
前の記事で、肝クリアランスの一般式が出ました。
CLh = Qh・CLint・fu / (Qh + CLint・fu)
このまま計算問題を解くのは面倒です。ですが分母の足し算に注目すると、式が劇的に単純になる場合があります。極端な薬を考えてみましょう。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。
肝血流量依存性薬物(Qh ≪ CLint・fu)

肝細胞の処理能力(CLint・fu)が非常に高く、血流で運ばれてきた薬をほぼ全部処理してしまう薬を考えます。
分母 Qh + CLint・fu のうち、Qhが相対的に小さいので無視できます。100 + 1 ≈ 100 という感覚です。
CLh ≈ Qh・CLint・fu / (CLint・fu)
分子と分母の CLint・fu が約分できて、
CLh ≈ Qh
つまり肝クリアランスは肝血流量そのものになります。処理能力はあり余っているので、どれだけ運ばれてくるかだけで決まるわけです。
代表薬
- ニトログリセリン
- ニカルジピン
- プロプラノロール
- リドカイン
この4つは覚えておいてください。肝抽出率EHが高い(1に近い)薬とも言い換えられます。
肝固有クリアランス依存性薬物(CLint・fu ≪ Qh)

今度は逆に、血液はたっぷり流れてくるが、処理能力が追いつかない薬です。
分母のうち CLint・fu が無視できるので、
CLh ≈ Qh・CLint・fu / Qh
Qhが約分できて、
CLh ≈ CLint・fu
肝クリアランスは肝細胞の処理能力と遊離型分率だけで決まることになります。血流量をいくら増やしても変わりません。
さらに2つに分かれる
こちらのグループは、CLintとfuのどちらの影響が大きいかでさらに分かれます。
fu(遊離型分率)の影響が大きい薬 — ワルファリン、フェニトイン
なぜ影響が大きいのか。これらの薬はタンパク結合率が非常に高く、fuがもともと1%程度しかありません。ここで相互作用によりfuが2%になったとすると、遊離型が2倍になります。CLhも2倍になり、血中濃度が大きく変動してしまう。だから臨床的に重要なのです。
CLint(固有クリアランス)の影響が大きい薬 — テオフィリン
テオフィリンはfuが50%程度あります。ここが51%になっても大きな変化にはなりません。一方、CYP1A2が阻害されてCLintが下がると、クリアランスは大きく落ちて血中濃度が跳ね上がります。
同じ「肝固有クリアランス依存性」でも、注意すべき方向が違うわけです。
表で整理する
| 条件 | CLh | 代表薬 | |
|---|---|---|---|
| 肝血流量依存性 | Qh ≪ CLint・fu | CLh ≈ Qh | ニトログリセリン、ニカルジピン、プロプラノロール、リドカイン |
| 肝固有クリアランス依存性 | CLint・fu ≪ Qh | CLh ≈ CLint・fu | fu影響大:ワルファリン、フェニトイン / CLint影響大:テオフィリン |
臨床的な意味
この分類が分かると、次のような予測ができるようになります。
- 心不全で肝血流量が落ちた → 肝血流量依存性薬物のクリアランスが下がる。リドカインなどは要注意
- CYPが阻害された → CLint依存性の薬(テオフィリンなど)のクリアランスが下がる
- 低アルブミン血症でfuが上がった → fu影響大の薬(ワルファリン、フェニトイン)が変動する
「どのパラメータが変わったら、どの薬が影響を受けるか」——国試ではこの形で問われます。分類と代表薬をセットで押さえておいてください。
まとめ
- 一般式 CLh = Qh・CLint・fu / (Qh + CLint・fu) の分母の大小で2つに分かれる
- 肝血流量依存性(Qh ≪ CLint・fu) → CLh ≈ Qh。ニトログリセリン、ニカルジピン、プロプラノロール、リドカイン
- 肝固有クリアランス依存性(CLint・fu ≪ Qh) → CLh ≈ CLint・fu
- fu影響大:ワルファリン、フェニトイン(もともとfuが1%程度と低いため、変動の影響が大きい)
- CLint影響大:テオフィリン(fuが50%程度あるため、fuの変動より酵素活性の影響が効く)
次は、この分類がAUCにどう効いてくるかを見ます。肝クリアランスとAUCの関係へ進んでください。
導出そのものは肝クリアランスの導出、影響因子(疾患による変化)は影響因子の記事で扱います。
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