DDS(薬物送達システム)

コントロールドリリースの概要と4つの分類(リザーバー型・マトリックス型・浸透圧ポンプ型・イオン交換型)【薬剤師国家試験】

コントロールドリリースのマインドマップ
コントロールドリリースのマインドマップ

DDSの中心テーマ、コントロールドリリース(放出制御)です。

ターゲティングが「どこへ届けるか」の技術だったのに対し、こちらは「どのくらいのスピードで出すか」の技術です。分類は4つしかないので、それぞれの放出パターンと式をセットで押さえていきましょう。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。

なぜ放出をコントロールするのか

コントロールドリリースの血中濃度推移
コントロールドリリースの血中濃度推移

一般製剤を12時間ごとに服用すると、血中濃度は大きく上下します。上がりすぎれば副作用域に入り、下がりすぎれば効果が出ない——この波をなだらかにするのがコントロールドリリースです。

メリット

  • 半減期(t₁/₂)が短い薬でも、血中濃度を維持しやすい
  • 服用回数が減る → コンプライアンスが上がる

デメリット:初回通過効果を受けやすい薬は要注意

初回通過効果を受けやすい薬では、バイオアベイラビリティ(BA)が下がる可能性がある

理由を押さえておくと忘れません。初回通過効果を受けやすい薬は、一気に大量が肝臓に来ることで代謝酵素が飽和し、それで一部が全身循環に入れていることがあります。

ところが徐放化してゆっくり放出させると、肝代謝酵素が飽和しない——つまり来た分がほとんど代謝されてしまうわけです。結果として全身循環に届く量が減り、BAが下がる可能性がある、ということになります。

薬物動態が飽和するとグラフはどう変わるかでやった飽和の話が、そのままここに効いてきます。

①リザーバー型:放出速度が一定(0次)

リザーバー型
リザーバー型

薬物の周りを放出制御膜で包んだ構造です。中の固体の薬が少しずつ溶けて、膜を通って外に出ていきます。

最大の特徴はこれです。

放出速度が一定 = 0次放出

そして、その放出はFickの式に従います。

なぜ一定になるのか

Fickの法則を思い出してください。透過速度は膜面積と濃度勾配に比例するのでした。

リザーバー型では、

  • 中は固体の薬が残っているので、内部の濃度は飽和したまま一定
  • 外に出た薬はすぐ拡散するので、外側の濃度はほぼゼロのまま
  • 膜面積も拡散係数も分配係数も一定

つまり濃度勾配が変わらないので、透過速度=放出速度が一定になる——これがリザーバー型の0次放出の正体です。丸暗記せず、Fickの式から導けるようにしておいてください。

②マトリックス型:薬を基剤に練り込む

リザーバー型が「膜で包む」のに対し、マトリックス型は「基剤の中に薬を練り込む」構造です。基剤によって2つに分かれます。

疎水性基剤:Higuchi式(時間の平方根に比例)

疎水性マトリックス
疎水性マトリックス

基剤はロウやワックスなどです。その中に薬が点在しています。

体内に入ると表面から順に放出されていきますが、時間が経つと内側の薬は長い距離を通って出てこなければならないので、

時間の経過とともに放出速度が下がる

この関係を表したのがHiguchi(ヒグチ)式です。

Higuchi式
Higuchi式

教科書では長い式で書かれていますが、簡略化すると次のようになります。

Higuchi式の簡略形
Higuchi式の簡略形

累積薬物放出量 Q は、時間の平方根(√t)に比例する

普通に「累積放出量 対 時間」でグラフを描くと、最初は速く、だんだん緩やかになる曲線になります。これを横軸を√tにすると直線になる——それがHiguchi式です。Hixson-Crowell式で「3乗根にすると直線になる」とやったのと、まったく同じ発想です。

なお疎水性基剤は溶けないので、基剤が糞便中にそのまま出てくることがあります。患者さんが「薬が効いていないのでは」と不安になる場面なので、服薬指導で説明が必要な点です。

親水性基剤:基剤ごと侵食・溶解する

親水性マトリックス
親水性マトリックス

基剤にはヒプロメロースなど、結合剤として出てきた高分子が使われます。

疎水性と違い、基剤自体が侵食・溶解していくことで放出が制御されます。基剤が残らないので、糞便中にそのまま出てくることはありません。

③浸透圧ポンプ型(OROS®):こちらも0次

浸透圧ポンプ型(OROS)
浸透圧ポンプ型(OROS)

構造はこうです。

外側は半透膜。てっぺんに小さな穴が開いている。中は薬物層とプッシュ層の2層

動き方は、

体内に入る → 水が半透膜を通ってプッシュ層に入る → プッシュ層が水を吸って膨らむ → 薬物層を押し上げ、穴から薬を押し出す

ポンプで押し出すので、放出速度は一定(0次)になります。

0次放出をするのは、リザーバー型と浸透圧ポンプ型の2つ

ここは並べて覚えてください。

④イオン交換型(レジネート製剤)

イオン交換樹脂と薬の複合体です。

イオン交換樹脂はイオン性の物質を捕まえることができます。そこに薬を結合させておくと、

生体内のNa⁺などのイオンと薬が交換されて、薬が放出される

体内のイオン環境を利用して放出する、というしくみです。

4つを一覧で

分類 構造 放出パターン 式
リザーバー型 薬を放出制御膜で包む 一定(0次) Fickの式
マトリックス型(疎水性) ロウ・ワックスに練り込む だんだん遅くなる Higuchi式(√tに比例)
マトリックス型(親水性) 高分子に練り込む 基剤の侵食・溶解で制御 —
浸透圧ポンプ型(OROS®) 半透膜+小孔、薬物層+プッシュ層 一定(0次) —
イオン交換型 イオン交換樹脂との複合体 生体内のイオンと交換 —

「包むか、練り込むか、押し出すか、交換するか」——この4語で構造の違いが言えれば、分類は完成です。

まとめ

  • コントロールドリリースのメリットは半減期が短い薬でも血中濃度を維持できることと服用回数が減ること
  • デメリットは、初回通過効果を受けやすい薬でBAが下がる可能性(代謝酵素が飽和しなくなるため)
  • リザーバー型は膜で包む構造で、Fickの式に従い放出速度が一定(0次)
  • マトリックス型(疎水性)はHiguchi式に従い、累積放出量は時間の平方根に比例。放出速度はだんだん遅くなる。基剤が糞便中に出ることがある
  • マトリックス型(親水性)は基剤の侵食・溶解で制御する
  • 浸透圧ポンプ型(OROS®)は半透膜とプッシュ層で押し出す。0次放出
  • イオン交換型(レジネート製剤)は生体内のイオンと交換されて放出
  • 0次放出はリザーバー型と浸透圧ポンプ型

次は、これらが実際の医薬品でどう使われているかを見ていきます。経口徐放性製剤(シングルユニット・マルチプルユニット)へ進んでください。ターゲティングはDDSのターゲティング、製剤分野の全体像は製剤化のサイエンスとは?で確認できます。

薬剤を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、薬剤という科目のほんの一区画です。実際には、吸収から分布・代謝・排泄、そして製剤設計までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全33本・約11時間。「なぜこの薬がここで出てくるのか」「さっき覚えたあの話が、どこにつながるのか」が、バラバラの知識ではなく流れとして入ってきます。細切れに暗記してきたものが、1本の線になる感覚です。

薬剤のマインドマップPDF+解説授業セットは¥9,450。無料のサンプル動画とサンプルPDFがあるので、この「たどる」感覚が自分に合うかどうかは、先に確かめられます。

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