
薬剤という科目で、多くの人が身構えるのがこの薬物動態解析です。計算がまとまって出てくるのは国試の全範囲でもここだけなので、苦手意識を持ってしまうのも無理はありません。
ただ、膨大に見えるこの範囲も、実際に手を動かして計算するのは2箇所だけです。残りはグラフの読み取りと暗記で処理できます。どこに力を入れてどこを流すのか、その地図を先に持ってしまいましょう。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。
Contents
薬物動態解析は大きく2つに分かれる
まず一番上の分岐です。薬物動態解析は次の2つに分かれます。
- 薬物速度論 — バリバリの計算パート
- TDM(治療薬物モニタリング) — ほぼ暗記パート
TDMは「この薬は何に注意するのか」を薬ごとに覚えていく範囲です。ただ、何を覚えればいいのかは薬物速度論をやると見えてきます。「この薬は肝血流量依存性だから」「半減期が長いからトラフ値でいい」といった判断が、速度論の理解の上に乗っているからです。
ですから順番としては、計算の薬物速度論を先にしっかりやるのが正解になります。
薬物速度論の中身

薬物速度論はさらに4つに分かれます。
1-コンパートメントモデル(薬物動態の基本)
体を1つのビーカーだと考えるモデルです。ここが計算の中心になります。
- 考え方と基本パラメータ(分布容積Vd、消失速度定数ke、半減期、クリアランス、AUC、バイオアベイラビリティ)
- 点滴静注・繰り返し投与
- 経口投与式
計算問題は基本的にこの中から出ます。
2-コンパートメントモデル・非線形コンパートメントモデル
2-コンパートメントモデルは、体を「中心のビーカー」と「末梢のビーカー」の2つで考えるモデルです。計算が複雑になりすぎるため計算問題としてはほとんど出ません。問われるのはグラフの読み取りのほうです。
非線形コンパートメントモデルは、酵素が飽和したときなどにグラフがどう変わるかを扱います。ミカエリス・メンテン式が出てくるので、ここは少し計算が入ります。
生理学的モデル
1-コンパートメントモデルでは、消失を全部ひとまとめに扱っていました。それを「肝臓ではどうなっているのか」「腎臓ではどうなっているのか」と、もう一段踏み込んで考えるのが生理学的モデルです。
組織クリアランスと固有クリアランスがここに入ります。1-コンパートメントモデルと並ぶ、計算の2大パートのもう一方です。
モデル非依存型・薬動力学
モデル非依存型はモーメント解析法のことで、確率論・統計論的に薬物動態を扱う手法です。国試では用語と定義を押さえておけば足ります。
薬動力学(PK/PD)は、抗菌薬の濃度依存型・時間依存型の話です。こちらも暗記中心になります。
計算のメインは2箇所だけ
改めて強調しておきたいのがここです。薬剤の計算問題は、次の2つからほぼ出ます。
- 1-コンパートメントモデルの基本パラメータ
- 組織クリアランスと固有クリアランス(生理学的モデル)
動画の中でも「薬剤の薬物動態の計算みたいなところは、ここからほぼ出ます。9割ぐらいかな」と話しています。
裏を返せば、それ以外の部分はグラフの挙動を理解するか、用語を覚えるかで対応できるということです。全部を同じ熱量でやろうとすると必ず息切れするので、力の入れどころを間違えないようにしてください。
おすすめの勉強の順番
上の構造を踏まえると、次の順番が効率的です。
- 1-コンパートメントモデルの考え方と基本パラメータ — 体を1つのビーカーと考えるところから、Vd・ke・半減期・クリアランス・AUC・バイオアベイラビリティまで
- 点滴静注・繰り返し投与 — 定常状態の考え方
- 経口投与式とグラフの読み取り — 残差法、2-コンパートメント、非線形
- 生理学的モデル — 肝クリアランスの導出と薬の分類
- モーメント解析法・PK/PD — 用語と定義の暗記
- 影響因子 — 小児・高齢者・妊婦・疾患ごとの変化
- TDM — 対象薬と投与設計
1と4が計算の山です。ここさえ越えれば、あとは分野別の問題集を1〜2回解いて「こう使うのか」を確かめれば形になります。
まとめ
- 薬物動態解析は薬物速度論(計算)とTDM(暗記)に分かれる。先にやるのは薬物速度論
- 薬物速度論は1-コンパートメントモデル・2-コンパートメント/非線形・生理学的モデル・モデル非依存型/薬動力学の4つ
- 手を動かして計算するのは1-コンパートメントモデルの基本パラメータと組織クリアランスと固有クリアランスの2箇所でほぼ全部
- それ以外はグラフの読み取りと暗記で処理できる
薬が体に入ってから出ていくまでの全体像は薬物動態(ADME)まとめ、その入口にあたる生体膜透過は生体膜透過の3つのルートをご覧ください。
まずは1-コンパートメントモデルから始めましょう。1-コンパートメントモデルの考え方と分布容積Vdへ進んでください。
薬剤を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、薬剤という科目のほんの一区画です。実際には、吸収から分布・代謝・排泄、そして製剤設計までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全33本・約11時間。「なぜこの薬がここで出てくるのか」「さっき覚えたあの話が、どこにつながるのか」が、バラバラの知識ではなく流れとして入ってきます。細切れに暗記してきたものが、1本の線になる感覚です。
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