薬物動態の解析

点滴静注の定常状態血中濃度(Css)|到達時間と負荷量の考え方【薬剤師国家試験】

点滴静注のマインドマップ
点滴静注のマインドマップ

ここまで扱ってきたのは単回投与でした。ポンと入れて、あとは下がっていくだけのグラフです。

点滴静注はそれとは逆の形になります。投与し続けると、血中濃度はじわじわ上がっていき、やがて一定の値で止まります。この止まった値が定常状態血中濃度(Css)です。

Cssを出す式は拍子抜けするほど簡単です。まずはそこから始めましょう。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。

定常状態血中濃度Cssの式

体内薬物量の変化速度の式
体内薬物量の変化速度の式

体の中の薬物量がどう変化するかを考えます。変化量を決める要素は2つだけです。

体内量の変化 = 入ってくる量 − 出ていく量

当たり前の式ですね。中身を入れてみましょう。

  • 入ってくる量 = 投与速度(k₀)
  • 出ていく量 = CLtot × C(クリアランスの定義式そのもの)

ここで「定常状態」とはどういう状態かを考えます。濃度が一定で止まっているということは、入ってくる量と出ていく量が釣り合っているということです。つまり体内量の変化がゼロになります。

定常状態血中濃度Cssの式
定常状態血中濃度Cssの式

k₀ = CLtot × Css

両辺をCLtotで割れば、

Css = k₀ / CLtot

これだけです。定常状態の濃度は、投与速度をクリアランスで割るだけで出ます。

定常状態に達するまでの時間

「いつから定常状態と呼んでいいのか」も問われます。答えは半減期の4〜5倍です。

理屈のうえでは無限の時間が経たないとCssには到達しません。ですが実際には、

  • 4半減期で、Cssの93.75% に達する

ここまで来れば「ほぼ定常状態」と言って差し支えありません。国試でも「何倍」と厳密に問われることはないので、半減期の4〜5倍と覚えておいて、選択肢の中でそれらしいものを選べば大丈夫です。

上昇している途中の式

上昇途中の血中濃度の式
上昇途中の血中濃度の式

定常状態に達する前、上がっている途中の濃度を表す式がこれです。

C = Css(1 − e^(−ke・t))

長くて覚えにくそうに見えますが、すでに知っている式を変形しただけです。グラフで追ってみましょう。

上昇曲線の成り立ち
上昇曲線の成り立ち

単回投与のとき、こんな式がありました。

C = C₀・e^(−ke・t) … 右下がりに減っていくグラフ

この形、目標の式の中にそっくり入っていますね。手順は3ステップです。

  1. マイナスをつけて反転させる → 右上がりのグラフになる。切片は −Css
  2. Cssだけ平行移動する → 切片が0になり、Cssに向かって上がっていくグラフになる
  3. 式にすると C = −Css・e^(−ke・t) + Css = Css(1 − e^(−ke・t))

反転して平行移動しただけなので、半減期ごとの挙動もそのまま引き継がれます。

  • 1半減期 → Cssの1/2
  • 2半減期 → 1/2 + 1/4 = 3/4
  • 3半減期 → 7/8
  • 4半減期 → 15/16 = 93.75%
  • 5半減期 → 31/32 ≈ 96.88%

先ほどの「4〜5倍で定常状態」という数字は、ここから出てきています。

負荷量(ローディングドーズ)

負荷量の式
負荷量の式

点滴静注のグラフは、じわじわとしか上がりません。半減期の長い薬なら、効いてほしい濃度に届くまで何時間もかかってしまいます。

そこで、最初に一発まとめて投与して、いきなりCssまで持ち上げるという方法をとります。これが負荷量(ローディングドーズ)です。

考え方は分布容積の定義そのままです。「Cssという濃度にするには何mg必要か」を聞いているだけですから、

負荷量 = Vd × Css

目標をCssの2倍にしたければ、負荷量も2倍にすればいい。それだけです。

負荷量を入れたあとは、そのままの濃度を維持するように点滴を続けます。もし負荷量を入れすぎれば、逆に上から下がってきてCssに落ち着くグラフになります。

まとめ

  • Css = k₀ / CLtot(投与速度 ÷ クリアランス)。定常状態では入る量と出る量が釣り合う
  • 定常状態に達するのは半減期の4〜5倍。4半減期で93.75%
  • 上昇途中は C = Css(1 − e^(−ke・t))。単回投与の式を反転して平行移動しただけ
  • 負荷量 = Vd × Css。一発で目標濃度まで持ち上げる

次は繰り返し投与に進みます。繰り返し投与の平均血中濃度へ進んでください。

クリアランスの定義式はクリアランスの定義式と全身・腎・肝クリアランスの関係、分布容積Vdは1-コンパートメントモデルの考え方と分布容積Vd、半減期は血中濃度の式の導出と半減期の求め方で扱っています。この単元の地図は薬物動態解析の全体像と勉強の順番で確認できます。

薬剤を、1枚の地図として頭に入れませんか

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