
粉体というと散剤のことかと思いがちですが、そうではありません。医薬品の原料はかなりの割合が粉体として扱われ、そこから製造されていきます。だから粉体の性質は、錠剤もカプセル剤も含めた製剤づくり全体の土台になります。
粉体の勉強は大きく2段階です。
- 粒子の大きさを測る話(粒度分布と粒子径測定法) ← この記事
- 粉体そのものの物理的性質(充填性・流動性・吸湿性) ← 次の記事
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。
Contents
粒度分布:モード径とメジアン径

粉体はいろいろな大きさの粒子が混ざったものです。その散らばり方を表したのが粒度分布で、グラフは2種類あります。
| グラフ | 読み取る値 | 意味 |
|---|---|---|
| 頻度分布曲線 | モード径 | 一番多い粒子径(最頻値) |
| 積算分布曲線 | メジアン径 | 累積50%にあたる粒子径(中央値) |
テストの点数で考えると分かりやすいです。「一番人数が多かった点数」がモード、「ちょうど真ん中の人の点数」がメジアン。モードは「流行(モード)」、メジアンは「真ん中」と結びつけておけば取り違えません。
個数基準と質量基準:国試はここを聞いてくる
さらにそれぞれのグラフに、個数基準と質量基準の2つがあります。
- 個数基準:「1μmの粒子が何個あったか」を数える
- 質量基準:「1μmの粒子が何gあったか」を量る
ここで一番出題されるのがこれです。
モード径・メジアン径は、個数基準よりも質量基準のほうが大きい
覚え方は「個 < 質」。不等号の向きをそのまま覚えてください。
理由は単純で、重さは粒子径の3乗に比例するからです。2μmの粒子と10μmの粒子を比べると、径は5倍でも重さは5³=125倍。個数では少数派だった大きい粒子が、質量で見ると圧倒的な存在感になります。だから分布全体が大きいほうへ引っ張られる、というわけです。
これは頻度分布曲線でも積算分布曲線でも同じように成り立ちます。
粒子径測定法:まずは2つに仕分ける
測定法はたくさんありますが、「粒度分布まで分かるか、分からないか」で仕分けると一気に整理できます。
| 測定法 | |
|---|---|
| 粒度分布がわかる(質量基準) | ふるい分け法、沈降法 |
| 粒度分布がわかる(個数基準) | 顕微鏡法、コールターカウンター法 |
| 粒度分布がわかる(その他) | レーザー回折・散乱法 |
| 粒度分布はわからない | 比表面積測定法(空気透過法・気体吸着法) |
質量基準:ふるい分け法と沈降法
ふるい分け法は名前のとおり、ふるいにかけて残った粉の重さを量る方法です。重さを量っているのだから質量基準、と理屈で分かります。

沈降法は国試でよく出ます。ビーカーの液体に大小さまざまな粒子を入れると、沈んでいって底に溜まる。その溜まった重さの変化をグラフにします。
押さえるべきはこの一点です。
沈降速度は粒子径(半径・直径)の2乗に比例する
グラフは2段階になります。前半の曲がっている部分は「大きい粒子と小さい粒子の両方が沈んでいる」段階、後半の直線部分は「大きい粒子は沈み終わって、小さい粒子だけが沈んでいる」段階です。
計算問題の解き方は、たとえばこうです。大きい粒子が全部沈むのに10分、小さい粒子が全部沈むのに40分かかった。時間の差は4倍。速度は径の2乗に比例するのだから、径の差は√4 = 2倍。これだけで解けます。
沈降速度の式自体は、分子に「粒子の密度 − 液体の密度」と重力加速度、分母に液体の粘度が来る形をしています。難しく見えますが、言っているのは「重ければ速く沈む、液がネバネバしていれば遅く沈む」という当たり前のことです。
個数基準:顕微鏡法とコールターカウンター法

顕微鏡法では、粒子が不定形なので「どこをどう測るか」を決めて名前を付けています。3つ覚えてください。
| 径の名前 | 測り方 | 覚え方 |
|---|---|---|
| Feret径(フェレー径) | 一定方向の平行線ではさんだときの間隔 | 平行線=フェンス、で「フェ」レー径 |
| Heywood径(ヘイウッド径) | 粒子と同じ面積を持つ円の直径 | ウッド(木)の断面は丸い → 円 |
| Martin径(マーチン径) | 粒子を面積で二等分する線の長さ | マーチン=「真っ二つ」 |
顕微鏡法の特徴は、凹凸や形まで分かることです。実際に見ているのだから当然ですね。
コールターカウンター法は、水溶液の電気抵抗を測って粒子径を求める方法です。出題頻度は高くないので、形状までは分からないという点と名前だけ押さえておけば十分です。
その他:レーザー回折・散乱法
レーザー回折・散乱法は、光の散乱角度が粒子の大きさによって変わることを利用します。散乱の角度を測って粒子径を求める方法です。
粒度分布はわからないが重要:比表面積測定法

比表面積とは、単位体積あたりの表面積のことです。
なぜこれで粒子径が分かるのかというと、粒子径は比表面積に反比例するという関係があるからです。比表面積さえ測れれば、平均粒子径が逆算できます。粒度分布は分かりませんが、実務では非常によく使われる方法です。
測定法は2つ。
| 測定法 | 使う式 | 原理 |
|---|---|---|
| 空気透過法 | Kozeny-Carman式 | 筒に粉体を詰めて空気を通し、通りにくさを測る。粒子が小さいほど空気が通りにくい |
| 気体吸着法 | Langmuir式・BET式 | 粉体にガスを吸着させ、吸着量から表面積を出す |
気体吸着法に式が2つあるのは、ガスが単層で吸着する場合(Langmuir式)と多層で吸着する場合(BET式)とで扱いが変わるからです。「なぜ2つあるのか」まで知っておくと混乱しません。
そして局方の試験法として採用されているのは気体吸着法のほうです。ここは出題されるので押さえてください。
粒子密度測定法:ピクノメーター法
粒子の密度を測る方法としてピクノメーター法があります。これも局方の試験法です。名前だけ覚えておけば大丈夫ですが、次の記事の「充填性」で真密度を求めるときに登場するので、そこでまた出てきます。
まとめ
- 頻度分布曲線 → モード径(最頻値)、積算分布曲線 → メジアン径(累積50%)
- 個数基準 < 質量基準。重さは径の3乗に比例するので、質量基準のほうが値が大きくなる
- 粒子径測定法は「粒度分布が分かるか分からないか」で仕分ける
- 質量基準=ふるい分け法・沈降法(沈降速度は径の2乗に比例)
- 個数基準=顕微鏡法(Feret径・Heywood径・Martin径、形まで分かる)・コールターカウンター法(形は分からない)
- 比表面積測定法は粒度分布は分からないが重要。空気透過法=Kozeny-Carman式、気体吸着法=Langmuir式・BET式(局方はこちら)
- 粒子密度はピクノメーター法(局方の試験法)
次は粉体そのもののクセ、充填性・流動性・吸湿性です。粉体の性質②充填性・流動性・吸湿性へ進んでください。固形材料の溶解の話は溶解度と溶解速度(Noyes-Whitney式)の考え方、全体像は製剤化のサイエンスとは?で確認できます。
薬剤を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、薬剤という科目のほんの一区画です。実際には、吸収から分布・代謝・排泄、そして製剤設計までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全33本・約11時間。「なぜこの薬がここで出てくるのか」「さっき覚えたあの話が、どこにつながるのか」が、バラバラの知識ではなく流れとして入ってきます。細切れに暗記してきたものが、1本の線になる感覚です。
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