薬物動態の解析

経口投与時のCTグラフの読み方と残差法|keとkaの求め方【薬剤師国家試験】

経口投与式のマインドマップ
経口投与式のマインドマップ

静脈内投与のグラフは、投与直後から下がるだけの単調な形でした。経口投与はそうはいきません。吸収しながら消失していくので、山のような形になります。

ここで身につけたいのは計算そのものより、グラフからkeとkaを読み取る手順です。国試では「このグラフから吸収速度定数を求めよ」という形で出てきます。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。

経口投与の速度式

経口投与式の速度式
経口投与式の速度式

体内薬物量の変化速度は、次の2つの差で決まります。

dX/dt = (吸収速度) − (消失速度) = ka・Xa − ke・X

kaが吸収速度定数、keが消失速度定数です。静脈内投与では吸収の項がなかったので、消失だけの単純な式でした。経口投与では入ってくる流れと出ていく流れが同時に動いている、というのが違いです。

グラフの3つの時期

この式をグラフで追ってみましょう。縦軸に血中濃度C、横軸に時間tをとります。

  1. 立ち上がり — 吸収速度 > 消失速度。濃度は上がっていく
  2. ピーク — 吸収速度 = 消失速度。ちょうど釣り合った瞬間が最高血中濃度(Cmax)、そのときの時間がTmax
  3. 下降 — 吸収速度 < 消失速度。やがて吸収が終わり、消失のみになる

3つ目がポイントです。最後の局面では消失しか起きていない——ここからkeが読めます。

片対数グラフの傾きからkeを求める

CTグラフと残差法
CTグラフと残差法

縦軸を対数にして血中濃度をプロットすると、最後の部分が直線になります。ここは消失しか起きていないので、静脈内投与のときと同じ状況だからです。

したがって、この直線の傾きからkeが求まります。

  • 自然対数(ln C)でプロット → 傾き = −ke
  • 常用対数(log₁₀C)でプロット → 傾き = −ke / 2.303

国試のグラフはlog表記のことが多いので、2.303が出てきたら常用対数と判断してください。

残差法でkaを求める

keは分かりました。ではkaはどうやって求めるのでしょうか。

立ち上がりの部分の傾きを測っても、そこは「吸収 − 消失」の差なので、kaそのものにはなりません。そこで使うのが残差法(フェザリング法)です。

手順はこうです。

  1. 消失相の直線を、左方向へ延長(外挿)する
  2. その延長線は「もし消失だけが起きていたら、この時期の濃度はいくつだったか」を表している
  3. 外挿線の値から、実測値を引く
  4. その差(残差)を同じグラフにプロットすると、新しい直線ができる
  5. この残差直線の傾きが −ka / 2.303(常用対数の場合)

考え方としては、「全体 = 吸収の影響 + 消失の影響」なので、消失の影響を引き算すれば吸収の影響だけが残るということです。実測曲線と外挿線の縦の差を、時間ごとに拾っていくイメージを持ってください。

注意:この読み方には前提がある

ここまでの手順には「ka > ke(吸収のほうが消失より速い)」という前提が隠れています。

普通の製剤ならこの前提は成り立ちます。ですが徐放性製剤のように、わざとゆっくり吸収させる設計の薬では逆転することがあります。その場合はグラフの読み方も入れ替わります。これがフリップフロップ現象です。

詳しくはフリップフロップ現象とはをご覧ください。

まとめ

  • 経口投与の速度式は dX/dt = ka・Xa − ke・X(吸収 − 消失)
  • CTグラフは立ち上がり → ピーク(吸収=消失) → 下降(最後は消失のみ)
  • 片対数グラフの最後の直線部分の傾きからkeが求まる(常用対数なら傾き = −ke/2.303)
  • 残差法 = 消失相の直線を左へ外挿し、実測値との差をプロットする。その傾きが −ka/2.303
  • この読み方は ka > ke が前提。逆転するとフリップフロップ現象になる

次はそのフリップフロップ現象です。フリップフロップ現象とはへ進んでください。

血中濃度の式と片対数グラフの基本は血中濃度の式の導出と半減期の求め方、この単元の地図は薬物動態解析の全体像と勉強の順番で確認できます。

薬剤を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、薬剤という科目のほんの一区画です。実際には、吸収から分布・代謝・排泄、そして製剤設計までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

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