
同じ薬を同じ量だけ投与しても、新生児と高齢者では血中濃度がまったく違います。
この単元は暗記項目が多く見えますが、「アルブミンが減ると遊離型が増える」といった因果の連鎖を追えば、ほとんど導けます。丸暗記に走らず、つながりで押さえていきましょう。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。
Contents
新生児:肝機能が未発達
新生児で押さえるべきは肝機能の未発達、これ一点です。ここからすべてが導けます。
肝機能が未発達 → アルブミンの産生が追いつかない → 血漿タンパクが少ない → 遊離型分率(fu)が上がる
そして遊離型が増えると、分布容積Vdも上がります。理由を式で確認しましょう。
Vdは、血漿の容積(Vp)と組織の容積(Vt)から次のように表されます。
Vd = Vp + Vt × (fu / fut)
血漿の容積Vpは決まっていますが、組織側には入る余地があります。そこに fu(血漿中の遊離型分率)/ fut(組織中の遊離型分率) という係数が掛かっている。fuが上がれば、この項が大きくなる → Vdが上がる、という仕組みです。
新生児で覚えることは3つだけです。
- アルブミンが少ない
- 遊離型分率(fu)が高い
- だからVdが上がる
小児・幼児:代謝酵素の活性が高い
意外に思われるかもしれませんが、小児・幼児では体重あたりで見た肝代謝酵素の活性が、大人より高いことがあります。
そのまま問われることがあるので、この事実だけ覚えておいてください。「子どもだから未熟=すべて低い」という思い込みへの引っかけとして出題されます。
高齢者:生理機能が全般に低下
高齢者は、大雑把に言えば血中濃度が上がる傾向にあります。ただ、変化の中身は複数あるので整理しておきましょう。
胃酸分泌の低下
胃酸分泌↓ → 胃内pH↑ → H⁺が減る → 塩基性薬物の分子形が増える → 塩基性薬物の吸収が上がる
これはpH分配仮説とヘンダーソン・ハッセルバルヒ式で学んだ通りの話です。pHが上がると塩基性薬物の分子形分率が増え、膜を通りやすくなります。
体液量の減少
細胞内液・細胞外液・総体液量が減ります。液量が減れば、同じ量を投与しても濃度が上がります。水溶性薬物のVdは下がる方向に働きます。
アルブミンの低下
肝機能の低下に伴い、アルブミンなどの血漿タンパクが減ります。fuが上がる——新生児と同じ連鎖ですね。
糸球体濾過率(GFR)の低下
腎機能が落ちるので、排泄されにくくなり、薬物濃度が上がりやすくなります。
腎排泄型の薬では特に注意が必要です。
妊婦・授乳期:体液量とGFRが増える
妊婦では、まず循環血液量・体内水分量が大きく増えます。
体液量↑ → アルブミンが希釈される → アルブミン濃度↓ → 遊離型分率(fu)が上がる
肝臓がアルブミンを作り足そうとしても、増えた水分量には追いつきません。結果としてfuが上がります。
そしてもう一つ、糸球体濾過率(GFR)が上がります。
理由はイメージで押さえられます。妊婦は自分と赤ちゃん、2人分の老廃物を処理する必要があるので、腎臓の血管が拡張して処理能力が上がるのです。
GFR↑ → 腎排泄型薬物がどんどん排泄される → 血中濃度が低くなる
高齢者とは逆方向の変化である点に注意してください。
表で整理する
| 主な変化 | fu | その他 | |
|---|---|---|---|
| 新生児 | 肝機能が未発達、アルブミン少 | ↑ | Vd↑ |
| 小児・幼児 | 体重あたりの代謝酵素活性が大人より高いことがある | — | — |
| 高齢者 | 生理機能が全般に低下 | ↑ | 胃内pH↑(塩基性薬の吸収↑)、体液量↓、GFR↓ |
| 妊婦・授乳期 | 体液量が大幅に増加 | ↑ | GFR↑(腎排泄型は濃度↓) |
fuはどのケースでも上がるという共通点があります。理由は違えど(産生が追いつかない/肝機能低下/希釈)、結果は同じです。ここを軸にすると整理しやすくなります。
まとめ
- 新生児 — 肝機能未発達 → アルブミン少 → fu↑ → Vd↑
- 小児・幼児 — 体重あたりの代謝酵素活性が大人より高いことがある
- 高齢者 — 胃酸分泌↓(塩基性薬の吸収↑)、体液量↓、アルブミン↓(fu↑)、GFR↓。全体として血中濃度は上がりやすい
- 妊婦・授乳期 — 体液量↑でアルブミンが希釈されfu↑。GFR↑で腎排泄型は濃度が下がる
- どのケースもfuが上がるのが共通点
次は疾患による変化です。疾患による薬物動態の変化へ進んでください。
分布容積Vdは1-コンパートメントモデルの考え方と分布容積Vd、pH分配仮説はpH分配仮説とヘンダーソン・ハッセルバルヒ式、タンパク結合は薬物のタンパク結合の基礎で扱っています。
薬剤を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、薬剤という科目のほんの一区画です。実際には、吸収から分布・代謝・排泄、そして製剤設計までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
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