薬物動態の解析

肝クリアランスとAUCの関係|静注と経口で何が違うのか【薬剤師国家試験】

AUCへの影響のマインドマップ
AUCへの影響のマインドマップ

肝血流量が変わったらAUCはどうなるか。遊離型分率が変わったらどうなるか。——国試ではこの形で問われます。

そして面白いのが、静脈内投与と経口投与で答えが変わることです。特に経口投与では、肝血流量の影響がほとんど出ません。理由まで含めて押さえておきましょう。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。

静脈内投与のAUC

静脈内投与時のAUC
静脈内投与時のAUC

出発点はAUCとクリアランスの関係で導いた式です。

AUCiv = Div / CLtot

肝臓でのみ消失する薬を考えれば CLtot = CLh ですから、ここに前の記事の分類を当てはめます。

肝血流量依存性薬物の場合

CLh ≈ Qh でしたから、

AUCiv ≈ Div / Qh

Qhが上がればAUCは下がり、Qhが下がればAUCは上がります。血流量に素直に反応するわけです。

肝固有クリアランス依存性薬物の場合

CLh ≈ CLint・fu でしたから、

AUCiv ≈ Div / (CLint・fu)

こちらはCLintとfuに反応します。Qhが変わっても影響を受けません。

経口投与のAUC

経口投与時のAUC
経口投与時のAUC

経口投与では、体循環に入るのはバイオアベイラビリティの分だけでした。

F × Dpo = CLtot × AUCpo

ここで話がややこしくなります。Fの中にもEHが入っているからです。

F = Fa × Fg × Fh、そして Fh = 1 − EH でしたね。一方、CLh = Qh × EH のほうにもEHが入っている。両方にEHが顔を出すので、面倒に見えます。

ところが、実際に計算してみると驚くべきことが起きます。

どちらのタイプでも同じ式になる

肝血流量依存性の場合も、肝固有クリアランス依存性の場合も、整理していくと同じ式にたどり着きます(Fg = 1 とした場合)。

AUCpo ≈ Dpo / (CLint・fu)

Qhが式の中に出てこない——これが重要な結論です。つまり経口投与のAUCは、肝血流量の影響をほとんど受けません。

導出は国試の最中にやるようなものではないので、結論を覚えてしまって構いません。ただ、なぜそうなるかのイメージは持っておくと忘れにくくなります。

なぜQhの影響が消えるのか

イメージで説明します。経口投与された薬は、消化管から吸収されて門脈を通り、肝臓を経由してから体循環に入ります。

ここで肝血流量が増えたとしましょう。2つのことが同時に起こります。

  1. 一気に流れ込むので、肝臓が処理しきれない → すり抜ける割合が増える → Fが上がる
  2. 肝臓を通る血液が増えるので、捕まえる機会も増える → CLhも上がる

AUCpo = F・Dpo / CLh ですから、分子のFも分母のCLhも一緒に上がります。両者が相殺して、結果的にQhの影響が消えるというわけです。

「Qhは上と下の両方に効くから打ち消し合う」——このイメージで覚えておけば、式を忘れても結論は出せます。

表で整理する

肝血流量依存性薬物 肝固有クリアランス依存性薬物
AUCiv Div / Qh Div / (CLint・fu)
AUCpo Dpo / (CLint・fu) Dpo / (CLint・fu)

経口投与の行は、どちらも同じになっている点に注目してください。

裏を返せば、経口投与のAUCが変わったなら、それはQh以外の要因ということになります。CLintが変わったのか、fuが変わったのか——そこを疑えばいい、という判断ができます。

まとめ

  • AUCiv は分類によって変わる。肝血流量依存性なら Div/Qh、肝固有クリアランス依存性なら Div/(CLint・fu)
  • AUCpo はどちらのタイプでも Dpo/(CLint・fu) になり、Qhの影響をほとんど受けない
  • 理由は、Qhが上がるとFも上がりCLhも上がるため、相殺されるから
  • 経口投与のAUCが変動したら、Qh以外(CLintかfu)を疑う

これで生理学的モデルは終わりです。薬剤の計算パートはここで一区切りになります。次はモーメント解析法に進みます。

分類と代表薬は肝血流量依存性薬物と肝固有クリアランス依存性薬物、導出は肝クリアランスの導出、AUCの基本はAUCとクリアランスの関係、バイオアベイラビリティはバイオアベイラビリティと生物学的同等性で扱っています。

薬剤を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、薬剤という科目のほんの一区画です。実際には、吸収から分布・代謝・排泄、そして製剤設計までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全33本・約11時間。「なぜこの薬がここで出てくるのか」「さっき覚えたあの話が、どこにつながるのか」が、バラバラの知識ではなく流れとして入ってきます。細切れに暗記してきたものが、1本の線になる感覚です。

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