
錠剤系の添加剤に続いて、製剤全般で使う添加剤をまとめます。
ここで扱うものは、ほとんどが製剤の性質や剤形のところで一度出てきたものです。新しく覚え直すのではなく、「あれはここに分類されるのか」と回収していくつもりで読むと、負担がぐっと軽くなります。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。
Contents
保存剤:輸液には使わない
微生物による汚染・変質を防止するために入れます。そして最初に押さえるべき例外がこれです。
輸液には保存剤を使わない(大量投与になるため)
点眼剤で「単回使い切りには入れず、多回投与のものには入れる」という話がありましたが、同じ発想です。体に入る量が多くなるものには入れない。
| 分類 | 代表例 | 補足 |
|---|---|---|
| パラオキシ安息香酸エステル類 | メチル、エチル、プロピル、ブチル | 併用で効果アップ。だから処方に2種類入っている |
| 中性保存剤 | クロロブタノール、ベンジルアルコール | 局所麻酔作用もある |
| 逆性石けん | ベンザルコニウム塩化物、ベンゼトニウム塩化物 | 陽イオン性界面活性剤 |
| フェノール類 | クレゾール、フェノール | インスリンなど生物学的製剤に使われる |
回収ポイント
- パラオキシ安息香酸エステル類が2種類入っていたのは、吸水クリーム・親水クリームの処方でしたね。「併用で効果アップ」がその理由です
- クロロブタノールは眼軟膏の保存剤として出てきました
- ベンザルコニウム塩化物は界面活性剤の陽イオン性として登場しました。マイナスに帯電した細菌の細胞膜を壊すから消毒にも保存にも使える、という理屈もそこで扱っています
懸濁化剤:粘度アップとぬれアップ
懸濁剤でやったとおり、働き方は2通りです。
①増粘剤(粘度を上げる)
- アルギン酸Na
- カルボキシビニルポリマー
- アラビアゴム
- メチルセルロース
- カルメロースNa
- ポビドン
後半の3つ(メチルセルロース・カルメロースNa・ポビドン)は、結合剤としても出てきたものです。粘りけを出すという働きは共通なので、役割が2つあると考えれば覚える量は増えません。
さらに言えば、アルギン酸Na・メチルセルロース・カルメロースNaは非ニュートン流動の準粘性流動・擬塑性流動を示す高分子水溶液としても登場しました。粘度が上がるから、そこに出てきたわけです。3か所でつながっています。
②界面活性剤(ぬれを良くする)
- ポリソルベート80
固体粒子のぬれを良くしてダマになりにくくする働きです。界面の性質の接触角・ぬれの話が実務に出てきた形になります。
乳化剤
乳化には界面活性剤を使います。
- レシチン(両性界面活性剤。卵黄などに含まれる脂質)
- ポリソルベート
- モノステアリン酸グリセリン
レシチンは界面活性剤の両性の代表として、また坐剤の乳剤性基剤(カカオ脂+レシチン1%+水20%)としても出てきました。
どの乳化剤を選ぶかは、本来ならBancroftの経験則に沿ってHLBから決まります。
安定化剤
| 分類 | 代表例 |
|---|---|
| 抗酸化剤 | アスコルビン酸 |
| キレート剤 | EDTA |
シンプルなので、「抗酸化ならアスコルビン酸、キレートならEDTA」の2組で覚えてしまってください。EDTAは衛生でもよく出てきます。
pH調整剤:上げる側と下げる側
| 方向 | 代表例 |
|---|---|
| pHを下げる(酸) | 塩酸、クエン酸、ホウ酸(注射剤には×) |
| pHを上げる(アルカリ) | 水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム |
ホウ酸は注射剤に使えない——点眼剤でやったポイントがここにも出てきます。ホウ酸には毒性があり、全身循環に回る注射剤では使えない、という理屈でした。
等張化剤:濃度とセットで
| 等張化剤 | 等張になる濃度 |
|---|---|
| 塩化ナトリウム | 0.9% |
| ブドウ糖 | 5% |
| グリセリン | 2.6% |
| ホウ酸 | — |
等張化計算で使った数字がそのまま並びます。塩化ナトリウム0.9%とブドウ糖5%は確実に押さえてください。グリセリンの2.6%まで覚えられればなお良し、という優先順位です。
1枚で見渡す
| 添加剤 | 代表例 | どこで出てきたか |
|---|---|---|
| 保存剤 | パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンザルコニウム塩化物、フェノール | 軟膏の処方、眼軟膏、界面活性剤 |
| 懸濁化剤(増粘) | アルギン酸Na、カルメロースNa、メチルセルロース、ポビドン | 懸濁剤、結合剤、非ニュートン流動 |
| 懸濁化剤(ぬれ) | ポリソルベート80 | 界面の性質(ぬれ) |
| 乳化剤 | レシチン、ポリソルベート、モノステアリン酸グリセリン | 界面活性剤、坐剤の基剤、乳剤 |
| 安定化剤 | アスコルビン酸(抗酸化)、EDTA(キレート) | — |
| pH調整剤 | 塩酸・クエン酸・ホウ酸/水酸化Na・炭酸水素Na | 点眼剤・注射剤 |
| 等張化剤 | 塩化Na 0.9%、ブドウ糖5%、グリセリン2.6% | 等張化計算 |
右の列が空欄なのは安定化剤だけです。つまり、この単元で本当に新しく覚えるのはアスコルビン酸とEDTAくらい——そう捉えると気が楽になるはずです。
まとめ
- 保存剤は輸液には使わない(大量投与になるため)
- パラオキシ安息香酸エステル類は併用で効果アップ、クロロブタノール・ベンジルアルコールは局所麻酔作用もあり、フェノール類はインスリンなど生物学的製剤に
- 懸濁化剤は増粘剤(粘度↑)と界面活性剤(ぬれ↑)の2系統
- 乳化剤は界面活性剤。レシチン・ポリソルベート・モノステアリン酸グリセリン
- 安定化剤は抗酸化剤=アスコルビン酸、キレート剤=EDTA
- pH調整剤でホウ酸は注射剤に使えない
- 等張化剤は塩化ナトリウム0.9%、ブドウ糖5%、グリセリン2.6%
次は製剤化の機械に入ります。製剤化の機械①粉砕機と混合機へ進んでください。錠剤系の添加剤は錠剤の添加剤、剤形全体の地図は剤形分類の全体像で確認できます。
薬剤を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、薬剤という科目のほんの一区画です。実際には、吸収から分布・代謝・排泄、そして製剤設計までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全33本・約11時間。「なぜこの薬がここで出てくるのか」「さっき覚えたあの話が、どこにつながるのか」が、バラバラの知識ではなく流れとして入ってきます。細切れに暗記してきたものが、1本の線になる感覚です。
薬剤のマインドマップPDF+解説授業セットは¥9,450。無料のサンプル動画とサンプルPDFがあるので、この「たどる」感覚が自分に合うかどうかは、先に確かめられます。