
ここは1-コンパートメントモデルと並ぶ、薬剤の計算の2大パートのもう一方です。
やっていることは単純で、肝クリアランスを2つの視点から式にして、それをイコールで結ぶだけです。片方は肝臓の外から、もう片方は肝細胞の中から見た式になります。
過去問の正答率が低い範囲ですが、それは「計算の一番最後に出てくるので、そこまでの内容が分かっていないと手が付かない」という理由が大きいところです。ここまで積み上げてきた人にとってはボーナス問題になります。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。
この単元の位置づけ
1-コンパートメントモデルでは、消失を全部ひとまとめの「CLtot」として扱っていました。
生理学的モデルでは、その出口の中身をもう一段詳しく見に行きます。腎排泄の記事で腎クリアランスを糸球体濾過・尿細管分泌・尿細管再吸収に分けて考えましたが、あれの肝臓版だと思ってください。
① 血流側から見た肝クリアランス
まず、肝臓の外から眺めます。これはクリアランスの定義式と全身・腎・肝クリアランスの関係で扱った内容の復習です。
- 肝臓に入ってくる薬の量 = Qh × CA
- 肝臓から出ていく薬の量 = Qh × CV
- 差し引き処理された量 = Qh(CA − CV)
定義式 CLh × CA = Qh(CA − CV) から、
CLh = Qh × EH(EH = (CA − CV)/CA、肝抽出率)
これが血流側から見た式です。「どれだけの血液が流れ込み、そのうち何割が抜き取られたか」を見ています。
② 肝細胞側から見た肝クリアランス

今度は肝細胞の内側に入ります。薬が肝細胞に取り込まれるまでを追いましょう。
- 動脈血の濃度CAで肝臓に入った薬は、肝臓の中ではCVという濃度になっている
- そのうち遊離型(非結合型)だけが細胞膜を通過できる。遊離型分率をfuとすると、細胞膜を通れるのは fu × CV
- 肝細胞内の濃度CTは、この fu × CV と等しくなる
3番目には前提があります。well-stirredモデル(よく撹拌されたモデル)——肝臓の中は瞬時によく混ざり、分配がすぐ平衡に達する、という仮定です。国試ではこの前提を明示的に問われることもあるので、名前を覚えておいてください。
肝細胞の処理能力を固有クリアランス(CLint)と呼びます。消失速度は、
消失速度 = CLint × CT = CLint × fu × CV
一方、血流側の定義式では 消失速度 = CLh × CA でした。
③ 2つをつなぐ

同じ「消失速度」を2通りで表したので、イコールで結べます。
CLh × CA = CLint × fu × CV
ここで、EHの定義から CV/CA = 1 − EH が言えます。これを使ってEHについて整理すると、
EH = CLint・fu / (Qh + CLint・fu)
これを CLh = Qh × EH に戻すと、目的の式が出てきます。
CLh = Qh × CLint・fu / (Qh + CLint・fu)
これが肝クリアランスの一般式です。導出の計算自体は難しいものではないので、一度は自分の手で追ってみてください。
この式が言っていること
分母に足し算が入っているのがポイントです。
Qh(肝血流量) と CLint・fu(肝細胞の処理能力)、この2つが並んでいます。つまり肝クリアランスは、
- どれだけ血液が運ばれてくるか(Qh)
- 運ばれてきた薬をどれだけ処理できるか(CLint・fu)
の両方に制限される、ということです。どちらか一方が極端に小さければ、そちらが全体のスピードを決める——律速の考え方ですね。
この「どちらが律速か」で薬を分類したのが、次の記事の内容になります。
まとめ
- 生理学的モデルは、1-コンパートメントモデルの出口の中身を詳しく見るもの
- 血流側から見た式:CLh = Qh × EH
- 肝細胞側から見た式:消失速度 = CLint × fu × CV(前提はwell-stirredモデル)
- 2つをイコールで結ぶと CLh = Qh・CLint・fu / (Qh + CLint・fu)
- 分母の足し算が示すのは、肝クリアランスは血流量と処理能力の両方に制限されるということ
次は、この式の分母のどちらが大きいかで薬を分類します。肝血流量依存性薬物と肝固有クリアランス依存性薬物へ進んでください。
クリアランスの定義式はクリアランスの定義式と全身・腎・肝クリアランスの関係、腎クリアランスの分解は腎排泄の仕組みと腎クリアランスの指標で扱っています。
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