社会保障制度と医療経済

日本の社会保障制度の全体像(4つの柱と財源・給付の割合)【薬剤師国家試験】

前回の国民医療費の動向を数字で押さえるでは「医療にいくらかかっているか」を見ました。今度はその医療費を支えている社会保障制度そのものを、全体像から押さえていきます。ここは細かい制度に入る前の地図づくりのパートです。ここで枠組みを頭に入れておくと、このあと出てくる医療保険・療養担当規則・公定価格・介護保険が「地図のどこの話なのか」を見失わずに済みます。

社会保障制度のマインドマップ(憲法25条・4つの柱・運営方式・給付と財源・医療保険制度・関連する制度)
社会保障制度のマインドマップ(憲法25条・4つの柱・運営方式・給付と財源・医療保険制度・関連する制度)

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。

出発点は憲法25条

日本の社会保障制度の根拠は日本国憲法第25条です。

すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

第1項が国民の生存権、第2項が国に対する努力義務です。この条文から、以下の4つの柱が生えている、というイメージを持ってください。

社会保障制度は4つの柱でできている

社会保障制度の分類(憲法25条を起点に、社会保険・社会福祉・公的扶助・保健医療公衆衛生の4本柱と、それぞれの運営方式)
社会保障制度の分類(憲法25条を起点に、社会保険・社会福祉・公的扶助・保健医療公衆衛生の4本柱と、それぞれの運営方式)
柱 中身 運営方式
社会保険 年金保険・医療保険・介護保険 社会保険方式
社会福祉 障害者福祉など 社会扶助方式
公的扶助 生活保護 社会扶助方式
保健医療・公衆衛生 感染症対策、健康増進など ―

法規でメインに扱うのは、この中の社会保険 → 医療保険のブランチです。図でも医療保険だけ枠が太くなっているのはそのためです。

国試では「社会保障制度に含まれないもの」を選ばせる出題があります。第106回 問78では、生活保護・児童福祉・年金・感染症予防・学校教育の中から選ばせ、正答は学校教育でした。教育は社会保障ではない、という線引きです。

運営方式は2つ:社会保険方式と社会扶助方式

同じ社会保障でも、お金をどう集めているかで2つに分かれます。

  • 社会保険方式:主に加入者が払う保険料が財源。民間の生命保険をイメージすると分かりやすく、「入っている人たちがお金を出し合って、必要になった人に給付する」しくみです。社会保険(年金・医療・介護)がこれにあたります。
  • 社会扶助方式:租税(税金)が財源。みんなから公平に集めた税金を、必要な人に充てます。社会福祉・公的扶助がこれにあたります。

この違いは覚えて終わりではなく、あとで効いてきます。医療保険が社会保険方式である以上、「加入者に高齢者が多い保険は、それだけで財政的に不利になる」という構造問題が生まれます。これが後期高齢者医療制度が作られた理由に直結するので、医療保険制度の全体像の記事で改めて出てきます。

社会保障の財源と給付費

ここも数字が出てくるパートですが、覚えるべきは「だいたいの割合」です。

財源

社会保障財源の内訳(社会保険料・公費負担・その他)
社会保障財源の内訳(社会保険料・公費負担・その他)

令和4(2022)年度の社会保障財源は総額152兆9,922億円で、内訳は次のとおりです(国立社会保障・人口問題研究所「令和4年度 社会保障費用統計」)。

財源 金額 割合
社会保険料 77兆2,894億円 50.5%
公費負担 64兆2,172億円 42.0%
資産収入 5兆7,823億円 3.8%
その他 5兆7,033億円 3.7%

ざっくり「保険料で半分、公費で4割前後」という形です。国民医療費の財源構成(保険料5割・公費4割弱)とよく似た形になっているのが分かると思います。

給付費

社会保障給付費の内訳(年金部門・医療部門・福祉その他)
社会保障給付費の内訳(年金部門・医療部門・福祉その他)

令和4(2022)年度の社会保障給付費は総額137兆8,337億円です。

部門 金額 割合
年金 55兆7,908億円 40.5%
医療 48兆7,511億円 35.4%
福祉その他 33兆2,918億円 24.2%

年金が4割、医療が3割5分、福祉その他が2割強。順番が「年金 > 医療 > 福祉その他」であることだけでも押さえておくと、グラフの読み取り問題で迷いません。

財源の152兆円と給付費の137兆円がぴったり一致しないのは、管理費や運用損益などが間に挟まるためです。「財源のほうが大きい」とだけ理解しておけば十分です。数字は毎年更新されるので、この記事の数字が令和4年度のものである点に注意してください。

この分野の勉強の順番

講義ではここで、以降の学習の道筋が示されています。そのまま記事の並びになっているので、先に地図として見ておきましょう。

  1. 医療保険制度:どんな制度があるのか、その包含関係(医療保険制度の全体像)
  2. 療養担当規則と保険給付:現場ではどんなルールで保険給付が行われているのか(療養担当規則・保険給付)
  3. 公定価格:やったことに対していくら支払われるのか(診療報酬・調剤報酬・薬価基準制度)
  4. 関連する制度:公費負担医療制度と介護保険制度

「制度の枠 → 現場のルール → 値段 → 周辺制度」という順です。バラバラに暗記するのではなく、この流れの中でどこの話をしているのかを意識すると、情報量の多いこの分野でも迷子になりません。

まとめ

  • 社会保障制度の根拠は憲法第25条(生存権)
  • 柱は社会保険・社会福祉・公的扶助・保健医療公衆衛生の4つ。法規のメインは社会保険の中の医療保険
  • 運営方式は社会保険方式(保険料が財源)と社会扶助方式(租税が財源)の2つ
  • 令和4年度の社会保障財源は約153兆円で保険料5割・公費4割、給付費は約138兆円で年金4割・医療3割5分・福祉その他2割強
  • 学校教育は社会保障制度に含まれない(第106回 問78)

次は介護保険制度と介護報酬をまとめて理解するを読んでみてください。

法規を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、法規という科目のほんの一区画です。実際には、薬機法の総則から薬局・製造販売業・医薬品の取扱い、そして社会保障制度までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全26回・約5時間34分。「この省令は誰に向けた基準なのか」「さっき出てきた登場人物が、どこで再登場するのか」が、条文の羅列ではなく流れとして入ってきます。バラバラに覚えていた制度が、1本の線になる感覚です。

法規のマインドマップPDF+解説授業セットは¥9,450。無料のサンプル動画とサンプルPDFがあるので、この「たどる」感覚が自分に合うかどうかは、先に確かめられます。

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