
前の記事では粒子の大きさを測る話をしました。ここからは、粉体そのもののクセ——充填性・流動性・吸湿性の3つを扱います。
この3つはどれも「粒子径が小さいとどうなるか」という1本の軸でつながっています。先に結論だけ言っておくと、粒子が小さいと充填性も流動性も悪くなる。この感覚を持ったまま読むと、個々の用語が全部同じ話に見えてきます。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。
Contents
充填性:どれだけギュッと詰まるか

充填性とは、粉体がどれだけ隙間なく詰まるかを表す性質です。
メスシリンダーに粉体を注ぎ込むと体積が読めます。これが見かけの体積で、ここから求めた密度がかさ密度(見かけ密度)です。ただしこの中には、粒子と粒子のあいだの隙間がたっぷり含まれています。
一方、隙間をすべて取り除いて粉体そのものだけを集めた体積が真の体積、そこから求めたのが真密度です。真密度は前の記事で出てきたピクノメーター法で測ります。
充填率と空隙率

この2つの体積の比が充填率です。
充填率 = 真の体積 ÷ 見かけの体積
そして隙間のほうの割合が空隙率 ε。どちらも割合なので、足せば1になります。
空隙率 ε + 充填率 = 1
具体例:メスシリンダーで測った見かけの体積が100 mL、ピクノメーター法で測った真の体積が60 mLだったとします。充填率は 60 ÷ 100 = 0.6。空隙率は 1 − 0.6 = 0.4 です。
粒子が小さいと充填性は悪くなる
粒子径が小さいと比表面積が大きくなり、粒子どうしがくっつきやすく、ふわっとした状態になります。その結果、充填性は悪くなる(=空隙率が大きくなる)。
「小さいほうが隙間なく詰まりそう」という直感とは逆なので、ここは意識して覚えておいてください。
流動性:サラサラかベタベタか
流動性の測り方は3つあります。
①安息角

粉体をサラサラと落としていくと山ができます。その山の斜面の角度が安息角です。
流動性がよい粉体は裾まで広がるので、山が平べったくなる=安息角が小さくなる。
安息角が小さいほど流動性がよい
「安息」=粉体が落ち着ける角度、とイメージすると名前も覚えやすいです。
②オリフィス流出法
オリフィスとは小さな穴(小孔)のことです。容器の底に小孔を開けておき、シャッターを開けたときの流出速度を測ります。
流出速度が大きいほど流動性がよい
③内部摩擦係数

臼のような装置に粉体をぎっしり詰め、上におもりを載せて横に引っ張ります。このとき引っ張る力(=せん断応力)を測ります。
おもりを重くするほど引っ張るのは大変になるので、おもりを1 kg、3 kg…と変えながらデータを取り、グラフにします。その直線の傾きが内部摩擦係数です。
傾きが大きい=同じおもりでも引っ張るのに大きな力が要る=ベタベタしている、ということなので、
内部摩擦係数が大きいほど流動性が悪い
流動性が良いと、3つの指標はどうなるか

なぜ粒子が小さいと流動性が悪いのか。それは、ファンデルワールス力や静電気力といった粒子どうしをくっつける力が働きやすくなるからです。
ここまでの3つの指標を、「流動性が良い(=粒子径が大きい)とき、値はどうなるか」でまとめると、こうなります。
| はかり方 | 流動性が良い(粒子径が大きい)とき | 見え方 |
|---|---|---|
| 安息角 | 小さい | 裾まで広がる |
| オリフィスからの流出速度 | 大きい | 穴からさっと出る |
| 内部摩擦係数≒凝集性 | 小さい | ベタベタしない |
凝集性は、付着力と同じく内部摩擦係数と一緒に動くので、ここでは同じものとして扱っています。粒子径が小さいと全部逆になり、流動性が悪くなります。
丸暗記しなくても、「小さい粒子はベタベタくっつく」という1点から全部導けます。凝集性が大きい → 山は崩れず安息角は大きい → 穴からも出にくい → 引っ張るのも大変、という流れです。
流動性を改善する2つの方法

①滑沢剤を加える
滑沢剤を入れると粒子の滑りがよくなり、安息角が小さくなります。ただしグラフを見ると分かるとおり、入れすぎると逆に安息角が大きくなってしまう。つまり最適値があるということです。
滑沢剤の最適値はおおよそ1〜2%

滑沢剤は2つ覚えてください。語呂は「勝手にタルをステまくる」。
- タル → タルク
- ステ → ステアリン酸マグネシウム
②造粒して粒子径を大きくする
粒子が小さいと流動性が悪いのだから、まとめて大きくしてしまえばいい、という発想です。散剤を顆粒剤にするのがまさにこれで、製剤設計の造粒工程につながります。
吸湿性:臨界相対湿度(CRH)

吸湿性で覚えるべき用語は臨界相対湿度(CRH)ひとつです。
縦軸に吸湿質量、横軸に相対湿度を取ったグラフを見てください。挙動が水溶性物質と非水溶性物質でまったく違うのがポイントです。
| 挙動 | CRHを持つか | |
|---|---|---|
| 水溶性物質 | ある湿度までほとんど吸湿しないが、その湿度を超えた瞬間に吸湿量が激増する | 持つ |
| 非水溶性物質 | 湿度が上がるにつれて徐々に吸湿していく | 持たない |
この「激増が始まる湿度」がCRHです。CRHは水溶性物質に対して使われる言葉で、非水溶性物質にはCRHがない——ここは引っかけで出るので必ず押さえてください。
CRHが高い水溶性物質ほど、高い湿度まで耐えられる=吸湿しにくいということになります。
エルダーの仮説:混ぜると吸湿しやすくなる

水溶性物質どうしを混ぜると、混合物のCRHはどうなるか。それを表したのがエルダーの仮説です。
CRH(混合物) = 個々のCRHの積(混合比には無関係)
CRHは百分率なので、小数にすると1より小さい値です。掛け算すれば必ず元より小さくなります。
具体例:CRHが0.8の物質Aと、0.6の物質Bを混ぜると、混合物のCRHは 0.8 × 0.6 = 0.48。
つまり、水溶性物質を混ぜると、もとの物質単独よりも吸湿しやすくなる。しかも混合比には関係しない、という少し不思議な仮説です。近似的に成り立つ関係として、結論と式をセットで覚えてください。
まとめ
- 充填率 = 真の体積 ÷ 見かけの体積、空隙率ε + 充填率 = 1
- 粒子径が小さい → 比表面積↑ → ふわっとする → 充填性は悪い
- 流動性の測定は安息角(小さいほどよい)・オリフィス流出速度(大きいほどよい)・内部摩擦係数(大きいほど悪い)
- 粒子径が小さいとファンデルワールス力・静電気力が働き、流動性は悪い
- 改善策は滑沢剤(最適値1〜2%、入れすぎ注意)と造粒。滑沢剤の語呂は「勝手にタルをステまくる」=タルク・ステアリン酸マグネシウム
- CRHは水溶性物質だけが持つ。非水溶性物質は徐々に吸湿し、CRHを持たない
- エルダーの仮説:混合物のCRH = 個々のCRHの積(混合比無関係)→ 混ぜると吸湿しやすくなる
固形材料はここまでです。次は半固形・液状材料に移ります。ニュートン流動と非ニュートン流動の見分け方へ進んでください。粒度分布の話は粉体の性質①粒度分布と粒子径測定法、全体像は製剤化のサイエンスとは?で確認できます。
薬剤を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、薬剤という科目のほんの一区画です。実際には、吸収から分布・代謝・排泄、そして製剤設計までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全33本・約11時間。「なぜこの薬がここで出てくるのか」「さっき覚えたあの話が、どこにつながるのか」が、バラバラの知識ではなく流れとして入ってきます。細切れに暗記してきたものが、1本の線になる感覚です。
薬剤のマインドマップPDF+解説授業セットは¥9,450。無料のサンプル動画とサンプルPDFがあるので、この「たどる」感覚が自分に合うかどうかは、先に確かめられます。