
「1日1回まとめて投与する抗菌薬」と「1日3回に分けて投与する抗菌薬」——なぜ薬によって投与設計が違うのでしょうか。
その答えがPK/PD解析にあります。同じ1日量でも、入れ方によって効果が変わる。そしてどちらが有利かは、薬のタイプで決まります。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。
PKとPDをつなぐと何が見えるか

まず2つの言葉を整理します。
- PK(薬動学 / 薬物動態学) — 血中濃度と時間の関係。ここまで薬剤で延々とやってきた内容です
- PD(薬力学) — 濃度と薬理作用の関係。薬理で受容体と反応の話としてやった内容です
どちらにも濃度が入っていますね。ということは、2つをつなげば時間と薬理作用の関係が見えるはずです。これが薬動力学(PK/PD)の発想です。
この考え方が特にうまくはまったのが、抗菌薬でした。
押さえておきたい3つの用語
MIC(最小発育阻止濃度) — 細菌の発育を阻止できる最小の濃度。この線を超えているかどうかが効果の目安になります。
TAM(time above MIC) — 血中濃度がMICを上回っている時間。時間依存型の薬で重要な指標です。
PAE(post antibiotic effect、増殖抑制後効果) — 血中濃度がMICを下回ったあとも、しばらく増殖抑制効果が続く現象。PAEがある薬とない薬があります。
濃度依存型と時間依存型
ここが本題です。同じ1日量を「1回でドーンと入れる」のと「3回に分ける」のとで比べてみましょう。
1回でドーンと入れた場合 — 高い山が1つできます。ピーク濃度が高くなります。
3回に分けた場合 — 低い山が3つできます。ピークは低いですが、MICを上回っている時間を足し合わせると長くなります。
濃度依存型:ピークが効く
ピーク濃度(Cmax)が高いほど効くタイプです。1回でまとめて投与するほうが有利になります。
代表薬は、
- ニューキノロン系
- アミノグリコシド系
語呂は「新しいあみの密度」。「新しい」=ニューキノロン、「あみ」=アミノグリコシド、「密度」=濃度、と対応させます。
指標としてはCmax/MICやAUC/MICが使われます。
時間依存型:MIC超えの時間が効く

MICを上回っている時間(TAM)が長いほど効くタイプです。分割して投与するほうが有利になります。
代表薬は、
- バンコマイシン
- クラリスロマイシン
- テトラサイクリン系
- アジスロマイシン
語呂は「バクテリアが時間」。「バ」=バンコマイシン、「ク」=クラリスロマイシン、「テ」=テトラサイクリン、「ア」=アジスロマイシン、そして「時間」=時間依存型です。アジの開きの上でバクテリアが時間とともに繁殖していくイメージを持つと定着しやすくなります。
表で整理する
| 何が効くか | 投与設計 | 代表薬 | 語呂 | |
|---|---|---|---|---|
| 濃度依存型 | ピーク濃度 | 1回にまとめる | ニューキノロン系、アミノグリコシド系 | 新しいあみの密度 |
| 時間依存型 | MIC超えの時間 | 分割して投与 | バンコマイシン、クラリスロマイシン、テトラサイクリン系、アジスロマイシン | バクテリアが時間 |
TDMにつながる話
この分類は、次の単元のTDMで直接使います。
- 濃度依存型の薬(アミノグリコシド系など) → 効果を見るためにピーク値を測る
- 時間依存型の薬(バンコマイシンなど) → トラフ値やAUC/MICで管理する
「なぜこの薬はピークを測って、あの薬はトラフを測るのか」——その根拠がここにあります。TDMを丸暗記しようとすると苦しいので、PK/PDの分類とセットで覚えるのがおすすめです。
まとめ
- PK(濃度と時間) + PD(濃度と作用) = PK/PD(時間と作用)
- MIC = 最小発育阻止濃度、TAM = MICを上回る時間、PAE = 増殖抑制後効果
- 濃度依存型 — ピークが効く。1回にまとめる。ニューキノロン系・アミノグリコシド系。語呂「新しいあみの密度」
- 時間依存型 — MIC超えの時間が効く。分割投与。バンコマイシン・クラリスロマイシン・テトラサイクリン系・アジスロマイシン。語呂「バクテリアが時間」
- この分類がTDMでのピーク値・トラフ値の使い分けにつながる
次は影響因子です。モーメント解析法はモーメント解析法とMRT(平均滞留時間)の覚え方、この単元の地図は薬物動態解析の全体像と勉強の順番で確認できます。
薬剤を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、薬剤という科目のほんの一区画です。実際には、吸収から分布・代謝・排泄、そして製剤設計までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全33本・約11時間。「なぜこの薬がここで出てくるのか」「さっき覚えたあの話が、どこにつながるのか」が、バラバラの知識ではなく流れとして入ってきます。細切れに暗記してきたものが、1本の線になる感覚です。
薬剤のマインドマップPDF+解説授業セットは¥9,450。無料のサンプル動画とサンプルPDFがあるので、この「たどる」感覚が自分に合うかどうかは、先に確かめられます。