
無菌製剤の代表、注射剤に入ります。
注射剤の分類には溶剤で分ける方法と形状で分ける方法の2通りがあります。まったく別の切り口なので、混ぜずに別々に覚えるのがコツです。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。
Contents
溶剤で分ける:水性溶剤と非水性溶剤
水性溶剤
通常は注射用水を使います。リンゲル液や生理食塩液を代用しても構いません。
そして規定が1つ。
水性溶剤はエンドトキシン試験法に適合する必要がある(皮下用などは除く)
注射用水が超ろ過法で作られ、エンドトキシンまで除去できる膜を使っていたのは、この規定に応えるためです。前の記事とつながっています。
非水性溶剤:油性と親水性
非水性溶剤はさらに2つに分かれます。ここで「非水性なのに親水性?」と引っかかる人が多いので、先に整理しておきます。
| 溶剤 | 補足 | |
|---|---|---|
| 油性 | 植物油(大豆油、オリーブ油など) | 鉱油試験法に適合する必要がある |
| 親水性 | エタノールなど | 水ではないが水に溶ける溶剤、という意味 |
「非水性=水そのものではない」という意味であって、「水に溶けない」という意味ではありません。エタノールは水ではないけれど水に混ざる——だから非水性溶剤の中の親水性、という位置づけです。
油性溶剤に鉱油試験法が課される理由もはっきりしています。鉱油は体内に蓄積しやすく、肝障害を起こす可能性があるためです。植物油に鉱油が混ざっていないかを確認する試験、と理解してください。
溶液性注射剤の製法

作り方は滅菌法でやったとおりです。
【最終滅菌法】 主薬・添加剤・溶剤を溶解 → ろ過 → 充填 → 滅菌 → 検査・表示・包装 【無菌操作法】 溶解 → ろ過滅菌 → 充填 → 検査・表示・包装
どちらの場合も、充填する容器を洗浄・滅菌しておくことが決められています。中身だけ無菌にしても、容器が汚れていては意味がないからです。
形状で分ける:液状・固形・半固形
液状製剤:懸濁性と乳濁性の粒子径が最重要
液状製剤は4つに分かれます。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 非懸濁性・非乳濁性注射剤 | いわゆる普通の注射剤。溶液になっているもの(生理食塩液の注射剤など)。多くはこのタイプ |
| 懸濁性注射剤 | 固体粒子が分散したもの |
| 乳濁性注射剤 | 液体粒子が分散したもの |
| その他 | 輸液剤、持続性注射剤 |
国試で問われるのは懸濁性と乳濁性の2つです。しかも聞かれることは決まっていて、最大粒子径と使ってはいけない投与経路です。
懸濁性注射剤:150μm以下

固体の粒子が分散しているもので、徐放性を持たせるために懸濁にします。
- 最大粒子径 150μm以下
- 血管内注射・脊髄注射はダメ
粒子径が大きいので、血管や脊髄に入れると詰まる危険があります。語呂はこれです。
「けんちゃん欠席なしでいこう」 けん → 懸濁 欠 → 血液(血管内) 席 → 脊髄 なし → ダメ いこう → 150μm
乳濁性注射剤:7μm以下

液体の粒子が分散しているものです。
- 最大粒子径 7μm以下
- 脊髄注射はダメ
- o/w型を使う(w/o型は使わない)
「なっちゃん入籍できない」 なっ → 7μm 入 → 乳濁 籍 → 脊髄 できない → ダメ
7μmという数字は、赤血球のサイズ(約8μm)より小さいと覚えると出しやすくなります。赤血球が通れる場所なら詰まらない、という発想です。
そしてo/w型を使う——これは血液という水の中に入れるのだから、外相が水でなければ混ざらない、と考えれば乳剤の知識で導けます。
懸濁性は血管内も脊髄もダメ、乳濁性は脊髄だけダメ——この差が問われるので、2つの語呂を並べて覚えてください。
固形注射剤:なぜわざわざ固形にするのか

注射剤なのに固形にするのには理由があります。熱や水に弱い薬が多いからです。液体のままでは保存できないので、あえて固形にしておき、使用時に溶かします。
| 種類 | |
|---|---|
| 凍結乾燥注射剤 | どちらも無菌操作法で作られる |
| 粉末注射剤 | 同上 |
熱や水に弱い → 最終滅菌法が使えない → 無菌操作法。この筋道でつながっているので、セットで覚えられます。
凍結乾燥注射剤の製法はこうです。
主薬・添加剤を注射用水で溶解 → ろ過滅菌 → 滅菌済みの容器に充填 → 凍結乾燥 → 密封 → 検査・表示・包装
病院では、これを注射用水などで溶かして調製してから使います。
半固形製剤:埋め込み注射剤
埋め込み注射剤がこれにあたります。筋肉内注射や皮下注射で用い、持続性を目的とします。名前と目的を押さえれば十分です。
注射剤の試験法
注射剤には、材料(主薬・添加剤・溶剤)それぞれの試験法と並んで、製品としての試験法が規定されています。この二本立てになっている点をまず押さえてください。
| 試験法 | 対象 |
|---|---|
| 無菌試験法 | 無菌製剤なので必須 |
| 製剤均一性試験法 | 溶解または懸濁させるもの |
| 注射剤の不溶性異物検査法 | |
| 注射剤の不溶性微粒子試験法 | |
| 注射剤の採取容量試験法 | |
| エンドトキシン試験法 |
「注射剤の」という冠がついているのは、点眼剤にも似た名前の試験(点眼剤の不溶性異物検査法など)があるためです。局方では別の試験として名前が決まっているので、どちらの試験か区別して覚える必要があります。詳しくは局方の試験法まとめで整理します。
まとめ
- 注射剤の分類は溶剤で分ける方法と形状で分ける方法の2通り
- 水性溶剤は注射用水(リンゲル液・生理食塩液も可)。エンドトキシン試験法に適合が必要
- 非水性溶剤は油性(植物油・鉱油試験法が必要)と親水性(エタノールなど)
- 鉱油は蓄積して肝障害を起こしうるので鉱油試験法がある
- 懸濁性注射剤:150μm以下、血管内・脊髄はダメ(「けんちゃん欠席なしでいこう」)
- 乳濁性注射剤:7μm以下、脊髄はダメ、o/w型(「なっちゃん入籍できない」)
- 固形注射剤(凍結乾燥・粉末)は熱や水に弱い薬に使い、無菌操作法で作る
- 半固形製剤=埋め込み注射剤、持続性が目的
- 試験法は無菌試験法・製剤均一性試験法・注射剤の不溶性異物検査法・不溶性微粒子試験法・採取容量試験法・エンドトキシン試験法
次は注射剤の計算問題、等張化です。注射剤の等張化計算(食塩等量法・氷点降下法・等張容積法)へ進んでください。滅菌の総論は滅菌法、剤形全体の地図は剤形分類の全体像で確認できます。
薬剤を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、薬剤という科目のほんの一区画です。実際には、吸収から分布・代謝・排泄、そして製剤設計までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
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