製剤の性質

乳剤(Bancroftの経験則・型の判定・転相・分離現象)【薬剤師国家試験】

粗大分散系のマインドマップ
粗大分散系のマインドマップ

粗大分散系の後半、乳剤です。前の記事の懸濁剤が「固体粒子が液体に分散したもの」だったのに対し、乳剤は液体粒子が液体中に分散したものになります。

水と油という、本来混ざらないものを無理やり混ぜているので、乳剤には固有の論点がいくつもあります。国試頻出のテーマなので、ここは1本まるごと使って整理します。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。

o/w型とw/o型:分母が外側

乳剤の型
乳剤の型

乳剤はo/w型とw/o型に分かれます。読み方のルールは1つだけです。

分母が外側(連続相)、分子が内側(分散相)

型 外側(分母) 内側(分子)
o/w型 水(water) 油(oil)
w/o型 油(oil) 水(water)

o/w型なら「水の中に油の粒が浮いている」、w/o型なら「油の中に水の粒が浮いている」。分数の形をそのまま読めばいいので、慣れれば取り違えません。

Bancroftの経験則:型を決めるのは乳化剤のHLB

Bancroftの経験則
Bancroftの経験則

ここで1つ疑問が出てきます。水と油を50%ずつ入れたとき、どちらが外側になるのか。両方とも液体なので、量だけでは決まりません。

これを決めるのが、加える乳化剤のHLBです。これがBancroftの経験則です。

界面活性剤の記事でやったとおり、HLBは7が基準で、大きいほど親水性でした。

乳化剤のHLB 性質 できる乳剤
大きい(7以上) 親水性 o/w型(外側が水)
小さい(7以下) 親油性 w/o型(外側が油)

理屈で言えば、「乳化剤がなじむほうの液体が、外側(連続相)になる」ということです。親水性の乳化剤を使えば水側になじむので水が外に、親油性の乳化剤を使えば油側になじむので油が外に。こう考えれば暗記しなくても導けます。

型の判定法:o/wを基準に覚える

o/w型の判定
o/w型の判定

できた乳剤がどちらの型かを調べる方法です。o/w型(外側が水)を基準に覚えて、w/o型はその逆とするのが最短です。

o/w型は外側が水なので、性質が全部「水っぽく」出ます。

判定法 o/w型 w/o型
水を加える 全体に広がる 広がらない
電気伝導性 流れやすい 流れにくい
メチレンブルー(水溶性色素) 染まる 染まらない
スダンⅢ(油溶性の赤色色素) 染まらない 染まる

メチレンブルーは水溶性の色素なので、外側が水のo/w型で全体が染まります。スダンⅢは油溶性なので、外側が油のw/o型で染まります。色素の性質と外相が一致するほうが染まる、と理解しておけば丸暗記は不要です。

転相:74%という数字を覚える

転相
転相

転相は、乳剤の型が途中でひっくり返る現象です。ここは具体的な数字が問われるので、しっかり押さえてください。

w/o型(外が油、中が水)の乳剤に、水相をどんどん加えていくとどうなるか。

  1. 中の水滴が増えていき、粘度がだんだん上がっていく
  2. さらに加えて、水相の割合が74%に達したところで限界が来る
  3. 粘度が一気に下がり、o/w型に転相する(外側が水、中が油に入れ替わる)

つまり、もともと油だった相は26%まで追い込まれ、そこで外側と内側が逆転します。

転相が起こるのは、内相の割合が約74%に達したとき

この74%という数字は国試で出題されたことがあるので、必ず覚えてください。また、転相の判定に粘度の変化を使える(上がり続けた粘度が急落する)という点もあわせて押さえておきましょう。

分離現象:クリーミング・凝集・合一

乳剤が壊れていく現象は3つあります。まず大枠として、

クリーミングと凝集はまだ再分散できる。進行して合一まで行くと再分散できない

この可逆・不可逆の区別が最重要です。

クリーミング

クリーミング
クリーミング

乳化粒子が浮上または沈降して、液面か液底に濃い部分ができる現象です。

密度差によるので、油のほうが軽ければ上に、重ければ下に集まります。ただし粒子どうしは独立したままで、つぶつぶの形は保たれています。だから振れば元に戻ります。

凝集

凝集
凝集

粒子が物理的に一体化せずに、集合体を作る現象です。

粒子どうしが寄り集まって固まってきますが、膜はまだ破れていません。したがってこちらも可逆的です。

合一

粒子の境界の膜が破れて、大きな液滴になってしまう現象です。

ここまで来ると再分散は不可能で、さらに進むと完全な2相分離に至ります。クリーミングからも凝集からも、放置すれば合一に進みます。

3つの関係

クリーミング(濃い部分ができる・可逆) 凝集(集合体を作る・可逆)  ↓ 放置すると進行 合一(膜が破れて一体化・不可逆)→ 2相分離

「まだ粒が粒として存在しているか、それとも一体化してしまったか」が可逆・不可逆の分かれ目です。

まとめ

  • 乳剤は液体粒子が液体中に分散したもの(懸濁剤は固体粒子)
  • 分母が外側。o/w型は外が水、w/o型は外が油
  • Bancroftの経験則:乳化剤のHLBが大きい(親水性)→ o/w型、小さい(親油性)→ w/o型
  • 型の判定はo/w型基準で:水が広がる・電気が流れやすい・メチレンブルーで染まる。w/o型は逆で、スダンⅢで染まる
  • 転相は内相が約74%に達したときに起こり、粘度が急落する。74%は要暗記
  • 分離現象はクリーミング(可逆)・凝集(可逆)・合一(不可逆→2相分離)

これで「製剤の性質」——固形材料・半固形/液状材料・分散系材料——がすべて終わりました。次からは製剤設計に入ります。ひとつ前の懸濁剤は懸濁剤とStokesの式(沈降を防ぐ製剤的な工夫)、全体像は製剤化のサイエンスとは?で確認できます。

薬剤を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、薬剤という科目のほんの一区画です。実際には、吸収から分布・代謝・排泄、そして製剤設計までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全33本・約11時間。「なぜこの薬がここで出てくるのか」「さっき覚えたあの話が、どこにつながるのか」が、バラバラの知識ではなく流れとして入ってきます。細切れに暗記してきたものが、1本の線になる感覚です。

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