法規の最後のテーマです。ここは少し性格が違っていて、厚生労働省が「薬局と薬剤師にこうなってほしい」と考えている方向性がそのまま出題される分野です。言ってしまえば厚労省のPRのようなもので、国家試験では毎年1〜2問出ます。
名前の似た薬局が3つ(健康サポート薬局・地域連携薬局・専門医療機関連携薬局)出てきて混乱しやすいので、「いつ・誰が決めたか」と「要件の違い」を軸に整理していきます。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。
Contents
医薬分業の歴史と現状
歴史
| 年 | できごと |
|---|---|
| 1874年(明治7年) | 医薬分業が法制化された |
| 1974年(昭和49年) | 診療報酬改定で処方箋料が大幅に引き上げられた |
法制化されたのは明治7年ですが、そこからなかなか分業は進みませんでした。実際に動き出したきっかけは昭和49年の処方箋料の大幅引き上げで、ここから院外処方が一気に増えていきます。「法制化は明治7年、実質的なスタートは昭和49年」と2つの年をセットで押さえてください。
第110回 問149では「西洋の医療制度が導入された明治2年(1869年)を医薬分業元年として、急速に分業が進んだ」が誤り選択肢として出題されています。年号と「急速に進んだ」の両方が誤りです。
現状:医薬分業率
医薬分業率は令和5(2023)年度の全国平均で80.3%(日本薬剤師会「保険調剤の動向」)。前年度から3.9ポイント上昇し、初めて8割を超えました。
ただし、都道府県による地域差が大きいのがこの指標の特徴です。第110回 問149では「都道府県による医薬分業率の地域差は、令和元年(2019年)以降認められなくなった」が誤り選択肢として出題されています。「地域差はいまもある」が正しい理解です。
分業率は毎年更新されるので、直近の数字は日本薬剤師会が公表している「医薬分業進捗状況(保険調剤の動向)」で確認してください。この記事の数字は令和5年度のものです。
医薬分業率の計算式
第100回 問79でそのまま問われています。
医薬分業率(%) = 薬局への処方せん枚数 ÷ 外来処方件数 × 100
分母が「外来患者数」ではなく「外来処方件数」である点、入院の処方を含めない点に注意してください。
これからの薬剤師・薬局
厚生労働省が打ち出してきた制度を、時系列で見ていきます。
健康サポート薬局(平成28年)
かかりつけ薬剤師・薬局の機能に加えて、地域住民の健康づくりを支援する薬局です。法令上は「患者が継続して利用するために必要な機能及び個人の主体的な健康の保持増進への取組を積極的に支援する機能を有する薬局」と定義されており、第106回 問80ではこの定義文からの穴埋めが出題されました。
要件は大きく2つです。
- かかりつけ薬剤師・薬局としての基本的な機能:24時間対応、服薬情報の継続的把握など
- 健康サポート機能:要指導医薬品などに関する助言、健康増進相談への対応など
そして、この2つを満たすことを都道府県知事に届け出ることで、「健康サポート薬局」である旨を表示できるようになります。
ここは頻出です。第105回 問142では「薬局開設者の判断で健康サポート薬局と表示することができる」が誤り選択肢として出題されています。表示するには知事への届出が必要で、勝手に名乗ることはできません。
特定の機能を有する薬局の認定・表示制度(令和元年)
令和元年の薬機法改正で導入され、令和3年8月から施行されている制度です。地域連携薬局と専門医療機関連携薬局の2つがあります。
名前も要件も似ているので、違いを表で並べます。
| 地域連携薬局 | 専門医療機関連携薬局 | |
|---|---|---|
| 定義 | 入退院時の医療機関等との情報連携や、在宅医療等に地域の薬局と連携しながら一元的・継続的に対応できる薬局 | 専門的な薬剤管理を他の医療提供施設と連携し、専門的な薬学的知見に基づく指導を実施するために必要な機能がある薬局 |
| 構造設備 | 利用者が座って指導を受けられ、間仕切り等で相談内容が漏れないよう配慮 | 利用者が座って薬学的指導を受けられる個室などプライバシーの確保に配慮した設備 |
| 無菌製剤を実施できる体制 | ― | |
| 研修 | 常勤薬剤師の半数以上が地域包括ケアシステムに関する研修を修了 | がんの専門性の認定を受けた常勤薬剤師の配置/他の薬局の薬剤師に対して専門的な調剤・指導に関する研修を実施 |
| 在宅 | 在宅等における調剤・薬学的指導を行う体制 | ― |
覚え方のコツは、構造設備の「間仕切り」と「個室」の対比です。地域連携薬局は間仕切りでよいのに対し、専門医療機関連携薬局は個室などが求められます。扱う情報の重さの違いだと考えると納得しやすいはずです。
もう1つの軸は研修の中身で、地域連携薬局は地域包括ケアシステム、専門医療機関連携薬局はがんの専門性です。そして無菌製剤の体制は地域連携薬局側の要件、という点も取り違えやすいので注意してください。
地域における連携体制
地域包括ケアシステム
介護が必要な状態になっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けられる社会づくりを目指すしくみです。住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される体制を作ることを目標としています。
第107回 問82では、「2025年を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるような仕組み」の穴埋めが出題され、正答は地域包括ケアシステムでした。
これは医療提供体制の確保(医療計画・医療圏・基準病床数・病床機能報告制度)で扱った地域医療構想と同じ発想です。「地域という単位で、医療と介護を組み立て直す」という共通の考え方が背景にあります。
在宅医療・居宅介護における薬剤師の役割
- 包括的な医療(医療法の考え方)
- 介護保険の居宅療養管理指導(介護保険制度と介護報酬を参照)
薬剤師が地域で担う役割は、医療法側と介護保険側の両方から規定されている、ということです。
国試ではこう問われる
- 第106回 問80:「患者が継続して利用するために必要な機能及び個人の主体的な健康の保持増進への取組を積極的に支援する機能を有する薬局」→ 健康サポート薬局。
- 第105回 問142:「薬局開設者の判断で健康サポート薬局と表示することができる」は誤り(知事への届出が必要)。
- 第107回 問310:「健康サポート薬局」を表示するための基準として適切なもの→ 正答は「個人情報に配慮した相談窓口を有している」「要指導医薬品や介護用品について、助言できる体制を有している」。誤り選択肢に「いつでも相談に対応できるように24時間開局している」「薬局内に無菌調剤室を設置している」。24時間「対応」であって24時間「開局」ではありません。
- 第109回 問84:健康サポート薬局の届出要件→ 正答は「個人情報に配慮した相談窓口の設置」。
- 第105回 問87:健康サポート薬局の活動として適切でないもの→ 正答は「健康相談で来局した地域住民の家庭血圧が高いことを確認したため、降圧剤を調剤した」。処方箋なしに調剤はできません。受診勧奨や地域包括支援センターの紹介は適切な対応です。
- 第110回 問149(医薬分業):正しい記述として「かかりつけ薬局において薬歴管理を行うことにより、重複投薬や相互作用の有無の確認ができ、薬物療法の有効性・安全性の向上が期待される」「医師は、患者に必要な医薬品を病院・診療所にある医薬品に限定されることなく処方することができる」。
- 第105回 問144(医薬分業):正しい記述として「複数の医療機関を受診しても、患者が特定の薬局を利用することで、薬剤服用歴を薬局で一元的に管理できる」「交付された処方箋により、患者自身が服用している薬の名称について知ることができる」。誤り選択肢に「処方箋受取率は、都道府県の間でほとんど差がない」「処方箋を患者に交付する医師が、調剤を受ける薬局を指定することが望ましい」。
健康サポート薬局は「24時間対応/24時間開局」「届出/自由に表示」の入れ替えが定番、医薬分業は「地域差がない」「明治2年」が定番の誤りです。この2つのパターンを覚えておくだけで、かなりの選択肢が切れます。
まとめ
- 医薬分業は明治7年(1874年)に法制化、昭和49年(1974年)の処方箋料引き上げで実質的に動き出した
- 医薬分業率は令和5年度で全国平均80.3%。地域差はいまもある。計算式は薬局への処方せん枚数 ÷ 外来処方件数 × 100
- 健康サポート薬局(平成28年):①かかりつけ機能(24時間対応・服薬情報の継続的把握など)②健康サポート機能(要指導医薬品等の助言・健康増進相談)。都道府県知事への届出で表示できる
- 地域連携薬局:入退院時の情報連携と在宅。間仕切りでよいが無菌製剤の体制が必要。研修は地域包括ケアシステム、常勤薬剤師の半数以上
- 専門医療機関連携薬局:専門的な薬学的知見に基づく指導。個室などが必要。がんの専門性の認定を受けた常勤薬剤師の配置と、他の薬局の薬剤師への研修
- 地域包括ケアシステムは、住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供する体制
法規のマインドマップを、ここから先どう使うか
これで法規のマインドマップは全ページ分の解説が終わりました。最後に、講義の締めくくりで話している使い方を書いておきます。
いまのあなたの頭の中には、法規全体の地図ができているはずです。たとえば「医療法の医療圏」と聞けば、医療法のマインドマップの、病院・診療所のブランチの左下あたりにあったなと、場所が思い浮かぶ。そこまで来たら、あとはその場所の中身を思い出せるかどうかです。
おすすめの練習はシンプルです。
- マインドマップの一区画を時間を測って読む(たとえば左半分を7分)
- その区画を隠す
- そらで言えるかを試す
これを1セットとして、端から端まで回していきます。「基本方針は厚生労働大臣が定めて、それを受けて都道府県が医療計画を作って、その中に医療圏があって……」と、枝をたどるように口に出せるようになれば、試験問題は解けます。
なお、このマインドマップは9割前後の得点を目標に、情報をかなり絞って作られています。満点を取るには、たとえば薬剤師の人員基準のような細かい数字まで全部覚える必要がありますが、90点を取る勉強量と100点を取る勉強量には大きな差があります。確実に受かる確率を上げるために、あえて絞ってある、というのが設計思想です。
模試を受けてみて、「ここはもう少し情報が欲しい」「ここは自分には要らない」とチューニングしていけば、それがあなた専用のマインドマップになります。そうなればもう上がりです。
迷ったら法規の全体像と勉強の進め方(4分野の関係を整理)に戻って、いま自分が地図のどこにいるのかを確認してみてください。
法規を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、法規という科目のほんの一区画です。実際には、薬機法の総則から薬局・製造販売業・医薬品の取扱い、そして社会保障制度までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全26回・約5時間34分。「この省令は誰に向けた基準なのか」「さっき出てきた登場人物が、どこで再登場するのか」が、条文の羅列ではなく流れとして入ってきます。バラバラに覚えていた制度が、1本の線になる感覚です。
法規のマインドマップPDF+解説授業セットは¥9,450。無料のサンプル動画とサンプルPDFがあるので、この「たどる」感覚が自分に合うかどうかは、先に確かめられます。