製剤設計

口腔内適用製剤・坐剤・吸入剤【薬剤師国家試験】

製剤の種類と製剤工程のマインドマップ
製剤の種類と製剤工程のマインドマップ

製剤の種類と製剤工程の最後です。ここは製剤の紹介がほとんどなので、製法のような重い暗記はありません。

ただし3つとも服薬指導で実際に使う知識なので、実務でも国試でも形を変えて聞かれます。特に吸入剤の使い方は、そのまま指導の言葉になります。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。

口腔内に適用する製剤:全身か局所かで割る

口腔内の製剤は、全身循環に乗せたいのか、その場で効かせたいのかで2つに割ると整理できます。

口腔粘膜系:全身に乗せる(肝初回通過効果を回避)

口腔粘膜から吸収させると、肝初回通過効果を回避できます。これが口腔粘膜系の最大の存在理由です。

製剤 使い方 代表例
舌下錠 舌の裏に置いて溶かす。急速に吸収させるのが目的 ニトログリセリン
バッカル錠 臼歯(奥歯)と頬の間で溶解させ、口腔粘膜から吸収 —
ガム剤 噛んで口腔粘膜から吸収させ、全身循環に乗せる ニコチンガム

舌下錠とバッカル錠の違いは置く場所です。舌の裏か、奥歯と頬の間か。名前と場所をセットで覚えれば取り違えません。

舌下錠が「急速に」なのは、狭心症発作時のニトログリセリンを思い浮かべれば納得できるはずです。

局所に効かせるもの

製剤 特徴
トローチ剤 口腔内で溶解または崩壊させ、口腔・咽頭などの局所に適用する
付着錠 患部に付着させる。アフタ性口内炎などに使う

こちらは吸収させるのが目的ではないので、肝初回通過効果の話は出てきません。

坐剤:長所と短所、そして3つの基剤

長所は4つ、短所は1つ

内容
長所 胃腸への刺激・障害が少ない
長所 胃腸内のpHや酵素で分解される薬も分解されにくい
長所 嚥下できない人・服用を拒否する人にも使える(乳幼児の解熱坐剤など)
長所 肝初回通過効果を回避できる → 代謝による失活が少ない
短所 挿入時に違和感があり、排便で排出されてしまうことがある

長所がすべて「消化管を通らない」ことから出ている点に注目してください。1つ1つ覚えるのではなく、「口から飲まない」という一点から4つとも導けると考えたほうが速いです。

肝初回通過効果の回避には「深く入れすぎない」

坐剤が肝初回通過効果を回避できるのは、直腸の下部から吸収された薬が下大静脈に入るからです。

ところが奥まで押し込みすぎると、直腸上部から吸収されて門脈に入り、肝臓を通ってしまいます。せっかくの長所が消えるわけです。投与経路の全体像は非経口薬まとめで確認できます。

基剤は油性・水性・乳剤性の3つ

軟膏と同じく、坐剤でも基剤が主役です。

基剤 種類 ポイント
油性 カカオ脂 融点30〜34℃で体温で融ける。結晶多形があり融点が変わることがある
油性 ハードファット(ウィテプゾール®) 人工的に作られるので、吸水性や薬の放出性がカカオ脂より安定
水性 マクロゴール 直腸分泌液で溶けて薬が放出される
乳剤性 o/w型 カカオ脂 + レシチン(1%) + 水(20%)

カカオ脂の融点に幅がある理由が「結晶多形」だというのは、結晶と非晶質・結晶多形でやった内容がそのまま効いてくるところです。結晶形が変われば融点も変わる——製剤の性質で学んだことが、ここで実物になって出てきます。

マクロゴールは軟膏の水溶性基剤でも登場しました。硬さを自由に調整できるので、坐剤として扱いやすい硬さにして使えます。

実務:水性を先、油性を後

坐剤を2種類使うとき、どちらを先に入れるかが問われることがあります。

水性(水溶性基剤)を先に入れ、時間をあけてから油性を入れる

理由は、先に油性を入れてしまうと、あとから入れる水性坐剤の薬物が油性基剤(カカオ脂など)に取り込まれてしまうことがあるためです。順番に理由がある、という典型例です。

吸入剤:3種類、実質は2種類

吸入剤は3つに分かれます。

製剤 何で吸うか 代表例
吸入粉末剤 固形粒子のエアゾールとして自分で吸い込む イナビル、アドエア ディスカス
吸入液剤 ネブライザーで吸入する —
吸入エアゾール剤 噴霧剤の力で噴き出したものを吸う アドエア エアゾール

このうち吸入液剤はネブライザーで使うもので、薬局で指導する機会がほとんどありません。したがって国試で問われるのは、実質吸入粉末剤と吸入エアゾール剤の2つです。

吸入粉末剤:勢いよく吸う

自分の吸う力で粉を取り込む製剤なので、しっかり吸い込めるかどうかが効き目を左右します。

  1. 1回分をセットする
  2. 吸入前に息を吐く
  3. 勢いよく吸い込む
  4. 軽く息を止める

吸入エアゾール剤:よく振って、ゆっくり吸う

こちらは噴霧剤の力で薬が出てくるので、自分で強く吸う必要はありません。むしろゆっくり吸ったほうが、奥まで届いて沈着します。

  1. 容器をよく振る(中の溶液・懸濁液を均一にするため)
  2. 噴霧と合わせてゆっくりと吸い込む
  3. 息を止め、ゆっくり吐く

「よく振る」が必要なのは、中身が溶液や懸濁液だからです。チキソトロピーの点鼻薬と同じく、振ってから使う製剤には必ず理由があると考えてください。

両者に共通:ステロイドなら吸入後にうがい

粉末剤でもエアゾール剤でも、ステロイドの吸入薬は吸い終わったらうがいをする——これは共通の服薬指導です。口腔カンジダ症や嗄声を防ぐためで、国試でも実務でも頻出です。

2つの対比で覚える

吸入粉末剤 吸入エアゾール剤
薬を押し出す力 自分の吸気 噴霧剤
吸い方 勢いよく ゆっくり
使用前 1回分をセット 容器をよく振る
使用後 うがい(ステロイド) うがい(ステロイド)

「吸い方が逆」という一点だけ押さえておけば、あとは思い出せます。

まとめ

  • 口腔粘膜系(舌下錠・バッカル錠・ガム剤)は肝初回通過効果を回避。舌下錠=舌の裏・急速吸収・ニトログリセリン、バッカル錠=臼歯と頬の間
  • トローチ剤・付着錠は局所に適用する
  • 坐剤の長所は「消化管を通らない」ことから全部出てくる。肝初回通過効果の回避には深く入れすぎない(門脈に入ってしまう)
  • 坐剤の基剤はカカオ脂(融点30〜34℃、結晶多形あり)/ハードファット(放出性が安定)/マクロゴール(直腸分泌液で溶ける)/乳剤性o/w型(カカオ脂+レシチン1%+水20%)
  • 2種類使うときは水性が先、油性が後
  • 吸入剤は粉末剤・液剤・エアゾール剤。問われるのは粉末剤とエアゾール剤
  • 粉末剤は勢いよく吸う、エアゾール剤はよく振ってゆっくり吸う。ステロイドならどちらも吸入後にうがい

残るは無菌製剤です。滅菌法(最終滅菌法と無菌操作法・加熱/照射/ガス法)へ進んでください。ひとつ前の軟膏は軟膏剤の基剤と混合の可否、剤形全体の地図は剤形分類の全体像で確認できます。

薬剤を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、薬剤という科目のほんの一区画です。実際には、吸収から分布・代謝・排泄、そして製剤設計までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全33本・約11時間。「なぜこの薬がここで出てくるのか」「さっき覚えたあの話が、どこにつながるのか」が、バラバラの知識ではなく流れとして入ってきます。細切れに暗記してきたものが、1本の線になる感覚です。

薬剤のマインドマップPDF+解説授業セットは¥9,450。無料のサンプル動画とサンプルPDFがあるので、この「たどる」感覚が自分に合うかどうかは、先に確かめられます。

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