社会保障制度と医療経済

介護保険制度と介護報酬をまとめて理解する【薬剤師国家試験】

前回の日本の社会保障制度の全体像で出てきた「関連する制度」のブランチが、この記事のテーマです。マインドマップ上では社会保障制度のページの左半分にあたります。講義では医療保険・療養担当規則・公定価格をひと通りやったあとに最後に戻ってくる構成になっていますが、介護保険は1本の記事でまとめて理解したほうが早いので、ここでは介護保険制度と、公定価格の「介護報酬」パートを1本に統合して扱います。

薬剤師国家試験では、介護保険は実務との複合問題でよく出ます。在宅の患者さんを担当する場面で「これは医療保険か、介護保険か」を判断させる形です。制度の骨格だけはきちんと押さえておきましょう。

社会保障制度のマインドマップ(関連する制度として公費負担医療制度と介護保険制度が配置されている)
社会保障制度のマインドマップ(関連する制度として公費負担医療制度と介護保険制度が配置されている)

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。

まず公費負担医療制度をさらっと

介護保険の前に、もう一つの「関連する制度」である公費負担医療制度に触れておきます。これは税金を財源として医療費を給付する制度で、次のようなものが含まれます。

  • 生活保護制度(医療扶助)
  • 感染症法に基づく結核医療
  • そのほか公衆衛生関係・社会福祉関係のもの

費用の負担のしかたには、全額を公費で負担する場合と、健康保険と公費の双方で負担する場合の2通りがあります。講義でも「ここはほとんど出ない」と言われているパートなので、税金が財源であることと全額公費のものと併用のものがあることの2点を押さえて先に進みましょう。

介護保険制度の骨格

ここからが本題です。介護保険は介護の分野の制度で、医療の分野の制度である医療保険とは支払いの出どころが違います。在宅業務では「どちらから払うのか」の判断が実務上も試験上も重要になります。

項目 内容
運営方式 社会保険方式(国民が公平に負担する)
保険者 市町村および特別区
第1号被保険者 65歳以上の居住者
第2号被保険者 医療保険に加入している40〜64歳の居住者
自己負担 原則1割

第2号被保険者の保険料は、医療保険の保険者が医療保険料に上乗せして徴収します。40歳になると健康保険料が少し高くなるのはこのためです。

ここで注意してほしいのが、第2号被保険者(40〜64歳)は、いつでも給付を受けられるわけではないという点です。第2号被保険者が要介護・要支援の認定を受けられるのは、加齢に伴う特定疾病によって介護が必要になった場合に限られます。特定疾病には、末期がん、脳血管疾患、初老期における認知症、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症などが指定されています。

保険給付は「介護給付」と「予防給付」の2つ

名前が似ていて混乱しやすいところなので、表で並べます。

介護給付 予防給付
対象 要介護状態 要支援状態
必要な認定 市町村(特別区)の要介護認定 市町村(特別区)の要支援認定
内容 在宅サービス+施設サービス 介護予防サービス(在宅のみ)
薬剤師が関わるもの 居宅療養管理指導 介護予防居宅療養管理指導

予防給付には施設サービスがありません。ここは出題されやすいので、「要支援は在宅だけ」と覚えてください。また、薬剤師が関わるサービス名は、要支援側だと頭に「介護予防」が付くだけ、という関係になっています。

在宅サービスには居宅療養管理指導のほかに通所介護(デイサービス)などが、施設サービスには介護老人福祉施設などが含まれます。

サービス利用までの流れ

介護保険のサービス利用までの流れ(申請→主治医の意見書と心身の状況調査→コンピュータによる一次判定→介護認定審査会による二次判定→要介護状態・要支援状態・自立の認定)
介護保険のサービス利用までの流れ(申請→主治医の意見書と心身の状況調査→コンピュータによる一次判定→介護認定審査会による二次判定→要介護状態・要支援状態・自立の認定)
  1. 本人(家族)が市町村に申請する
  2. 主治医の意見書と心身の状況調査をもとに、コンピュータによる一次判定を行う
  3. 介護認定審査会が二次判定を行う
  4. 市町村(特別区)が要介護状態・要支援状態・自立のいずれかを認定する

「誰が何をするか」がそのまま出題ポイントです。認定するのは市町村であって都道府県ではありませんし、判定を行うのは主治医ではなく介護認定審査会です。主治医は意見書を出す立場、と整理しておきましょう。

要介護状態と要支援状態の定義

定義 区分
要介護状態 原則6ヶ月にわたり継続して常時介護を要すると見込まれる状態 1〜5の5段階
要支援状態 常時介護を要する状態の軽減もしくは悪化の防止に支援を要すると見込まれた状態など 1〜2の2段階

「6ヶ月」「要介護は5段階」「要支援は2段階」の3点は、そのまま誤り選択肢の材料になります。

ケアプランの作成

認定区分とケアプランの対応(要介護はケアプラン=介護サービス計画、要支援は介護予防ケアプラン=介護予防サービス計画。いずれもケアマネージャー(介護支援専門員)が作成し、サービス利用時の一部負担金は原則1割)
認定区分とケアプランの対応(要介護はケアプラン=介護サービス計画、要支援は介護予防ケアプラン=介護予防サービス計画。いずれもケアマネージャー(介護支援専門員)が作成し、サービス利用時の一部負担金は原則1割)

認定を受けたら、ケアプラン(介護サービス計画)を作ってサービス利用が始まります。要支援の場合は介護予防ケアプラン(介護予防サービス計画)という名前になります。

作成するのはケアマネージャー(介護支援専門員)です。ケアマネージャーには、医師・薬剤師・看護師・保健師等が、実務経験・試験・講習・研修を経てなることができます。薬剤師もなれるという点は押さえておきましょう。

利用時の一部負担金は原則1割です。

介護報酬:薬剤師に関わるのは居宅療養管理指導費

ここからは公定価格のうち介護報酬のパートです。介護報酬は介護保険法系の厚生労働省告示で定められており、診療報酬(健康保険法系)とは別立てになっています。

薬剤師が関わるのは、実質的に(介護予防)居宅療養管理指導費だけと考えて構いません。

認定区分 算定するもの
要介護 居宅療養管理指導費
要支援 介護予防居宅療養管理指導費

内容は、薬局や病院の医師・歯科医師・薬剤師が行う療養上の管理および指導です。薬剤師が行う場合のルールを並べておきます。

  • 訪問前に薬学的管理指導計画を策定する(医療保険側の在宅患者訪問薬剤管理指導でも同じ。セットで覚える)
  • 支払いは介護保険からなので、介護保険の被保険者証等で利用できるかを確認する
  • 訪問には医師の指示が必要
  • 訪問の結果は、指示を出した医師に文書で報告する
  • 保険薬局は、居宅サービス事業者の指定を受けたものとみなされる(別途の申請が不要)

最後の「みなし指定」は、薬局開設許可を取れば毒物劇物の一般販売業の登録を受けたものとみなされるのと同じ発想です。「薬局は◯◯とみなされる」という規定が法規には何度か出てくるので、まとめて意識しておくと覚えやすくなります。

医療保険と介護保険、どちらから払うのか

在宅業務で混乱しやすいのがここです。原則として、要介護・要支援の認定を受けている患者さんの訪問薬剤管理指導は、介護保険(居宅療養管理指導)が優先されます。医療保険の在宅患者訪問薬剤管理指導料と介護保険の居宅療養管理指導費は、同じ患者さんに同時には算定できません。どちらを使うかを薬局と患者の相談で決められるわけではない、という点も含めて押さえておきましょう。

なお、国民医療費に介護保険から給付される医療系サービスが含まれないのも、この「出どころが違う」という考え方によるものです。

国試ではこう問われる

介護保険は過去15年で繰り返し出題されています。頻出の論点を挙げます。

  • 第108回 問148:正答は「保険者は、市町村(特別区含む)である」「第2号被保険者は、特定疾病によって生じた障害による要支援・介護状態でなければ保険給付を受けることはできない」。誤り選択肢に「要介護認定は、主治医が行う」。
  • 第102回 問146:正答は「第2号被保険者の保険料は、被保険者が加入する医療保険者が徴収する」「要介護状態は5段階に、要支援状態は2段階に区分されている」。誤り選択肢に「要介護状態とは、1年以上継続して常時介護を要すると見込まれる状態」(正しくは原則6ヶ月)。
  • 第103回 問313:正答は「要介護認定を受けた場合に介護サービスが受けられる」。誤り選択肢に「要介護認定は都道府県が行う」「要介護認定は疾病の重症度が判定基準とされる」。
  • 第107回 問321:正答は「65歳にならなくても介護保険が申請できる(特定疾病の場合)」「要介護の認定は、心身の状態と主治医の意見をもとに判定される」。誤り選択肢に「要介護状態は要介護1と2の2つに区分されている」。
  • 第101回 問319:正答は「要介護状態区分は、介護認定審査会が判定する」「介護支援専門員は、サービス計画書(ケアプラン)の作成などを行う」。
  • 第110回 問77:「第2号被保険者が要介護認定を受けられる特定疾病に該当するのはどれか」→ 正答は関節リウマチ。結核・C型肝炎・高血圧症・脂質異常症はいずれも特定疾病ではありません。
  • 第99回 問317(居宅療養管理指導):「提供した居宅療養管理指導の内容について、速やかに記録を作成し、医師又は歯科医師に文書で報告する」が正しい記述として問われています。

「誰が」「何段階」「何ヶ月」の3点セットを押さえれば、多くの選択肢は切れます。

まとめ

  • 介護保険は社会保険方式、保険者は市町村(特別区)、自己負担は原則1割
  • 被保険者は第1号(65歳以上)と第2号(医療保険加入の40〜64歳)。第2号は特定疾病による場合のみ給付を受けられる
  • 給付は介護給付(要介護)と予防給付(要支援)。予防給付に施設サービスはない
  • 認定は申請 → 主治医意見書+心身の状況調査 → コンピュータ一次判定 → 介護認定審査会の二次判定 → 市町村の認定
  • 要介護状態は原則6ヶ月・1〜5の5段階、要支援状態は1〜2の2段階
  • ケアプランはケアマネージャー(介護支援専門員)が作成。薬剤師もなれる
  • 介護報酬で薬剤師が関わるのは(介護予防)居宅療養管理指導費。訪問前に薬学的管理指導計画を策定し、医師の指示で訪問し、結果は医師に文書で報告する。保険薬局は居宅サービス事業者の指定を受けたものとみなされる

次は医療保険制度の全体像(被用者保険・国民健康保険・後期高齢者医療制度)を読んでみてください。

法規を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、法規という科目のほんの一区画です。実際には、薬機法の総則から薬局・製造販売業・医薬品の取扱い、そして社会保障制度までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全26回・約5時間34分。「この省令は誰に向けた基準なのか」「さっき出てきた登場人物が、どこで再登場するのか」が、条文の羅列ではなく流れとして入ってきます。バラバラに覚えていた制度が、1本の線になる感覚です。

法規のマインドマップPDF+解説授業セットは¥9,450。無料のサンプル動画とサンプルPDFがあるので、この「たどる」感覚が自分に合うかどうかは、先に確かめられます。

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