
コントロールドリリースの理論を、実際の医薬品で見ていきます。
このパートは製剤名がカタカナで大量に出てくるので、いちばん苦しいところです。ただし名前の由来に意味があるものが多いので、そこを押さえると急に覚えやすくなります。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。
Contents
まず2つに割る:製剤の形が残るか崩れるか
経口の徐放性製剤は、服用後に剤形が形を保つかどうかで2つに分かれます。
| 分類 | 服用後の挙動 |
|---|---|
| シングルユニット | 服用直後も製剤が形を保ったまま徐放する |
| マルチプルユニットタイプ | 剤形は崩壊するが、中の徐放性顆粒が徐々に放出する |
「1個のまま効くか、バラバラになってから効くか」——ここが分岐点です。
シングルユニット①:単層錠

1層でできた錠剤が、形を保ったまま薬を放出していくタイプです。2つ覚えてください。
| 名称 | 構造 | 代表的な薬 |
|---|---|---|
| グラデュメット | 多孔性プラスチックの中に薬が入っており、プラスチックは溶けずに中の薬だけが放出される | フェロ・グラデュメット®(鉄剤) |
| ワックスマトリックス | 高分子やワックスなど疎水性の基剤に薬を練り込んだもの | — |
ワックスマトリックスは、コントロールドリリースの分類でやった疎水性マトリックス型そのものです。理論編と実用編がここでつながります。
そしてグラデュメットは、多孔性プラスチックが溶けずに残るので、糞便中にそのまま出てくることがあります。疎水性マトリックスと同じ注意点です。
シングルユニット②:多層錠
多層錠は速放部と徐放部の2つのパートからできています。ここで3つの名前が出てきますが、構造の違いで区別できます。
有核錠:レペタブとロンタブ
核(内側)があるタイプです。どちらも周りが速放性ですが、核の中身が違います。
レペタブ

周り:速放性 / 核:腸溶性コーティングされた核
挙動はこうです。
- 胃で外側の速放部が溶ける
- 腸に進むと腸溶性コーティングが剥がれる
- 核の薬が放出される
つまり効果が2回に分かれて出るわけです。名前の由来はリピート(repeat)= 反復作用。「レペ = リピート」と結びつければ、構造まで思い出せます。
ロンタブ

周り:速放性 / 核:徐放性マトリックス
- 外側の速放部が溶ける
- 核の徐放性マトリックスから徐々に薬が出続ける
レペタブが「2回に分けて出す」のに対し、ロンタブは「出したあと長く続ける」。名前の由来はロング(long)です。
代表的な薬はアダラート®CR(降圧薬)です。
多層錠:スパンタブ

上に速放層、下に徐放性マトリックスが重なった構造
挙動はロンタブと似ていて、速放層が崩壊したあと、徐放性マトリックスからゆっくり放出されます。違いは核があるか、層が重なっているかです。
名前の由来はスパン(span)= 時間の幅。
3つの覚え方まとめ
| 名称 | 構造 | 名前の由来 |
|---|---|---|
| レペタブ | 有核・核は腸溶性コーティング | レペ = リピート(反復作用) |
| ロンタブ | 有核・核は徐放性マトリックス | ロン = ロング |
| スパンタブ | 多層(速放層+徐放層) | スパン = 時間の幅 |
シングルユニット③:マトリックス+コーティングの合わせ技
理論編で学んだ技術を組み合わせた製剤が2つあります。
| 製剤 | 構造 | 狙い |
|---|---|---|
| リアルダ®錠(メサラジン腸溶錠) | 複合マトリックスにメサラジンを入れ、さらに腸溶コーティング | メサラジンは潰瘍性大腸炎の薬。小腸後半〜大腸に届いてから放出を始めるため |
| デパケン®R錠(バルプロ酸Na徐放性製剤) | マトリックスを徐放性コーティング | バルプロ酸はTDM対象薬。最初に一気に出るのを抑えるため |
どちらも「なぜそこまでするのか」に理由があります。リアルダは効かせたい場所が大腸だから、デパケンRは血中濃度を細かく管理したい薬だから。TDM対象薬とのつながりも意識しておいてください。
シングルユニット④:OROS
浸透圧ポンプ型そのものです。採用されている薬が2つ出ます。
| 薬 | 補足 |
|---|---|
| パリペリドン徐放錠(インヴェガ®錠) | — |
| メチルフェニデート塩酸塩徐放錠(コンサータ®錠) | 第一種向精神薬。急激な血中濃度のピークをなくすためにOROSが使われている |
マルチプルユニットタイプ:スパンスルとスパスタブ

こちらは服用後に剤形が崩壊し、中の顆粒が効くタイプです。
| 名称 | 剤形 |
|---|---|
| スパンスル | カプセル。中に徐放性顆粒と速放性顆粒が入っている |
| スパスタブ | 上記を錠剤にしたもの |
スパンスルの「スル」の由来が面白いところです。
カプセル = capsule → 「スル」
カプセル剤だから「スル」がつく、というわけです。錠剤のほうはスパスタブ——「タブ(tablet)」で錠剤だと分かります。
「スパンタブ」と「スパスタブ」が紛らわしいのですが、スパンタブは多層錠(シングルユニット)、スパスタブはマルチプルユニットです。混同しやすいので、「スパンタブは層、スパスタブは顆粒」と一字で区別してください。
まとめ
- 経口徐放性製剤はシングルユニット(形を保つ)とマルチプルユニット(崩壊して顆粒が効く)
- 単層錠:グラデュメット(多孔性プラスチック・フェロ・グラデュメット®)、ワックスマトリックス(疎水性マトリックス型)
- 有核錠:レペタブ(核が腸溶性コーティング・リピート)、ロンタブ(核が徐放性マトリックス・ロング・アダラート®CR)
- 多層錠:スパンタブ(速放層+徐放層・スパン=時間の幅)
- 合わせ技:リアルダ®錠(複合マトリックス+腸溶コーティング・大腸で放出)、デパケン®R錠(マトリックス+徐放性コーティング)
- OROS:インヴェガ®錠、コンサータ®錠
- マルチプルユニット:スパンスル(カプセル・capsuleの「スル」)、スパスタブ(錠剤)
次は経口以外のDDS製剤です。局所用・注射型・経皮型のDDS製剤へ進んでください。理論編はコントロールドリリースの概要と4つの分類、製剤分野の全体像は製剤化のサイエンスとは?で確認できます。
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