薬物動態の解析

TDM対象薬②|抗菌薬・免疫抑制薬・炭酸リチウム・メトトレキサート【薬剤師国家試験】

TDM対象薬のマインドマップ
TDM対象薬のマインドマップ

後半は抗菌薬から始めます。ここは抗菌薬のPK/PD解析で学んだ濃度依存型・時間依存型の分類が、そのまま「ピークを測るか、トラフを測るか」につながります。

なぜその値を測るのかが説明できるようになると、丸暗記から解放されます。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。

アミノグリコシド系

アミノグリコシド系のTDM
アミノグリコシド系のTDM
  • PK/PD — 濃度依存型(語呂「新しいあみの密度」)
  • 排泄 — 腎排泄
  • 副作用 — 腎機能障害、聴覚障害
  • 測定 — ピーク値とトラフ値の両方

ここで押さえたいのが、なぜ2つとも測るのかです。理由がそれぞれ違います。

ピーク値は効果を見るため。 濃度依存型なので、ピークが高いほど効きます。

トラフ値は副作用を防ぐため。 トラフ値が高いということは、次の投与までの間も薬が体に残り続けているということです。残り続けると、尿細管に蓄積して腎機能障害を、内耳に蓄積して聴覚障害を起こします。

「ピークは効果、トラフは副作用」——このセットで覚えてください。

グリコペプチド系

バンコマイシン

バンコマイシンのTDM
バンコマイシンのTDM
  • PK/PD — 時間依存型(語呂「バクテリアが時間」)
  • 消化管からの吸収 — ほぼなし
  • 排泄 — 腎排泄
  • 指標 — AUC/MIC
  • 副作用 — 腎機能障害、聴覚障害、そしてレッドネック症候群

消化管からほとんど吸収されないという性質が、投与経路を決めています。全身に効かせたいときは注射剤。逆に、経口投与すれば全身には回らず消化管内だけで働くので、偽膜性大腸炎の治療に使えます。「吸収されない」という欠点を利点に変えているわけですね。

レッドネック症候群は、首から上が赤くなる副作用です。急速に投与すると起こりやすいため、60分以上かけて点滴静注します。

管理指標にAUC/MICを使うのも特徴です。時間依存型なのでトラフ値でもよさそうですが、バンコマイシンはより厳格な管理が求められます。

テイコプラニン

テイコプラニンのTDM
テイコプラニンのTDM
  • 分布 — 遊離型分率が10%程度と低い
  • 排泄 — 腎排泄
  • PK/PD — 時間依存型
  • 指標 — トラフ値でよい
  • 投与 — 30分以上かけて点滴静注。負荷投与を行う

バンコマイシンと比べると、トラフ値だけでよいという点が違います。理由は半減期が長いことです。

半減期が短い薬は「ポンと上がってサッと下がる」を繰り返すため、1点だけ測っても全体像が分かりません。一方テイコプラニンは半減期が長く、グラフが平坦になります。だからトラフ値1点で管理できるわけです。

また、半減期が長いということは定常状態に達するまで時間がかかるということでもあります。だから負荷投与を行って、早く有効濃度域に持っていきます。

点滴時間も、バンコマイシンの60分以上に対してテイコプラニンは30分以上と短めです。レッドネック症候群のリスクがバンコマイシンより低いためです。

免疫抑制薬

タクロリムス

タクロリムスのTDM
タクロリムスのTDM
  • 分布 — 遊離型分率が1%程度と非常に低い
  • 代謝 — CYP3A4(遺伝子多型あり)
  • 排泄 — P-糖タンパク質で排出
  • 測定 — 全血中濃度

最後の全血中濃度が最重要です。他の薬はたいてい血漿中濃度を測りますが、タクロリムスは赤血球に強く結合する性質があります。血漿だけ測っても実態を反映しないため、全血で測定します。

シクロスポリン

シクロスポリンのTDM
シクロスポリンのTDM
  • 製剤 — ネオーラル(自己乳化型マイクロエマルション製剤)
  • 代謝 — CYP3A4
  • 排泄 — P-糖タンパク質
  • 相互作用 — CYP3A4やP-糖タンパク質、OATPなどを阻害する
  • 測定 — 全血中濃度

ネオーラルは薬剤の製剤分野で登場する重要製剤です。油薬と乳化剤を含み、消化管内で自己乳化することで胆汁酸の影響を受けにくくなっています。

相互作用では、胆汁中排泄と腸肝循環の仕組みで扱った内容を思い出してください。シクロスポリンがトランスポーターを阻害することで、プラバスタチンやロスバスタチンの血中濃度が上がります。

タクロリムスと同じく全血中濃度を測定します。

炭酸リチウム

  • 治療域 — 0.3〜1.2 mEq/L
  • 排泄 — 腎排泄

単位がmEq/Lである点が特徴です。炭酸リチウムは体内で炭酸イオンとリチウムイオンに解離するため、イオンの当量で表現します。

mEqのままだと他の薬と比べにくいのですが、mgに換算すると1日あたり8.4 mg/L程度になります。タクロリムスがng単位だったことを考えると、かなり高い濃度で管理している薬だと分かります。

メトトレキサート

  • 排泄 — 腎排泄(尿細管分泌)

腎排泄の仕組みと腎クリアランスの指標で扱った通り、メトトレキサートは尿細管から分泌されて排泄されます。そしてこの分泌がプロベネシドなどで阻害されるため、併用時にはメトトレキサートの血中濃度が上がります。

まとめ

薬 押さえるポイント
アミノグリコシド系 濃度依存型。ピーク=効果、トラフ=副作用防止。腎機能障害・聴覚障害
バンコマイシン 時間依存型。消化管吸収ほぼなし(偽膜性大腸炎には経口)。AUC/MIC。レッドネック症候群、60分以上かけて点滴
テイコプラニン 時間依存型。トラフ値でよい(半減期が長くグラフが平坦)。負荷投与。30分以上かけて点滴
タクロリムス fu約1%、CYP3A4、P-糖タンパク質、全血中濃度を測定
シクロスポリン ネオーラル(自己乳化型マイクロエマルション)、CYP3A4・P-糖タンパク質を阻害、全血中濃度
炭酸リチウム 治療域0.3〜1.2 mEq/L、腎排泄
メトトレキサート 腎排泄(尿細管分泌)、プロベネシドで阻害される

次は投与設計です。母集団薬物速度論とベイジアン解析法による投与設計へ進んでください。

前半の薬はTDM対象薬①、PK/PDの分類は抗菌薬のPK/PD解析で扱っています。

薬剤を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、薬剤という科目のほんの一区画です。実際には、吸収から分布・代謝・排泄、そして製剤設計までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全33本・約11時間。「なぜこの薬がここで出てくるのか」「さっき覚えたあの話が、どこにつながるのか」が、バラバラの知識ではなく流れとして入ってきます。細切れに暗記してきたものが、1本の線になる感覚です。

薬剤のマインドマップPDF+解説授業セットは¥9,450。無料のサンプル動画とサンプルPDFがあるので、この「たどる」感覚が自分に合うかどうかは、先に確かめられます。

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