
固形材料と半固形・液状材料が終わったら、「製剤の性質」の最後のかたまり、分散系材料に入ります。
分散系材料はこの順で進みます。
- 界面の性質 ← この記事
- 界面活性剤
- コロイド分散系
- 粗大分散系(懸濁剤・乳剤)
界面の性質は、このあとの3つすべての土台になります。ここを飛ばすと界面活性剤も乳剤も丸暗記になってしまうので、面倒でも先に押さえておいてください。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。
Contents
界面とは何か:表面との違い
界面の定義はこうです。
界面 = 異なる2つの相が接する境界面
ビーカーに水を入れ、その上に油を浮かべた状態を思い浮かべてください。ここには何種類もの界面があります。
| 界面の種類 | 製剤の例 |
|---|---|
| 液-液界面 | 乳剤 |
| 固-液界面 | 懸濁剤、水中の錠剤 |
| 気-液界面 | 泡沫剤、エアゾール |
| 固-気界面 | 粉末製剤 |
| 固-固界面 | — |
一方表面は、液体と気体の境界面(たとえば水面)のことです。つまり、
界面のほうが広い概念で、そのうちの1つが表面
という関係になります。国試では言葉を入れ替えて出てくるので、包含関係で覚えておいてください。
なぜ界面が特殊な場所なのか

製剤で界面を扱うのは、そこがエネルギー的に不安定な特殊な場所だからです。
水の中の分子を考えてみてください。内側にいる水分子は、まわりを同じ水分子に囲まれているので、分子間力で均等に引っ張られています。ところが表面にいる水分子は、上側に引っ張ってくれる仲間がいません。つまり引力が不均衡で、内側へ引き込まれる力だけが残ります。
この「内側に引っ張られる力」が表面張力・界面張力です。
そして不均衡なぶんエネルギー的に不安定なので、系は表面積を小さくしようとします。その結果、
- 液滴は球形になる(同じ体積で表面積が最小の形だから)
- 分散している粒子が沈降・凝集・合一を起こす
後半の乳剤の分離現象は、すべてこの「表面積を小さくしたい」という性質から出てくる話です。
界面張力・表面張力を数字で扱う
影響因子:極性と分子間力
極性・分子間力が大きいほど、表面張力・界面張力は大きい
内側へ引っ張る赤い矢印が強くなるのだから当然ですね。
たとえば水は水素結合を持つので、分子間力が非常に強い。一方オリーブオイルは水素結合を持たないので、極性も分子間力も小さい。したがってオリーブオイルの表面張力は水より小さい、と理屈で判断できます。
単位:N/m = J/m²

表面張力の単位は N/m、これは J/m² とも書けます。2つの書き方があるのが混乱のもとなので、それぞれ意味をイメージで掴んでおきましょう。
液体の表面を薄いゴム膜だと思ってください。
- N/m:そのゴム膜を1 m伸ばすのに必要な力
- J/m²:そのゴム膜を1 m²広げるのに必要な仕事(エネルギー)
単位計算でも一致します。J(仕事)= N × m なので、J/m² = N・m/m² = N/m。「力で見るか、仕事で見るか」の違いだけです。
測定法:毛管上昇法

測定法はいくつかありますが、国試でよく出るのは毛管上昇法です。
ビーカーの液面に細いガラス管(毛管)を垂直に差し込むと、中の液体がスーッと上がっていきます。この上がった高さが表面張力に比例することを利用して測定します。
ぬれ:接触角で固体と液体の相性を測る

ガラスやプラスチックのような固体の上に水を1滴たらすと、固体の面と液滴の縁がつくる角度ができます。これが接触角 θ です。
接触角は、固体と液体の相性を表しています。
- 相性がよい → 液が広がる → θが小さい
- 相性が悪い → 液が玉のまま → θが大きい
ぬれの3分類は角度とセットで
ぬれは3つに分類され、それぞれ成立する接触角の条件があります。この数字がそのまま問われます。
| 分類 | どんな現象か | 接触角の条件 |
|---|---|---|
| 付着ぬれ | 液体が固体表面に付着する | θ ≦ 180° |
| 浸漬ぬれ | 固体のすき間に液体が入り込む | θ ≦ 90°(固-液の親和性が高いと起きやすい) |
| 拡張ぬれ | 液体が固体表面に薄く広がる | θ = 0 |

浸漬ぬれは、毛管上昇法を横に倒したイメージです。固体と液体が仲よしなので、固体が液体を引っ張り込んでいく。だからすき間に入っていきます。

拡張ぬれは、固体の上に落とした液体がそのまま薄く広がっていく状態。θ = 0 という、最も相性がよいケースです。
条件がゆるい順に 付着ぬれ(180°以下) → 浸漬ぬれ(90°以下) → 拡張ぬれ(0°) と並んでいる、と理解しておくと取り違えません。
ちなみに、ぬれの良し悪しは製剤で実際に効いてきます。たとえば付着ぬれが悪いと、錠剤が消化管内で崩壊しにくくなる。だから「ぬれをよくする」ための添加剤が必要になる、という話につながります。
接触角の求め方:Washburn式

接触角を求める式としてWashburn式があります。
測定は、粉体を詰めた太めの管を液体に浸し、液体が吸い上がっていく高さと時間を測る、という方法です。得られたグラフの傾きから、粘度・管の太さ・表面張力が分かっていれば cos θ が逆算できます。
ただし式そのものは覚えなくて大丈夫です。国試対策としては、
接触角(ぬれ)を求める式 = Washburn式
ここだけ押さえてください。覚え方は「WASH = 洗う = 水っぽい = ぬれ」。名前と用途を結びつけておけば十分です。
吸着:Gibbsの吸着等温式

最後が吸着です。ここは次の界面活性剤の記事に直結するので、グラフを丸ごと覚えてしまってください。
実験の中身はこうです。ビーカーに水を入れ、そこに食塩・アルコール・界面活性剤をそれぞれ加えていき、濃度と表面張力の関係をグラフにします。点線が純水の表面張力です。
| 加えるもの | 表面張力の変化 | 吸着の種類 |
|---|---|---|
| 食塩 | 濃度とともに上がる | 負吸着 |
| アルコール | 徐々に下がる | 正吸着 |
| 界面活性剤 | 急激に下がり、ある濃度から一定になる | 正吸着 |
正吸着と負吸着の見分け方
考え方はシンプルで、「その物質が水を好きかどうか」だけです。
- アルコールや界面活性剤は水とあまり一緒にいたくないので、表面に逃げていく。表面に集まるのが正吸着。表面の水分子が押しのけられるので表面張力は下がる
- 食塩はイオンなので水と強く結びつき、内部に分散する。内部に集まるのが負吸着。水どうしの結びつきがむしろ強まるので表面張力は上がる
界面活性剤だけ途中でグラフが折れる理由
界面活性剤のグラフだけ、途中から水平になります。これは、
- 最初は界面活性剤が表面にどんどん並んでいく → 表面張力が急降下
- やがて表面がいっぱいになる
- 行き場を失った分子は、内部で集まってミセルを作り始める
- 表面の状態は変わらないので、表面張力はそれ以上下がらない
この折れ曲がる濃度が臨界ミセル濃度(cmc)です。次の記事の主役になるので、ここで「表面が飽和したからミセルを作る」という流れを掴んでおいてください。
まとめ
- 界面 = 異なる2相の境界面。そのうち液-気の境界が表面。界面のほうが広い概念
- 界面では分子の引力が不均衡 → 表面積を小さくしようとする → 液滴は球形、沈降・凝集・合一が起こる
- 表面張力は極性・分子間力が大きいほど大きい。単位は N/m = J/m²
- 測定法は毛管上昇法(上がった高さが表面張力に比例)
- ぬれの3分類は角度とセットで:付着ぬれθ≦180°、浸漬ぬれθ≦90°、拡張ぬれθ=0
- 接触角を求める式はWashburn式(式は覚えなくてよい、名前と用途だけ)
- 吸着は正吸着(表面に集まる/アルコール・界面活性剤/表面張力↓)と負吸着(内部に分散/食塩/表面張力↑)
- 界面活性剤のグラフが折れる点が臨界ミセル濃度(cmc)
次は界面活性剤です。界面活性剤(ミセル・CMC・クラフト点と曇点・HLB)へ進んでください。ひとつ前の単元は粘弾性モデルと局方の粘度測定法、全体像は製剤化のサイエンスとは?で確認できます。
薬剤を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、薬剤という科目のほんの一区画です。実際には、吸収から分布・代謝・排泄、そして製剤設計までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全33本・約11時間。「なぜこの薬がここで出てくるのか」「さっき覚えたあの話が、どこにつながるのか」が、バラバラの知識ではなく流れとして入ってきます。細切れに暗記してきたものが、1本の線になる感覚です。
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