとことで言うと、これだけです。

異物 + O₂ + 2e⁻(NADPH由来) → 異物-OH + H₂O

酸素分子(O₂)を1個持ってきて、片方の酸素原子だけを基質にくっつけ、もう片方は水として捨てる。酸素原子を1個だけ入れるので、CYPはモノオキシゲナーゼに分類されます。この分類名も出題されます。

OHがついた分だけ水溶性が上がる──これが解毒の第一歩です。ただし同じ「酸素を1個つける」操作が、二重結合に対して行われるとエポキシドという非常に危険なものが生まれます。そこが衛生の本題で、エポキシ化と酸化的脱硫|代謝で毒性が強くなる代表パターンで扱います。

なお、CYPは主に好気的条件で酸化を触媒しますが、たまに嫌気的条件で還元反応も触媒します。還元のほうは第Ⅰ相の還元反応で扱います。国試で圧倒的に問われるのは酸化のほうです。

反応サイクルを1周追いかける

CYPの反応サイクル
CYPの反応サイクル

図が複雑に見えますが、追うべきは鉄の価数と電子の行き先だけです。「酸化=電子を失う」「還元=電子を受け取る」を頭に置いて、1周まわしてみます。

  1. P450(Fe³⁺) に異物(基質S)が結合する
  2. NADPH-シトクロムP450還元酵素から電子(e⁻)が1個渡される → 鉄がFe²⁺に還元される
  3. そこにO₂が結合する
  4. 2個目の電子が渡される。電子は酸素のほうに引き寄せられ、O₂はO₂²⁻になる
  5. 周囲からH⁺を受け取り、片方の酸素がH₂Oとして外れる。鉄はFe³⁺に戻る
  6. 残った酸素原子は電子が足りない状態なので、基質の結合から電子を奪って基質にくっつく
  7. 酸化された基質(S-O)が外れ、P450(Fe³⁺)に戻って次の1周へ

押さえるべきは3点です。①電子の供給源はNADPH、②その電子を運ぶのはNADPH-シトクロムP450還元酵素、③酸素分子のうち1個は基質へ、もう1個は水へ。この3つが言えれば十分です。

分子種は「どの毒を活性化するか」で覚える

ここが衛生版の本題です。薬ではなく化学物質の側から見ていきます。

衛生で押さえる分子種は4つです。CYP1A1はベンゾ[a]ピレンなどの多環芳香族炭化水素を活性化し、ダイオキシン類や喫煙によってAh受容体(AhR)を介して増えます。CYP1A2はTrp-P-1などの発がん性芳香族アミンを、CYP2E1はエタノールやジメチルニトロソアミンを代謝し、2E1はエタノールを飲むと増えます。CYP3A4は肝臓でいちばん量の多い分子種で、アフラトキシンB₁を活性化し、グレープフルーツジュースで阻害されます。

この4つは、そのまま「発がんの活性本体を作る酵素」として発がんの単元に再登場します。喫煙で1A1・1A2が誘導されるのも、タバコの発がん性を語るときの根拠になります。

薬の基質(テオフィリン・オメプラゾール・ワルファリンなど)は、語呂つきで薬物代謝の基礎とCYPの分子種の覚え方にまとめています。

「赤ちゃん生まれてラッキー7」

CYP1Aの誘導とAhR
CYP1Aの誘導とAhR

胎児型のCYP3A7は語呂で確実に取りましょう。

赤ちゃん生まれてラッキー7 …… 胎児型P450 = CYP3A7

生後1年で1/20にまで下がり、入れ替わりに成人型の3A4が立ち上がってきます。新生児で薬が抜けにくいのは、この入れ替わりの途中だからです。

誘導の仕組み(受容体を介する)

誘導とは
誘導とは

誘導とは、転写を促進して酵素の量そのものを増やすことです。阻害(酵素にフタをする)とは仕組みがまったく違います。

  • 多環芳香族炭化水素・ダイオキシン類 → AhR(芳香族炭化水素受容体) に結合 → 転写↑ → CYP1A1・1A2が増える
  • CYP3A4 → プレグナンX受容体(PXR) を介して誘導される
  • CYP2E1 → エタノールのような小さい分子で誘導される

ダイオキシンの毒性発現がAhR経由であることは、内分泌撹乱物質の単元にもそのままつながります。薬どうしの相互作用としての誘導・阻害は、薬剤の代謝誘導とは?誘導物質の覚え方と代謝阻害のメカニズムと相互作用まとめが詳しいです。PM・EMという言葉や遺伝子多型そのものの話は薬物代謝酵素の遺伝子多型(プアーメタボライザー)にあります。

国試ではこう問われる

  • 第102回 問22「生体内で起こる次の代謝反応のうち、シトクロムP450の寄与が小さいのはどれか」。正答は5「エタノールの酸化」(主役はアルコール脱水素酵素)。ほかの選択肢はフェナセチンのO-脱アルキル化、N-アセチルアミノフルオレンのN-水酸化、パラチオンの酸化的脱硫化、四塩化炭素の還元的脱ハロゲン化──この4つはすべてCYPの仕事で、しかもこのあとの記事で全部出てきます。この1問が第Ⅰ相反応の目次になっています。
  • 第110回 問44「薬物代謝における第Ⅱ相反応に関与するのはどれか」。正答は2「UDP-グルクロン酸転移酵素」。選択肢にシトクロムP450・フラビン含有モノオキシゲナーゼ・アルコール脱水素酵素が並びます。どれが第Ⅰ相でどれが第Ⅱ相か、という相の切り分けが直接問われた形です。
  • 誘導は薬剤側からも狙われます。第100回 問167の選択肢3は「喫煙はCYP1A2の誘導を引き起こし、トリアゾラムの血中濃度を低下させる」。喫煙→CYP1A2の誘導までは正しく、トリアゾラムがCYP3A4の基質であるところで誤りになる、という作りです。衛生で「喫煙→1A1・1A2」を押さえておくと、こういう複合的な選択肢も切れます。

まとめ

  • CYPの名前の由来は「COと結合して450nmに吸収極大」。ヘムタンパクで、ミクロソーム画分にいる
  • 反応の本体は「酸素を1個つける」=モノオキシゲナーゼ。電子はNADPH由来、酸素の片割れは水になる
  • 分子種は衛生では発がん物質とセットで覚える。1A1=ベンゾ[a]ピレン、1A2=芳香族アミン、2E1=ジメチルニトロソアミン、3A4=アフラトキシンB₁
  • 誘導は転写促進で酵素量を増やすこと。多環芳香族炭化水素・ダイオキシン類はAhR経由で1A1・1A2を誘導、喫煙も同じ経路
  • 赤ちゃん生まれてラッキー7 = 胎児型CYP3A7

次は第Ⅰ相の酸化反応|酸化されやすい部位・脱アルキル化・N-水酸化を読んでみてください。

動画で学びたい人へ

この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。

衛生を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、衛生という科目のほんの一区画です。実際には、保健統計・疫学から疾病の予防、食品衛生、化学物質の毒性、生活環境までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

衛生は覚えることが多い科目ですが、数字や分類を単体で暗記しようとすると、似たものどうしが混ざって崩れます。「この物質がどの分類に入って、どの法律で規制されているのか」が地図として見えていると、覚える量そのものが減ります。

衛生のマインドマップ(¥3,500)は、その全体像を1枚に収めたPDFです。地図をたどりながら話す講義動画はYouTubeで全編無料公開しているので、この進め方が自分に合うかどうかは先に確かめられます。

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