
経口徐放性製剤に続いて、局所用・注射型・経皮型のDDS製剤を扱います。
経口ほど製剤名は多くありませんが、インスリンの持効型はメカニズムまで問われる頻出テーマです。ここは理解して覚えてください。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。
Contents
局所用:その場にとどめる工夫
全身に回さず、患部にとどめて効かせるための製剤です。適用部位ごとに1つずつ押さえます。
口腔粘膜:アフタッチ®
口内炎に使う付着錠です。
構造:支持層と、ステロイドを含むマトリックス層の2層。マトリックスからステロイドが徐々に患部へ放出される
口腔内に適用する製剤でやった付着錠の実物です。局所に効かせるのが目的なので、全身循環には乗せません。
鼻粘膜:フルナーゼ®点鼻液
アレルギー性鼻炎などに使うステロイドの点鼻薬で、持続的な作用を期待して設計されています。
そしてこの製剤の正体は——チキソトロピーです。
振るとサラサラになって噴霧でき、粘膜に着くと元の粘度に戻ってとどまる
非ニュートン流動でやった内容が、そのままDDSとして働いている例です。「よく振ってください」という服薬指導の理由もここにあります。
目:チモロールマレイン酸塩の2製剤
点眼薬はすぐ流れてしまうのが問題です。そこで目の中でゲル化させてとどめます。同じ成分で工夫が2通りあるので、セットで比較してください。
| 製剤 | 添加している物質 | ゲル化のしくみ |
|---|---|---|
| リズモン®TG | メチルセルロース | 目でゲル化する |
| チモプトール®XE | ジェランガム | Na⁺と反応してゲル化する |
「ジェランガムはNa⁺と反応」が区別のポイントです。
注射型
リュープロレリン酢酸塩(リュープリン®)

徐放性懸濁性注射剤です。構造が入れ子になっています。
薬物がPLGA(ポリ乳酸・グリコール酸共重合体)のマイクロカプセルに封入されている → 皮下でPLGAが徐々に加水分解される → 薬が少しずつ放出され、血液中に吸収される
この構造のおかげで、投与間隔が非常に長くなります。
4週ごと / 12週ごと / 24週ごと
24週=約6か月に1回で済む、というのは製剤設計の力が最もよく分かる例です。
インスリン:作用時間で分ける
インスリンは作用時間で分類されます。国試で問われるのは超速効型と持効型です。
前提:インスリンは六量体になっている

インスリンは体内で六量体を作っています。六量体のままでは吸収されにくく、バラけて初めて吸収される——ここがすべての出発点です。
超速効型:六量体をバラけやすくした
| 薬 |
|---|
| インスリン リスプロ |
| インスリン アスパルト |
アミノ酸配列を少し変えることで、インスリン同士がくっつきにくくなり、六量体がすぐにバラける → 吸収が速い → すぐ効く
食事の直前に注射して食後の血糖上昇を抑えます。
持効型:3つのしくみを区別する
持効型は「どうやってゆっくり吸収させるか」の工夫がそれぞれ違います。ここが最大の出題ポイントです。
| 薬 | しくみ |
|---|---|
| インスリン グラルギン | 注射後に皮下で沈殿する → 沈殿からゆっくり溶解して吸収される |
| インスリン デテミル | アルブミンと結合する → 徐々に解離して吸収され、吸収後も再びアルブミンと結合する |
| インスリン デグルデク | 製剤中は二量体(六量体が2つ)。皮下注射されるとどんどん連結して多量体(マルチヘキサマー)になり、そこから少しずつ切り出されて吸収される |


デテミルの覚え方は「アルブミンから出てみる」。アルブミンと結合しては解離する、というしくみが名前から出てきます。

グラルギン=沈殿/デテミル=アルブミン/デグルデク=多量体
この3語で区別できるようにしておいてください。
経皮型:経皮治療システム(TTS)
何のために作られたのか
TTS(Transdermal Therapeutic System)は、全身循環に乗せるために作られた製剤です。貼り薬ですが、局所ではなく全身が目的である点に注意してください。
| 内容 | |
|---|---|
| メリット | 肝初回通過効果を回避できる(門脈を経ずに全身へ) |
| メリット | 投与・中断が簡単(副作用が出たら剥がせばよい) |
| デメリット | かぶれる |
| デメリット | 適用できる薬が限られる(皮膚から吸収されるには分子量が小さく脂溶性が高い必要がある) |
「副作用が出たら剥がせばいい」というのは、注射や内服にはない大きな利点です。
型:膜制御型とマトリックス型

膜制御型は、薬物のリザーバーを放出制御膜で覆った構造です。リザーバー型と同じ考え方になります。

マトリックス型は、薬物を基剤に練り込んだ構造です。

その一種が感圧接着性テープ型で、粘着剤そのものに薬物を含ませています。
代表的な薬
- ニコチン
- フェンタニル
- 硝酸イソソルビド
- ニトログリセリン
どれも分子量が小さく脂溶性が高い薬です。なおどの薬がどの型かまで問われることは考えにくいので、薬の名前と、TTSのメリット・デメリットを優先して覚えてください。
まとめ
- 局所用:アフタッチ®(口内炎・付着錠)、フルナーゼ®点鼻液(チキソトロピー)、リズモン®TG(メチルセルロース)/チモプトール®XE(ジェランガム・Na⁺と反応してゲル化)
- リュープリン®はPLGAのマイクロカプセルが加水分解されて放出。投与間隔は4週・12週・24週ごと
- インスリンの超速効型(リスプロ・アスパルト)は、アミノ酸配列を変えて六量体をバラけやすくした
- 持効型はグラルギン=皮下で沈殿、デテミル=アルブミンと結合(「アルブミンから出てみる」)、デグルデク=多量体を作る
- TTSは全身循環に乗せるための製剤。肝初回通過効果を回避でき、剥がせば中断できる。ただしかぶれと適用薬の制限(分子量が小さく脂溶性が高い)がある
- TTSの型は膜制御型とマトリックス型(感圧接着性テープ型を含む)。薬はニコチン・フェンタニル・硝酸イソソルビド・ニトログリセリン
DDSの最後は吸収改善です。DDSの吸収改善(経口・直腸・経皮)へ進んでください。経口徐放性製剤は経口徐放性製剤、製剤分野の全体像は製剤化のサイエンスとは?で確認できます。
薬剤を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、薬剤という科目のほんの一区画です。実際には、吸収から分布・代謝・排泄、そして製剤設計までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全33本・約11時間。「なぜこの薬がここで出てくるのか」「さっき覚えたあの話が、どこにつながるのか」が、バラバラの知識ではなく流れとして入ってきます。細切れに暗記してきたものが、1本の線になる感覚です。
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