排泄

腎排泄の仕組みと腎クリアランスの指標【薬剤師国家試験】

腎排泄のマインドマップ
腎排泄のマインドマップ

ADMEの最後、排泄です。出口は2つ。尿から出す腎排泄と、胆汁に流して糞便から出す胆汁中排泄。この記事は前者を扱います。

進め方は講義と同じ2段構え。まず尿がどうやってできるか(尿中排泄機構)、次にそれをどう数字で測るか(腎クリアランス)。腎クリアランスの式も腎機能の指標も、中身は「ろ過・分泌・再吸収のうちその物質がどれを受けるか」に還元できます。機構を先に押さえれば、計算もグラフもそこから出てきます。

ゴールは3つ。3つの機構を場所とトランスポーターごと固定すること、CLrの式を「入る量 × 残る割合」と読めること、イヌリン・クレアチニン・パラアミノ馬尿酸が何を測っているのか言えることです。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。

腎臓は「水に溶ける薬」しか捨てられない

先に土台の話をします。なぜ肝臓はわざわざ薬を代謝するのか。 答えは腎臓の側にあります。

腎臓は1日におよそ150 Lの原尿をつくります(GFR 100 mL/min × 1440分)。ところが実際に出てくる尿は1日1.5 Lほど。つまり原尿の99%は水ごと血液に回収されている。

水がこれだけ抜ければ、尿細管に残った薬物は濃縮されて血液側より濃くなり、濃度勾配ができます。 ここで薬物が脂溶性だと、尿細管上皮を単純拡散で通り抜けて血液側へ戻ってしまう——これが再吸収です。だから脂溶性の高い薬は何度ろ過されても出ていかない。 薬物代謝が「水に溶ける形に作り替える工程」である理由です。

尿ができるまでの3ステップ

尿中排泄機構(糸球体ろ過・尿細管分泌・尿細管再吸収)
尿中排泄機構(糸球体ろ過・尿細管分泌・尿細管再吸収)
機構 場所 輸送の種類
① 糸球体ろ過 糸球体 圧力によるろ過(担体なし)
② 尿細管分泌 近位尿細管 能動輸送(トランスポーター)
③ 尿細管再吸収 近位(担体)・遠位(単純拡散) 担体介在輸送 と 単純拡散

①②は血液 → 尿、③だけが尿 → 血液。図の上端の腎血漿流量500〜650 mL/minとGFR 100 mL/minはそのまま覚える数字です。流れ込む血漿のうちろ過されるのは2割弱にすぎません。

① 糸球体ろ過 ― 圧力でこし出す

ろ過が起きる理由は単純な水圧です。糸球体の毛細血管は入口の輸入細動脈より出口の輸出細動脈のほうが細い。 出口が絞られるぶん内圧が上がり、毛細血管内圧がボーマン嚢内圧を上回る。 この差圧で血漿成分が押し出される。これを加圧ろ過といいます。

通れるのは血漿タンパクと結合していないフリー体(非結合形)だけ。 腎臓の毛細血管は有窓型で、隙間はあってもアルブミンのような大きな分子は通さないからです(血管の3タイプは薬の移行性が主戦場)。したがって、

CLろ過 = GFR × fp(fp:血漿タンパク非結合率)

結合率が高い薬ほど、ろ過では捨てられない。 ここが計算問題の軸です。

② 尿細管分泌 ― トランスポーターで汲み出す

ろ過で取りこぼした分を近位尿細管で能動的に汲み出すのが分泌です。担当は3つ。ここが国試の一等地。

トランスポーター 基質 阻害する薬 → 起きること
OAT(有機アニオントランスポーター) パラアミノ馬尿酸、プロベネシド、メトトレキサート、ペニシリン プロベネシドがメトトレキサート・ペニシリンの分泌を阻害 → 血中濃度が上昇
OCT(有機カチオントランスポーター) シメチジン、プロカインアミド シメチジンがプロカインアミドの分泌を阻害 → 血中濃度が上昇
P-糖タンパク質 キニジン、ジゴキシン キニジンがジゴキシンの分泌を阻害 → 血中濃度が上昇

構図はどれも同じです。能動輸送は担体を使い、担体の数には限りがある。だから同じ担体を使う薬どうしは席を奪い合う。 これが競合阻害です。阻害薬のほうもその担体の基質である点に注目を。プロベネシドはOATの、シメチジンはOCTの基質かつ阻害薬。「同じ輸送体の基質だから邪魔になる」とまとめられます。

なおP-糖タンパク質は胆汁中排泄でも毛細胆管へジゴキシンを送り出しています。 ジゴキシンが相互作用の常連なのは、腎でも肝でも同じ輸送体に頼っているからです。

③ 尿細管再吸収 ― pHで出方が変わる

再吸収には2つのルートがあります。担体介在輸送は近位尿細管でグルコースやアミノ酸といった必要なものを回収する経路。単純拡散は主に遠位尿細管で起こり、薬物の再吸収はほぼこちらです。

そして単純拡散で動くものはpH分配仮説に従う。 膜を通れるのは分子形だけでイオン形は通れない——この一点で結論が出ます。

薬物の性質 代表薬 尿pHが下がると 再吸収 尿への排泄
酸性薬物 サリチル酸、フェノバルビタール 分子形が増える 増える 減る
塩基性薬物 メタンフェタミン イオン形が増える 減る 増える

尿のpHを動かす薬も押さえます。上げる(アルカリ化)のは炭酸水素ナトリウムとアセタゾラミド、下げる(酸性化)のは塩化アンモニウムとアスコルビン酸。

問われ方は決まっています。「アスコルビン酸を併用すると、サリチル酸の腎クリアランスはどうなるか」。尿pHが下がる → 分子形が増える → 再吸収が増える → 腎クリアランスは小さくなる。第108回でこの形が出ました。

腎クリアランスの式 ― 入る量に、残る割合を掛けるだけ

出発点はここです。尿中排泄速度は血漿中濃度に比例します。

dXu/dt = CLr × C(Xu:尿中排泄量、C:血漿中濃度)

血中に薬が多ければ、多く出ていく。 その比例定数が腎クリアランスCLrです。つまりCLrは「尿中排泄速度 対 血漿中濃度」のグラフの傾き。 この読み替えが後のグラフ問題を片づけます。中身を開くと、こうなります。

CLr =(GFR × fp + CLs)×(1 − R)

(GFR:糸球体ろ過速度、fp:血漿タンパク非結合率、CLs:分泌クリアランス、R:再吸収率)

怖がる式ではありません。カッコの中は「尿細管に入ってくる総量」——ろ過で入る分(GFR × fp)と分泌で入る分(CLs)の足し算です。そこに(1 − R)=「戻らずに残る割合」を掛けているだけ。

ここから実戦的な使い方が出ます。CLrとCLろ過(= GFR × fp)を比べれば、分泌されているか再吸収されているかが分かるのです。

  • CLr > GFR × fp → ろ過では説明がつかない量が出ている → 尿細管分泌がある
  • CLr < GFR × fp → ろ過された分より少ししか出ていない → 尿細管再吸収がある

CLrは、全身クリアランスと尿中未変化体排泄率 fe から CLr = CLtot × fe で求まります。この2本立てがそのまま第111回・問173になりました(定義そのものはクリアランスの定義式が主戦場)。

腎機能の指標 ― 何を測るとどこが分かるか

排泄パターンの3分類
排泄パターンの3分類

腎臓がやっているのはろ過・分泌・再吸収の3つだけ。ということは、受ける機構が限られた物質を選べば、その機能だけを取り出して測れる。 上の図の3パターンが、そのままイヌリン・クレアチニン=ろ過のみ、パラアミノ馬尿酸=ろ過+分泌、グルコース・アミノ酸=ろ過+再吸収に対応します。

イヌリンとクレアチニン(= GFR:100〜130 mL/min)

どちらもろ過されるだけで、分泌も再吸収も受けません。 しかも血漿タンパクとほとんど結合しないのでfp ≒ 1。すると CLろ過 = GFR × fp = GFR となり、測ったCLrがそのままGFRになります。

違いは出どころ。イヌリンは注射する検査薬、クレアチニンは筋肉由来の内因性物質で、採血だけで済む臨床ではクレアチニンが使われます。ただしクレアチニンにはわずかに尿細管分泌がある。 その分だけGFRより大きく出るので、腎機能を過大評価してしまう。 講義では灰色のブランチの注意書きですが、第110回・問173でこの差がそのまま計算問題になりました。

Cockcroft-Gault式

Cockcroft-Gault式
Cockcroft-Gault式

クレアチニンは体内で作られるので投与量が分かりません。そこで年齢・体重・血清クレアチニン濃度から推算するのがこの式です。

CLcr(mL/min) =(140 − 年齢)× 体重(kg) /(72 × Scr(mg/dL)) 女性は × 0.85

読みどころは2つ。Scrが分母にあること——腎機能が悪いとクレアチニンが血中に溜まってScrが上がり、CLcrは小さくなる。腎機能の悪化が数字の低下として出るようにできています。もう1つは女性の0.85。クレアチニンは筋肉由来で、女性は筋肉量が少ないぶん産生量も少ないからです。

パラアミノ馬尿酸(= 腎血漿流量:500〜650 mL/min)

ろ過に加えて近位尿細管でも分泌されるので、低濃度なら流れてきた分をほぼ取りこぼさずに排泄します。 全部捨てるということは、CLrがそのまま腎血漿流量になるということ。ただし分泌は能動輸送なので濃度が上がると飽和し、取りこぼしが出て前提は崩れます。「低濃度では」という但し書きはここから来ています。

グラフはこう読む

血漿中濃度と尿中排泄速度・腎クリアランスの関係
血漿中濃度と尿中排泄速度・腎クリアランスの関係

左は尿中排泄速度 対 血漿中濃度、右はCLr 対 血漿中濃度。CLrは左の傾きでしたから、右は左の傾きをプロットし直しただけです。

  • イヌリン:ろ過だけで飽和しないので、左は直線、右は水平
  • パラアミノ馬尿酸:低濃度は「ろ過 + 分泌」で傾きが急。分泌が飽和すると上乗せ分が頭打ちになり、右は高い値から下がってイヌリンに漸近
  • グルコース:ろ過分を全部再吸収するので出ない。再吸収の飽和後に排泄が始まるので、右はゼロ付近から上がる

担体を使う分泌と再吸収は飽和し、ろ過は飽和しない。 これだけでグラフは再現できます(飽和したときのグラフもどうぞ)。

国試ではこう問われる

第97〜111回の15年分では、尿細管分泌が14回、糸球体ろ過が12回、クレアチニンクリアランスが10回、腎クリアランスが9回、イヌリンが8回。薬名ではメトトレキサート15回、ジゴキシン14回、プロベネシド11回。毎年どこかで顔を出す単元です。

回 問われ方 ポイント
第111回・問173 ゲンタマイシンのCLtot・GFR・fe・fpを与え、腎障害の前後でクリアランスを読ませる 正解は2と5。CLr = CLtot × fe = 69.0、CLろ過 = GFR × fp = 56.25。CLrのほうが大きいので尿細管分泌がある。 腎外クリアランスは前後とも6.0でほぼ一定
第110回・問174 腎排泄の相互作用を「薬物・併用薬・トランスポーター」の組合せで問う 正解はメトトレキサート×プロベネシド=OAT1・OAT3と、ジゴキシン×ベラパミル=P-糖タンパク質
第110回・問173 イヌリンクリアランス30、クレアチニンクリアランス50から腎機能を読む 正解は3と5。差の20がクレアチニンの尿細管分泌クリアランス。「クレアチニンは過大評価する」がそのまま計算になった
第108回・問172 薬物の腎排泄 正解は3と4。グルコースは尿中にほとんど排泄されない/ゲンタマイシンの半減期はGFR低下で延長。「サリチル酸の腎クリアランスはアスコルビン酸の併用で増加する」は誤り
第103回・問170 腎排泄 正解は2と5。糸球体ろ過は加圧ろ過/再吸収を受けない薬物では尿中濃度が血漿中非結合形濃度より高くなる(原尿の99%回収)

掘り下げるなら第110回・問174。分泌トランスポーターの表がそのまま採点対象です。

選択肢1が見事な罠でした。「プロカインアミド × シメチジン × ペプチドトランスポーター PEPT1」。薬の組合せは正しいのです——シメチジンがプロカインアミドの分泌を阻害して血中濃度を上げる、上の表のとおり。しかし担っているのはOCTであって、PEPT1ではありません。 「どの薬とどの薬か」だけでなく「どの輸送体か」まで揃って初めて正解という作りです。

選択肢2の「メトホルミン × リファンピシン × OATP1B1」も同じで、OATP1B1は肝細胞側の取り込み輸送体、腎排泄の話ではありません(胆汁中排泄の守備範囲)。

まとめ

  • 腎臓は原尿の99%を水ごと回収する。だから尿細管内で薬が濃縮され、脂溶性が高いと単純拡散で戻ってくる(再吸収)。代謝が必要な理由はここにある
  • 尿は①糸球体ろ過 → ②尿細管分泌(近位) → ③尿細管再吸収(近位の担体・遠位の単純拡散)の3段階。腎血漿流量500〜650 mL/min、GFR 100 mL/min
  • 糸球体ろ過は輸出細動脈が細いことで生じる加圧ろ過。通るのはフリー体だけで CLろ過 = GFR × fp
  • 分泌の3つはOAT(プロベネシド・メトトレキサート・ペニシリン)/ OCT(シメチジン・プロカインアミド)/ P-糖タンパク質(キニジン・ジゴキシン)。すべて担体の奪い合い=競合阻害
  • 再吸収はpH分配仮説に従い、酸性薬物は尿pHが下がると再吸収が増える(塩基性は逆)。尿pHを上げるのは炭酸水素ナトリウム・アセタゾラミド、下げるのは塩化アンモニウム・アスコルビン酸
  • CLr =(GFR × fp + CLs)×(1 − R) は「入る総量 × 戻らずに残る割合」。CLr と GFR × fp を比べれば分泌優位か再吸収優位かが判定でき、CLr は CLtot × fe で求まる
  • 指標はイヌリン・クレアチニン = GFR(100〜130)、パラアミノ馬尿酸 = 腎血漿流量(500〜650)。クレアチニンは分泌がある分、腎機能を過大評価する
  • グラフは「担体を使う分泌と再吸収は飽和し、ろ過は飽和しない」だけで再現できる
  • 国試は「薬の組合せ」だけでなく「どの輸送体か」まで揃えて問う

次は胆汁中排泄と腸肝循環の仕組みを読んでみてください。腎臓から捨てられない大きな薬がどこを通って出ていくのか、排泄のもう一本の道です。

薬剤を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、薬剤という科目のほんの一区画です。実際には、吸収から分布・代謝・排泄、そして製剤設計までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全33本・約11時間。「なぜこの薬がここで出てくるのか」「さっき覚えたあの話が、どこにつながるのか」が、バラバラの知識ではなく流れとして入ってきます。細切れに暗記してきたものが、1本の線になる感覚です。

薬剤のマインドマップPDF+解説授業セットは¥9,450。無料のサンプル動画とサンプルPDFがあるので、この「たどる」感覚が自分に合うかどうかは、先に確かめられます。

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