
薬剤という科目は、前半の薬物動態(ADME)と、後半の製剤化のサイエンスの2本立てです。ここからは後半、製剤化のサイエンスに入っていきます。
製剤の分野は「粉体」「界面活性剤」「レオロジー」など、聞き慣れない言葉がいきなり並ぶので、苦手意識を持つ人が多いところです。でも構造はとてもシンプルで、大きく3つのかたまりしかありません。最初にその地図を持っておくだけで、迷子になる確率がぐっと下がります。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。
Contents
製剤化のサイエンスは3つに分かれる
製剤化のサイエンスは、次の3つで構成されています。
| かたまり | 何を学ぶか | ざっくり言うと |
|---|---|---|
| ①製剤の性質 | 固形材料・分散系材料・半固形/液状材料の物理化学的性質 | 材料のクセを知る |
| ②製剤設計 | 製剤の種類と製剤工程、容器・添加剤・製剤化の機械・局方の試験法 | 実際にどう作るか |
| ③DDS | ターゲティング、コントロールドリリース、吸収改善、プロドラッグ | どう届けるか |
この順番には意味があります。①で材料のクセを理解しないと、②でなぜその工程・その添加剤が必要なのかが分からないからです。そして①②ができて初めて、③の「もっと効率よく薬を届ける技術」の話が成立します。
国試の問題も、この3つのどこから出ているのかを意識するだけで、聞かれていることの輪郭がつかみやすくなります。
①製剤の性質:材料のクセを知るパート

まず入り口になるのが「製剤の性質」です。ここでは材料を3つの状態に分けて扱います。ここは物理化学そのもので、計算式もいくつか出てきます。ただし国試で問われるポイントはかなり限られているので、式の導出に溺れず「何が何に比例するのか」を押さえるのが正解です。
固形材料
固体の薬が「どんな形で存在しているか」「どんな速さで溶けるか」「粉としてどう振る舞うか」を扱います。
- 結晶と非晶質・結晶多形・溶媒和物・共結晶・包接化合物:構造状態の違いで溶けやすさがどう変わるか
- 溶解度と溶解速度(Noyes-Whitney式)の考え方:Nernst-Noyes-Whitney式・Noyes-Whitney式・Hixson-Crowell式
- 粉体の性質①粒度分布と粒子径測定法:モード径・メジアン径と、ふるい分け法から比表面積測定法まで
- 粉体の性質②充填性・流動性・吸湿性:空隙率・安息角・CRHとエルダーの仮説
半固形・液状材料
軟膏やシロップのような「流れるもの」の性質、レオロジーを扱います。
- ニュートン流動と非ニュートン流動の見分け方:S = η・Dと、非ニュートン流動5種類のグラフ
- 粘弾性モデルと局方の粘度測定法:毛細管粘度計・回転粘度計と、フォークト/マックスウェルモデル
分散系材料
水と油、あるいは固体と液体のように、混ざらないものを混ぜた系を扱います。
- 界面の性質(界面張力・吸着・ぬれと接触角):分散系すべての土台。ぬれの3分類と正吸着・負吸着
- 界面活性剤(ミセル・CMC・クラフト点と曇点・HLB):cmcを境に5つのグラフがどう折れるか
- コロイド分散系の共通性質と疎水コロイド・親水コロイド:分散系の大きさによる3分類と、凝析・塩析
- 凝析・塩析・コアセルベーション・保護コロイド・DLVO理論:コロイドを安定化・不安定化させる技術
- 懸濁剤とStokesの式(沈降を防ぐ製剤的な工夫):ケーキングと、安定化の3つの対策
- 乳剤(Bancroftの経験則・型の判定・転相・分離現象):o/w型とw/o型、転相の74%、合一までの流れ
②製剤設計:実際にどう作るかのパート
材料のクセが分かったら、次は「じゃあ実際にどうやって製剤にするの?」という話です。
- 製剤の種類と製剤工程:局方の製剤総則に載っている剤形の分類、錠剤・顆粒剤・注射剤などの作り方
- 各論:容器の種類、添加剤、製剤化の機械、局方の試験法
ここは暗記量が多いパートですが、工程の順番(粉砕→混合→造粒→打錠→コーティング)に沿って並べ直すと、機械の名前も添加剤の役割も一気に整理できます。
製剤の種類と製剤工程
- 剤形分類の全体像(局方 製剤総則の読み方):製剤設計の地図と、どの剤形を取りに行くか
- 錠剤の製法(直打法・湿式/乾式顆粒圧縮法)と錠剤の種類:語呂「これぞかんせいだ!!」で工程を覚える
- 顆粒剤・散剤・カプセル剤・経口液剤・経口フィルム剤:カプセルの号数と経口液剤の区別
- 軟膏剤の基剤(油脂性・乳剤性・水溶性)と混合の可否:吸水クリームと親水クリームの処方
- 口腔内適用製剤・坐剤・吸入剤:舌下錠とバッカル錠、坐剤の基剤、吸入剤の使い方
- 滅菌法(最終滅菌法と無菌操作法・加熱/照射/ガス法):滅菌のタイミングで整理する
- 注射剤の分類(溶剤・形状)と局方の試験法:懸濁性150μm・乳濁性7μm
- 注射剤の等張化計算(食塩等量法・氷点降下法・等張容積法):覚える数字は0.9%と0.52℃
- 点眼剤と眼軟膏(粒子径・容器・添加剤の違い):注射剤と比べながら読む
各論
- 錠剤の添加剤(結合剤・崩壊剤・滑沢剤・コーティング剤):結合剤と崩壊剤の見分け方
- 製剤添加剤まとめ(保存剤・懸濁化剤・乳化剤・安定化剤・pH調整剤・等張化剤):これまで出てきた添加剤を回収する
- 製剤化の機械①粉砕機と混合機:ジェットミルとハンマーミルの対比
- 製剤化の機械②造粒機(乾式・湿式):できる顆粒の形で見分ける
- 製剤化の機械③打錠機と打錠障害・コーティング装置・カプセル充填機:カラカラとベタベタ
- 局方の試験法まとめ(物理的・粉体物性・生物学的・製剤試験法):4つの引き出しに片づける
- 容器の種類(密閉・気密・密封)と局方通則の温度:語呂「ミッキーぷー」
③DDS:薬をより効果的に届ける技術
最後がドラッグデリバリーシステム(DDS)です。「同じ薬でも、届け方を工夫すればもっと効く・もっと副作用が減る」という発想の分野で、
- ターゲティング(能動的・受動的、EPR効果)
- コントロールドリリース(徐放化、リザーバー型やマトリックス型など)
- 吸収改善
- プロドラッグ
を扱います。
- DDSのターゲティング(能動的・受動的とEPR効果):EPR効果とリポソーム
- コントロールドリリースの概要と4つの分類:リザーバー型・マトリックス型・浸透圧ポンプ型・イオン交換型
- 経口徐放性製剤(シングルユニット・マルチプルユニット):レペタブ・ロンタブ・スパンタブの区別
- 局所用・注射型・経皮型のDDS製剤:インスリンの持効型とTTS
- DDSの吸収改善(経口・直腸・経皮):製剤の性質で学んだ原理の応用
- プロドラッグの覚え方・目的別まとめ:機能別6分類と語呂
プロドラッグは薬物動態の代謝のところでも出てきた内容なので、行き来しながら押さえると効率がいいです。
学ぶ順番のおすすめ
結論から言うと、マインドマップの並び順そのままで進めるのが一番速いです。
- 製剤の性質(固形材料 → 粉体 → 流動とレオロジー → 分散系材料)
- 製剤設計(剤形分類 → 各剤形 → 添加剤・機械・試験法)
- DDS
理由は単純で、後ろに行くほど前の内容を使うからです。たとえば「粉体の流動性が悪いと打錠障害が起きる」という②の話は、①の粉体の性質を知らないと丸暗記になってしまいます。逆に①をやっておけば、②はほとんど「知っている話の応用」になります。
まとめ
- 製剤化のサイエンスは①製剤の性質 ②製剤設計 ③DDSの3つだけ
- ①は材料のクセ、②は作り方、③は届け方
- 順番に意味があるので、マインドマップの並び順どおりに進めるのが最短
- 前半の薬物動態とのつながりは薬物動態(ADME)まとめで確認できる
次は最初のかたまり、固形材料から入っていきます。結晶と非晶質・結晶多形・溶媒和物・共結晶・包接化合物へ進んでください。
薬剤を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、薬剤という科目のほんの一区画です。実際には、吸収から分布・代謝・排泄、そして製剤設計までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全33本・約11時間。「なぜこの薬がここで出てくるのか」「さっき覚えたあの話が、どこにつながるのか」が、バラバラの知識ではなく流れとして入ってきます。細切れに暗記してきたものが、1本の線になる感覚です。
薬剤のマインドマップPDF+解説授業セットは¥9,450。無料のサンプル動画とサンプルPDFがあるので、この「たどる」感覚が自分に合うかどうかは、先に確かめられます。