
ここまでのモデルには、共通する前提がありました。片対数グラフにすると直線になるという前提です。これを線形コンパートメントモデルと呼びます。
ところが、投与量を増やしていくとこの直線が崩れる薬があります。原因は酵素やトランスポーターの飽和です。そこで登場するのがミカエリス・メンテン式になります。
生体膜透過の担体介在輸送でも同じ式が出てきましたね。やっていることは同じです。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。
Contents
ミカエリス・メンテン式

式はこの形です。
v = Vmax・C / (Km + C)
記号の意味を押さえましょう。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| v | 反応速度(消失速度) |
| Vmax | 最大速度(飽和したときの上限) |
| Km | ミカエリス定数 |
| C | 薬物濃度 |
VmaxとKmは定数、Cが変数です。ここを意識しながら式を眺めてください。
Kmは「濃度」である
Kmという名前だけ見ると何かの係数のように思えますが、Kmは濃度の単位を持ちます。
具体的には、反応速度がVmaxのちょうど半分になるときの濃度です。
式に C = Km を代入してみると確かめられます。
v = Vmax・Km / (Km + Km) = Vmax・Km / 2Km = Vmax / 2
「Kmは速度が半分になる濃度」——この一文を覚えておけば、Kmが大きい小さいという議論についていけます。
濃度が低いときと高いとき
この式の便利なところは、両極端で単純な形になることです。
濃度が低いとき(C ≪ Km)
分母の Km + C は、Cが小さいのでほぼKmと見なせます。100 + 0.1 ≈ 100 という感覚です。
v ≈ Vmax・C / Km
VmaxもKmも定数ですから、まとめて定数aと置けば
v = a・C
中学校で習った y = ax の形、つまりただの直線です。線形コンパートメントモデルが成り立つのは、この領域だからです。
濃度が高いとき(C ≫ Km)
今度は分母のKmが無視できます。
v ≈ Vmax・C / C = Vmax
Cが約分されて消え、速度は一定値Vmaxになります。いくら濃度を上げても、それ以上速くならない。これが飽和です。
グラフでは
低濃度では直線、濃度が上がるにつれてカーブし、最終的にVmaxに漸近する——これがミカエリス・メンテン型のグラフです。
目安としては、Vmaxの半分になるあたり(C = Km)までは「Cが小さい」と思って直線扱いしてよい、と押さえておくと実戦的です。
代表的な薬:フェニトイン
非線形の挙動を示す代表薬がフェニトインです。
治療域の濃度ですでに代謝酵素が飽和し始めるため、投与量を少し増やしただけで血中濃度が跳ね上がります。TDMの対象薬になっているのは、この非線形性が理由のひとつです。
「フェニトイン = 非線形、ミカエリス・メンテン式に従う」——国試でそのまま問われる知識です。
生体膜透過とのつながり
冒頭で触れた通り、この式は担体介在輸送のところでも出てきました。
- 担体介在輸送 — 担体(トランスポーター)の数に限りがあるから飽和する
- 非線形コンパートメントモデル — 代謝酵素やトランスポーターの数に限りがあるから飽和する
「数に限りがあるものを使うと飽和する」という同じ原理が、場所を変えて出てきているだけです。担体介在輸送側の説明は担体介在輸送(能動輸送・促進拡散)の違いと分類をご覧ください。
まとめ
- 線形モデルは「片対数グラフが直線」が前提。飽和すると崩れる
- v = Vmax・C / (Km + C)。VmaxとKmは定数、Cが変数
- Kmは濃度。速度がVmaxの半分になるときの濃度
- C ≪ Km なら v = a・C(直線)、C ≫ Km なら v = Vmax(一定)
- 代表薬はフェニトイン
- 担体介在輸送と同じ「数に限りがあるものは飽和する」という原理
次は、この式を直線に変換して扱うラインウィーバー・バークプロットです。ラインウィーバー・バークプロットと競合阻害・非競合阻害へ進んでください。
この単元の地図は薬物動態解析の全体像と勉強の順番で確認できます。
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