前回の保険薬局・保険薬剤師の療養担当規則まとめと同じマインドマップの、右端のブランチがこの記事のテーマです。療養担当規則は省令でしたが、保険給付は健康保険法そのものに書かれている内容になります。
給付の名前がたくさん並ぶパートですが、①給付の「方法」(どんな形で渡すか)と②給付の「種類」(何を渡すか)の2軸で整理すると、一気に見通しがよくなります。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。
Contents
まず「方法」:現物給付・現金給付・償還払い
| 方法 | 中身 | 例 |
|---|---|---|
| 現物給付 | サービスそのものを給付する | 診察、薬剤の給付 |
| 現金給付 | お金を給付する | 傷病手当金、埋葬料など |
| 償還払い | 患者がいったん支払い、あとで保険者から保険分を受け取る | 療養費 |
日本の医療保険は現物給付が原則です。窓口で一部負担金だけ払えば薬がもらえるのは、残りの分が現物給付として処理されているからです。
償還払いは、たとえばいったん10割を自分で払い、あとから領収書を添えて申請して7割分が戻ってくる、という形。後払いなので、給付の種類としては医療給付の中に位置づけられます。
次に「種類」:医療給付と現金給付
療養の給付(ここが中心)
療養の給付に含まれるのは次のものです。
- 診察
- 薬剤や治療材料の支給
- 処置や手術などの治療
- 居宅での療養上の管理や看護
- 入院やそれに伴う看護
そして、療養の給付を受ける人は一部負担金を支払います。
ここで一番出るのが「療養の給付に含まれないもの」です。とくに入院時食事療養費・入院時生活療養費は療養の給付に含まれません。食事や生活にかかる費用は、療養の給付とは別立ての給付になっています。
第100回 問77では、診察/薬剤又は治療材料の支給/食事療養/処置、手術その他の治療/居宅における療養上の管理 の中から「療養の給付に含まれないもの」を選ばせ、正答は食事療養でした。この作り方はそのまま繰り返されるので、療養の給付の5項目を言えるようにしておくのが最短です。
療養の給付以外の医療給付
| 給付 | 内容 |
|---|---|
| 入院時食事療養費/入院時生活療養費 | 入院中の食事・生活にかかる費用。療養の給付には含まれない |
| 療養費 | 10割払って、あとで保険の分を受け取る(償還払い) |
| 保険外併用療養費 | 混合診療の例外(次の節で詳しく) |
| 高額療養費 | 一部負担金が一定額を超えた場合に、超過分を保険で支払う制度 |
高額療養費について補足すると、たとえば自己負担限度額が8万円の人が、その月に15万円の窓口負担をした場合、超えた7万円が後から戻ってくる、というイメージです。限度額は所得によって決まります。
現金給付
- 傷病手当金
- 出産手当金(健康保険)
- 埋葬料・葬祭費など
葬儀にかかる費用の給付が2つの名前で書かれているのは、制度によって名称が違うからです。健康保険では「埋葬料」、国民健康保険では「葬祭費」と呼ばれます。医療保険制度の全体像で見たとおり、医療給付の中身はどの制度でもほぼ共通だが、現金給付は制度ごとに差がある、という原則がここでも当てはまります。
なお、健康保険法第52条は保険給付の種類を次のように列挙しています。療養の給付並びに入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費及び移送費の支給/傷病手当金/埋葬料/出産育児一時金/出産手当金/家族療養費、家族訪問看護療養費及び家族移送費/家族埋葬料/高額療養費/高額介護合算療養費。条文の並びを見ると、療養の給付と入院時食事療養費が別物として並んでいることがはっきり分かります。
保険外併用療養費:混合診療の例外
ここは独立して問われることが多いので、丁寧に見ておきます。
原則:保険診療の中に保険適用されない医療が混ざると、全体が保険適用外になります(いわゆる混合診療の禁止)。一部だけ自費のはずが、本来なら保険が効く部分まで含めて全額自己負担になってしまう、ということです。
例外:一定のものについては、保険が効く部分は保険で、効かない部分だけ自費で、という併用が認められます。これが保険外併用療養費です。
| 区分 | 具体例 |
|---|---|
| 評価療養 | 先進医療、治験に係る診療、薬機法承認後・保険収載前の医薬品の使用、適応外使用 |
| 患者申出療養 | 患者からの申出を起点とする未承認薬等の使用 |
| 選定療養 | 特別の療養環境(差額ベッド)など |
国試で圧倒的によく出るのは評価療養です。「治験に係る診療」「承認後・保険収載前の医薬品」あたりが狙われます。
なぜ「承認後・保険収載前」という状態が生じるかというと、製造販売承認を受けても、薬価基準に収載されるまでは保険診療で使えないからです。そのすき間を埋めるのが評価療養、という関係になっています。詳しくは薬価基準制度とは?新薬の価格はどう決まるのかで扱います。
国試ではこう問われる
- 第100回 問77:「療養の給付に含まれないのはどれか」→ 正答は食事療養。
- 第110回 問76:「評価療養の対象となるのはどれか」→ 正答は医薬品の治験に係る診療。誤り選択肢は「出産に係る診療」「特別の療養環境(差額ベッド)」「予約診療」「紹介状なしでの特定機能病院の初診」。後ろの3つはいずれも選定療養なので、ここで区別が問われています。
- 第106回 問311:抗がん剤の無償提供プログラムを題材に、「薬剤料以外の医療費が保険外併用療養費制度によって保険給付の対象になる。このプログラムはどれに該当するか」→ 正答は評価療養。問題文自体に混合診療の原則の説明が書かれているので、原則と例外の関係を理解していれば読み解けます。
- 第109回 問311:後期高齢者医療制度の説明で「当該制度の加入者は高額療養費制度を利用できません」が誤り選択肢として登場。高額療養費は後期高齢者医療制度でも使えます。
- 第105回 問149:「被用者保険と国民健康保険とでは、現物給付される医療の内容は異なる」は誤り。医療給付の中身はほぼ共通です。
まとめ
- 給付の方法は現物給付・現金給付・償還払いの3つ。日本の医療保険は現物給付が原則
- 療養の給付の中身は診察/薬剤・治療材料の支給/処置・手術などの治療/居宅での療養上の管理や看護/入院やそれに伴う看護。受ける人は一部負担金を支払う
- 入院時食事療養費・入院時生活療養費は療養の給付に含まれない(頻出)
- そのほかの医療給付に療養費(償還払い)・保険外併用療養費・高額療養費
- 保険外併用療養費は混合診療の例外。区分は評価療養・患者申出療養・選定療養。評価療養に先進医療・治験に係る診療・承認後で保険収載前の医薬品・適応外使用、選定療養に差額ベッド
- 現金給付は傷病手当金・出産手当金・埋葬料(葬祭費)。現金給付は制度によって名称が違う
次は診療報酬・調剤報酬のしくみと薬剤調整料の算定ルールを読んでみてください。
法規を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、法規という科目のほんの一区画です。実際には、薬機法の総則から薬局・製造販売業・医薬品の取扱い、そして社会保障制度までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全26回・約5時間34分。「この省令は誰に向けた基準なのか」「さっき出てきた登場人物が、どこで再登場するのか」が、条文の羅列ではなく流れとして入ってきます。バラバラに覚えていた制度が、1本の線になる感覚です。
法規のマインドマップPDF+解説授業セットは¥9,450。無料のサンプル動画とサンプルPDFがあるので、この「たどる」感覚が自分に合うかどうかは、先に確かめられます。