薬物動態の解析

蓄積率Rの考え方とCss,max・Css,minの求め方|等比数列で導く【薬剤師国家試験】

蓄積率Rのマインドマップ
蓄積率Rのマインドマップ

繰り返し投与で「平均するといくつか」は前の記事で出ました。ではピークと谷の具体的な値はどう出すのか——そこで使うのが蓄積率Rです。

ここは式の見た目がやや物々しいのですが、やっていることは高校数学の等比数列の和です。動画でも「一回これをやっておくと、もう2回はやらないから」と言っている通り、一度だけ手を動かして納得しておけば十分な範囲です。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。

蓄積率Rとは何か

蓄積率の考え方
蓄積率の考え方

1回目を投与すると、濃度はC₀まで上がります。そこから下がっていきますが、ゼロになる前に2回目が入ります。だから2回目のピークは1回目より高くなる。

この「1回目のピークに対して、最終的にピークはその何倍になるか」を表すのが蓄積率Rです。

Css,max = R × C₀

Rが分かれば、ピークの濃度が出せるということです。

濃度を1回ずつ書き出してみる

Rを導くために、投与ごとの濃度を順に書き出してみます。1回の投与間隔τの間に濃度は e^(−ke・τ) 倍に減る、というのがポイントです。

  • 1回目の直後 … C₀
  • τ経過後 … C₀・e^(−ke・τ)
  • 2回目の直後 … C₀ + C₀・e^(−ke・τ) = C₀(1 + e^(−ke・τ))
  • さらにτ経過後 … C₀(1 + e(−ke・τ))・e(−ke・τ)
  • 3回目の直後 … C₀(1 + e^(−ke・τ) + e^(−2ke・τ))

規則性が見えてきましたね。n回目の直後は、

C₀(1 + e^(−ke・τ) + e^(−2ke・τ) + … + e^(−(n−1)ke・τ))

括弧の中は、初項1・公比 e^(−ke・τ) の等比数列の和です。

等比数列の和からRを導く

蓄積率Rの式
蓄積率Rの式

等比数列の和の公式に当てはめると、n回目直後の濃度は

Cn = C₀ × (1 − e^(−n・ke・τ)) / (1 − e^(−ke・τ))

ここで、定常状態はnを無限大にしたときです。e^(−n・ke・τ) はnを大きくすると0に近づくので、分子は1になります。

R = 1 / (1 − e^(−ke・τ))

これが蓄積率です。そして、

Css,max = R × C₀ Css,min = Css,max × e^(−ke・τ)

Css,minは、ピークからτだけ時間が経った値なので、e^(−ke・τ) を掛けるだけです。

半減期との関係で考えると一気に楽になる

投与間隔を半減期の倍数で表す
投与間隔を半減期の倍数で表す

指数のままだと計算しにくいので、投与間隔τが半減期の何倍かで考えてみます。τ = n × t₁/₂ と置きます。

半減期の定義から t₁/₂ = ln2 / ke でしたから、ke・τ = ke × n × (ln2/ke) = n・ln2 となり、keが約分されて消えます。ここがこの変形のミソです。

e^(−n・ln2) = (1/2)^n となるので、

R = 1 / (1 − (1/2)^n)

指数関数が消えて、ただの分数になりました。

国試で出るのはこのパターン

国試では、τ = t₁/₂(つまり n = 1)のケースがよく出ます。この場合、

R = 1 / (1 − 1/2) = 2

きれいに2になります。したがって、

  • Css,max = 2 × C₀
  • Css,min = Css,max × 1/2 = C₀

「投与間隔が半減期と同じなら、ピークは初回の2倍、谷は初回と同じ」——この結論だけでも覚えておくと、かなりの問題が処理できます。

繰り返し投与の負荷量

繰り返し投与での負荷量(τ = t1/2、R = 2 の例)
繰り返し投与での負荷量(τ = t1/2、R = 2 の例)

点滴静注のときと同じで、じわじわ上がるのを待たずに一気に定常状態へ持っていきたい場合があります。

繰り返し投与の場合、目標はCss,maxです。初回だけ R倍の量を投与すれば、いきなりCss,maxに到達します。

τ = t₁/₂ のケースならR = 2ですから、初回だけ2倍量を投与するということになります。その後は通常量を半減期ごとに投与すれば、Css,maxとCss,minの間を行ったり来たりする定常状態が最初から維持されます。

まとめ

  • 蓄積率R = 「最終的なピークは1回目のピークの何倍か」
  • 導出は等比数列の和。公比は e^(−ke・τ)
  • R = 1 / (1 − e^(−ke・τ))
  • 投与間隔を半減期のn倍(τ = n・t₁/₂)と置くとkeが消えて、R = 1 / (1 − (1/2)ⁿ)
  • τ = t₁/₂ なら R = 2。Css,max = 2C₀、Css,min = C₀
  • 負荷量はR倍量を初回に投与する

これで点滴静注・繰り返し投与は終わりです。次は経口投与のグラフの読み取りに進みます。

繰り返し投与の平均血中濃度は繰り返し投与の平均血中濃度、点滴静注は点滴静注の定常状態血中濃度(Css)、半減期は血中濃度の式の導出と半減期の求め方で扱っています。この単元の地図は薬物動態解析の全体像と勉強の順番で確認できます。

薬剤を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、薬剤という科目のほんの一区画です。実際には、吸収から分布・代謝・排泄、そして製剤設計までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全33本・約11時間。「なぜこの薬がここで出てくるのか」「さっき覚えたあの話が、どこにつながるのか」が、バラバラの知識ではなく流れとして入ってきます。細切れに暗記してきたものが、1本の線になる感覚です。

薬剤のマインドマップPDF+解説授業セットは¥9,450。無料のサンプル動画とサンプルPDFがあるので、この「たどる」感覚が自分に合うかどうかは、先に確かめられます。

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