薬物動態の解析

クリアランスの定義式|全身・腎・肝クリアランスの関係とCLtot = Vd・ke【薬剤師国家試験】

クリアランスのマインドマップ
クリアランスのマインドマップ

クリアランスは、薬物動態の中でもとっつきの悪いパラメータです。

「単位時間あたりに薬物が完全に除去される血液の容積」——教科書の定義を読んでも、正直ピンとこない人が多いと思います。粒が10個あって、8個になって、この部分がきれいになって……という図を見ても、結局何を表しているのか分からない。

分からなくなったら定義式に戻る。これがクリアランスと付き合うコツです。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。

定義式:消失速度 = CL × Cp

クリアランスの定義式
クリアランスの定義式

クリアランスの定義式はこれです。

消失速度 [g/h] = CL [L/h] × Cp [g/L]

単位に注目してください。左辺はg/h、つまり「1時間あたり何グラム消えるか」です。薬の量(グラム)で考えているのがポイントです。

ここで、前の記事で扱った消失速度定数keの式と見比べてみましょう。

  • −dC/dt = ke・C … 濃度(g/L)の変化を見ている
  • 消失速度 = CL・Cp … 量(g)の変化を見ている

式の形はそっくりですが、片方は濃度、もう片方は量を扱っています。この違いを意識しておくと、後で出てくるCLとkeの関係式がすっと入ってきます。

組織クリアランスと肝抽出率EH

肝クリアランスと肝抽出率
肝クリアランスと肝抽出率

クリアランスの実感をつかむために、肝臓での出来事を追ってみましょう。

肝臓に入ってくる血液(動脈側)の薬物濃度をCA、出ていく血液(静脈側)の濃度をCVとします。肝血流量をQhとすると、

  • 肝臓に入ってくる薬の量 = Qh × CA
  • 肝臓から出ていく薬の量 = Qh × CV

差し引きで、肝臓が処理した量は Qh(CA − CV) です。これが肝臓での消失速度ですから、定義式と突き合わせると、

CLh × CA = Qh(CA − CV)

両辺をCAで割ると、

CLh = Qh × (CA − CV)/CA

この (CA − CV)/CA の部分を肝抽出率EHと呼びます。「肝臓を1回通過する間に、何割が抜き取られたか」を表す割合です。したがって、

CLh = Qh × EH

ここまで来ると、クリアランスが「血液がきれいになる度合い」を表しているという感覚がつかめてくると思います。

全身クリアランスCLtotの分解

全身クリアランス
全身クリアランス

排出経路ごとのクリアランスを全部足したものが、全身クリアランス(CLtot)です。

国試で扱う経路は基本的に肝臓と腎臓の2つなので、

CLtot = CLh + CLr

と考えておけば足ります。

測れるのは腎クリアランスと全身クリアランス

実務的に直接測定できるのは、尿を集めて分かる腎クリアランスと、血漿を測って求める全身クリアランスです。肝クリアランスは、全身から腎を引いた「残りかす」として求めます。

尿中未変化体排泄率Ae
尿中未変化体排泄率Ae

そこで出てくるのが尿中未変化体排泄率Aeです。静脈内投与した量のうち、どれだけが未変化体のまま尿に出たかの割合を表します。

Ae = 尿中未変化体排泄量 / Div

Aeを使った腎クリアランスの算出
Aeを使った腎クリアランスの算出

このAeが分かれば、腎クリアランスは次のように出せます。

CLr = Ae × CLtot

そして肝クリアランスは引き算です。

CLh = CLtot − CLr

国試の計算問題では、問題文に与えられた値からパラメータを1つずつ埋めていくという作業が必要になります。「Aeが与えられている → CLrが出せる → CLhも出せる」という流れを手順として持っておいてください。

CLtot = Vd × ke

CLtotとVd・keの関係
CLtotとVd・keの関係

最後に、クリアランスと他のパラメータの関係です。

CLtot = Vd × ke

この式は丸暗記でも構いませんが、成り立ちを知っておくと忘れません。

体内の薬物量Xは「濃度 × 分布容積」ですから、X = Vd・C です。定義式の左辺(量の変化)を書き直すと、

−dX/dt = CLtot・C −Vd・(dC/dt) = CLtot・C

一方、keの式は −dC/dt = ke・C でした。これを上の式に代入すると、

Vd・ke・C = CLtot・C

両辺のCが約分できて、CLtot = Vd × ke が出てきます。

「濃度で考えていた式に、分布容積Vdを掛けると量の式になる」——この対応関係さえ押さえておけば、式がうろ覚えでもその場で作り直せます。

まとめ

  • 定義式は消失速度 = CL × Cp。分からなくなったらここに戻る
  • keの式は濃度、CLの式は量を扱っている。形が似ているのはそのため
  • CLh = Qh × EH。EH(肝抽出率)= (CA − CV)/CA は「1回通過で何割抜けたか」
  • CLtot = CLh + CLr。測れるのはCLrとCLtotで、CLhは引き算で求める
  • CLr = Ae × CLtot(Ae = 尿中未変化体排泄率)
  • CLtot = Vd × ke。濃度の式にVdを掛けると量の式になる、という対応から導ける

次は、クリアランスと切っても切れない関係にあるAUCに進みます。AUCとクリアランスの関係へ進んでください。

血中濃度の式と半減期は血中濃度の式の導出と半減期の求め方、分布容積Vdは1-コンパートメントモデルの考え方と分布容積Vdで扱っています。肝クリアランスをさらに掘り下げた内容は生理学的モデルの記事で扱います。

薬剤を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、薬剤という科目のほんの一区画です。実際には、吸収から分布・代謝・排泄、そして製剤設計までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全33本・約11時間。「なぜこの薬がここで出てくるのか」「さっき覚えたあの話が、どこにつながるのか」が、バラバラの知識ではなく流れとして入ってきます。細切れに暗記してきたものが、1本の線になる感覚です。

薬剤のマインドマップPDF+解説授業セットは¥9,450。無料のサンプル動画とサンプルPDFがあるので、この「たどる」感覚が自分に合うかどうかは、先に確かめられます。

-薬物動態の解析

© 2026 マインドマップ薬学 Powered by AFFINGER5