
分散系材料の3つ目、コロイド分散系に入ります。
いきなりコロイドの話に入る前に、分散系全体の中でコロイドがどこに位置するのかを押さえておきましょう。ここを先に掴んでおくと、「なぜコロイドは沈まないのか」「なぜ粗大分散系は沈むのか」が理屈でつながります。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。
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分散系は「大きさ」で3つに分かれる

分散系の分類は、粒子の大きさで決まっています。
| 分散系 | 粒子径 | 半透膜 | 重力沈降 |
|---|---|---|---|
| 分子分散系 | 1 nm以下 | 通る | しない |
| コロイド分散系 | 1 nm 〜 1 μm | 通らない | しない |
| 粗大分散系 | 1 μm以上 | 通らない | する |
境目になっているのが1 μmです。ここが「半透膜を通るか」「重力で沈むか」の分かれ目になります。
1 μmという大きさの感覚をつかむには、赤血球が約8 μmというのを基準にすると便利です。ちなみに製剤設計で出てくる乳濁性注射剤の最大粒子径は7 μm以下と決められていますが、これは「赤血球より小さくしておけば血管を詰まらせない」という発想で覚えられます。
なぜ小さいと沈まないのか
粒子が小さいと沈まない、というのは少し不思議に感じるかもしれません。理由は重さの効き方にあります。
10 μmの粒子と1 μmの粒子を比べると、径は10倍差ですが、重さは10³ = 1000倍も違います(体積は半径の3乗に比例するため)。
重さが小さくなると、まわりの水分子が熱運動でバチバチとぶつかってくる影響のほうが大きくなります。その結果、粒子はジグザグに揺さぶられ続けて沈むことができません。拡散しようとする力が、沈もうとする力に勝つわけです。
一方、粗大分散系の粒子は重いので、水分子がぶつかった程度ではびくともせず、重力に従って沈んでいきます。
コロイド分散系の共通性質
コロイド溶液の例としては、界面活性剤のミセル溶液や高分子溶液があります。共通する性質は3つです。
①半透膜を通らない
粒子径が1 nmを超えているので、半透膜は通過できません。
②チンダル現象
光を当てると、光の通り道が見える現象です。コロイド粒子が光を散乱させるために起こります。
③ブラウン運動
分散媒の分子(水など)がコロイド粒子に衝突して、粒子がジグザグに動く現象です。
ここで大事なのは、ブラウン運動が起きている = 熱運動に揺さぶられている = 沈降しないという流れです。したがって、
コロイド粒子にはStokesの式が当てはまらない
これは国試で狙われるポイントです。Stokesの式は「重力で沈む」ことを前提にした式なので、そもそも沈まないコロイドには使えません。Stokesの式が使えるのは、沈降する粗大分散系(懸濁剤)のほうです(懸濁剤とStokesの式で扱います)。
コロイドの分類:疎水コロイドと親水コロイド
コロイドは大きく疎水コロイドと親水コロイドに分かれます。名前のとおり、
- 疎水コロイド:水をあまり好まない。水和層を持たない
- 親水コロイド:水が大好き。水和層を持つ
親水コロイドはさらに2つに分かれる
| 分類 | 何がコロイドサイズか | 例 |
|---|---|---|
| 会合コロイド | 会合体(集まったもの)がコロイドの大きさ | ミセル |
| 分子コロイド | 1分子がコロイドの大きさ | アルブミンなどの高分子化合物 |
「バラバラの分子が集まって初めてコロイドサイズになる」のが会合コロイド、「1分子ですでにコロイドサイズ」なのが分子コロイドです。
疎水コロイドはなぜ沈殿しないのか:電気二重層
疎水コロイドは水和層を持たないのに、なぜ沈殿せずに分散していられるのでしょうか。答えは電気的な反発です。
そのしくみが電気二重層です。順番に見ていきます。
- 疎水コロイドの粒子表面が、たとえばマイナスに帯電している
- すると反対電荷であるプラスの対イオンが、粒子のまわりに固定されるように張り付く。これが固定層
- 固定層のプラスに引き寄せられて、さらに外側にマイナスの対イオンがゆるく集まる。これが拡散層
- この固定層+拡散層の2層構造が電気二重層
粒子どうしが近づいても、この電気二重層があるおかげで電気的に反発し合い、くっつかない。だから沈殿しないわけです。
少しの塩で凝析してしまう
ところがこのバリアは、電解質(塩)を少し加えるだけで中和されてしまいます。プラスとマイナスが打ち消し合って反発力が失われ、粒子どうしがくっついて沈殿する。
疎水コロイド + 少量の電解質 → 凝析
このつながりで覚えてください。
親水コロイドは二重に守られている
親水コロイドも、疎水コロイドと同じように電気二重層(固定層+拡散層)を持っています。そのうえで、さらに水和層も持っています。
つまり、電気的な反発 + 水和層の二段構えで守られているわけです。だからきわめて安定で、少量の電解質を加えた程度では沈殿しません。
ただし、大量の電解質を加えると、さすがに水和層が奪われて沈殿します。これが塩析です。
親水コロイド + 大量の電解質 → 塩析
凝析と塩析の覚え方

この2つは名前も現象も似ていて、毎年のように取り違えが起きます。コロイドの種類と組にして覚えるのが確実です。
| コロイドの種類 | 必要な電解質の量 | |
|---|---|---|
| 凝析 | 疎水コロイド | 少量 |
| 塩析 | 親水コロイド | 大量 |
「塩析と親水コロイド」をワンセットで覚えてしまえば、残りの「凝析は疎水コロイド」は自動的に決まります。
まとめ
- 分散系は粒子径で3分類:分子分散系(1 nm以下)・コロイド分散系(1 nm〜1 μm)・粗大分散系(1 μm以上)
- 境目の1 μmは、半透膜を通るか・重力沈降するかの分かれ目。コロイドは半透膜を通らないが沈降しない
- 小さい粒子が沈まないのは、重さが径の3乗で効くため、熱運動による拡散が重力に勝つから
- 共通性質は半透膜を通らない・チンダル現象・ブラウン運動。ブラウン運動をするのでStokesの式は当てはまらない
- 分類は疎水コロイド(水和層なし)と親水コロイド(水和層あり)。親水コロイドは会合コロイド(ミセル)と分子コロイド(アルブミン)に分かれる
- 疎水コロイドは電気二重層(固定層+拡散層)で反発し合って安定
- 凝析=疎水コロイド+少量の電解質、塩析=親水コロイド+大量の電解質
次は、コロイドを安定化・不安定化させる各論に進みます。凝析・塩析・コアセルベーション・保護コロイド・DLVO理論へ進んでください。ひとつ前の単元は界面活性剤(ミセル・CMC・クラフト点と曇点・HLB)、全体像は製剤化のサイエンスとは?で確認できます。
薬剤を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、薬剤という科目のほんの一区画です。実際には、吸収から分布・代謝・排泄、そして製剤設計までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全33本・約11時間。「なぜこの薬がここで出てくるのか」「さっき覚えたあの話が、どこにつながるのか」が、バラバラの知識ではなく流れとして入ってきます。細切れに暗記してきたものが、1本の線になる感覚です。
薬剤のマインドマップPDF+解説授業セットは¥9,450。無料のサンプル動画とサンプルPDFがあるので、この「たどる」感覚が自分に合うかどうかは、先に確かめられます。