製剤設計

滅菌法(最終滅菌法と無菌操作法・加熱/照射/ガス法)【薬剤師国家試験】

滅菌方法のマインドマップ
滅菌方法のマインドマップ

ここから無菌製剤に入ります。剤形としては注射剤・点眼剤・眼軟膏を扱いますが、その前にどうやって無菌にするのかという総論を押さえておきましょう。

滅菌法は、どのタイミングで滅菌するかという1本の軸で整理できます。そこさえ掴めば、細かい方法の名前は枝葉として収まります。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。

滅菌と消毒の違い:まず定義から

ここは定義そのものが出題されます。

定義
滅菌 物質中のすべての微生物を殺滅または除去すること
消毒 物質中の病原性を示す微生物を殺滅または除去すること

違いは「すべて」か「病原性を示すものだけ」かの一点です。滅菌のほうが厳しい、と覚えてください。

滅菌が必要になるのは、注射剤・点眼剤・眼軟膏・腹膜透析用剤です。どれも本来なら菌がいない場所に入れる薬だと考えれば、納得できるはずです。

最終滅菌法と無菌操作法:違いは滅菌のタイミング

無菌製剤の作り方は2つあり、滅菌と充填のどちらが先かだけが違います。

工程の順番
最終滅菌法 溶解 → ろ過 → 充填 → 滅菌
無菌操作法 溶解 → ろ過滅菌 → 充填 → 検査

「最終」滅菌法という名前のとおり、滅菌が最後に来る——これが覚え方です。容器に詰めてから丸ごと滅菌するので、そのあと菌が入り込む余地がありません。

一方、熱などに耐えられない薬では最終滅菌法が使えないので、先にろ過で滅菌しておいて、菌が入らない環境で充填する無菌操作法をとります。

原則は最終滅菌法。それが使えないときに無菌操作法

この優先順位も問われるので、セットで押さえてください。

最終滅菌法の条件:10⁻⁶

最終滅菌法には数字の規定があります。

10⁻⁶以下の無菌性保証水準を担保する条件で行う

この10⁻⁶は菌の生存率(確率)です。100万本に1本以下しか菌が生き残らない条件で滅菌しなさい、という意味になります。数字はそのまま覚えてください。

無菌操作法の中身

無菌操作法は、原料段階またはろ過滅菌後から、一連の無菌工程で製造する方法です。あらかじめ器具・材料をすべて滅菌し、清浄区域内で操作します。混入のリスクを極限まで減らす、という発想です。

その中で使われるのがろ過法です。メンブランフィルターなどで微生物をろ過して除去します。熱を一切使わないので、熱に不安定な薬液の無菌調製に利用されます。

アレニウスプロット:なぜ高温短時間なのか

アレニウスプロット
アレニウスプロット

加熱で滅菌するとき、なぜ高温で短時間が良いのかを説明するのがアレニウスプロットです。

グラフの読み方はこうです。

  • 縦軸:反応速度定数(=反応の速さ)
  • 横軸:1/T。温度が分母にあるので、右へ行くほど低温、左へ行くほど高温
  • 2本の線:菌の死滅を表す線と、薬の分解を表す線

低温側(グラフの右)を見てください。ここでは菌が死ぬ速さより、薬が分解する速さのほうが大きい。つまりこの温度で滅菌しようとすると、菌が死ぬころには薬がほとんど分解し尽くしていることになります。

高温側(グラフの左)ではこれが逆転します。菌は一気に死ぬのに、薬の分解はそこまで速くならない。だから、

高温にして短時間で切り上げれば、菌だけ死滅させて薬を残せる

これが「高温短時間が効果的」の理由です。

なお、この式や傾きを使った計算そのものは物理の範囲です。薬剤分野では「こういうグラフがあって、高温短時間が有利だと説明している」まで分かれば十分です。

最終滅菌法の種類:加熱・照射・ガス

種類は3系統です。まず加熱法を考え、熱に弱いものには照射法やガス法——この順で考えると自然に整理できます。

①加熱法

方法 特徴
湿熱滅菌法(高圧蒸気滅菌/オートクレーブ) 高温高湿に耐えられるものに使う。ランニングコストが安く、最も汎用されている。例:121℃・20分
乾熱滅菌法 乾熱空気中で加熱する。ガラス製など熱に安定なものに使う。湿熱より高温・長時間が必要。250℃・30分でエンドトキシンを不活性化できる
高周波滅菌法 高周波を当てて熱を発生させ微生物を殺滅する。電子レンジのイメージ

乾熱滅菌法の250℃・30分でエンドトキシン不活性化は、乾熱滅菌法にしかない特徴なので必ず覚えてください。湿熱滅菌法ではエンドトキシンは壊せません。

②照射法

放射線滅菌法——ガンマ線(⁶⁰Coなど)を照射して微生物を殺滅します。

長所が2つあり、そのまま用途に直結します。

  • 低温で滅菌できる(熱に弱いものに使える)
  • 透過力が強い → 密封包装したまま、包装の上から滅菌できる

だから医療用滅菌ディスポーザブル機器(使い捨ての注射器など)に使われます。包装を開けずに滅菌できるのが決定的な利点です。

③ガス法

酸化エチレンガスや過酸化水素を使って滅菌する方法です。こちらも熱を使わずに済みます。

超ろ過法:製剤ではなく「水」を作る方法

滅菌方法の中に超ろ過法が並んでいますが、これだけ役割が違います。

超ろ過法は、注射用水・精製水の製造に使われる方法です。製剤そのものを滅菌するのではなく、製剤を作るための材料(水)を用意する工程にあたります。

すべての微生物およびエンドトキシンを除去できる能力をもつ膜で水をろ過する

エンドトキシンまで除去できるという点がポイントです。ここで作った注射用水や精製水を使って、注射剤などを製造していきます。

まとめ

  • 滅菌=すべての微生物、消毒=病原性を示す微生物を殺滅または除去
  • 適応は注射剤・点眼剤・眼軟膏・腹膜透析用剤
  • 最終滅菌法は「充填してから滅菌」、無菌操作法は「ろ過滅菌してから充填」。原則は最終滅菌法、使えないときに無菌操作法
  • 最終滅菌法は10⁻⁶以下の無菌性保証水準を担保する条件で行う
  • アレニウスプロットは高温短時間が効果的であることを示す。低温では薬の分解のほうが速い
  • 加熱法:湿熱滅菌法(最も汎用)/乾熱滅菌法(250℃・30分でエンドトキシン不活性化)/高周波滅菌法
  • 照射法:放射線滅菌法(ガンマ線・⁶⁰Co)。低温・透過力が強く密封包装のまま滅菌できる
  • ガス法:酸化エチレンガス・過酸化水素
  • 無菌操作法ではろ過法(メンブランフィルター)を使い、熱に不安定な薬液に用いる
  • 超ろ過法は注射用水・精製水の製造用。エンドトキシンまで除去できる

滅菌の総論が終わったので、次は無菌製剤の代表である注射剤に入ります。注射剤の分類(溶剤・形状)と局方の試験法へ進んでください。ひとつ前は口腔内適用製剤・坐剤・吸入剤、剤形全体の地図は剤形分類の全体像で確認できます。

薬剤を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、薬剤という科目のほんの一区画です。実際には、吸収から分布・代謝・排泄、そして製剤設計までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全33本・約11時間。「なぜこの薬がここで出てくるのか」「さっき覚えたあの話が、どこにつながるのか」が、バラバラの知識ではなく流れとして入ってきます。細切れに暗記してきたものが、1本の線になる感覚です。

薬剤のマインドマップPDF+解説授業セットは¥9,450。無料のサンプル動画とサンプルPDFがあるので、この「たどる」感覚が自分に合うかどうかは、先に確かめられます。

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