社会保障制度と医療経済

診療報酬・調剤報酬のしくみと薬剤調整料の算定ルール【薬剤師国家試験】

健康保険法の保険給付で「何を給付するか」を見ました。次は「やったことに対していくら支払われるか」です。日本の医療保険では、この値段が公定価格として決められています。公定価格には診療報酬・介護報酬・薬価基準制度の3つがあり、この記事ではそのうち診療報酬(と調剤報酬)を扱います。

薬局で働き始めると毎月向き合うことになる世界ですが、国試で問われるのは制度の骨格です。細かい点数を覚える必要はありません。

公定価格のマインドマップ(診療報酬・介護報酬・薬価基準制度)
公定価格のマインドマップ(診療報酬・介護報酬・薬価基準制度)

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。

診療報酬制度の概要

保険医療機関や保険薬局での患者の医療費は、厚生労働大臣が定める医科(歯科)診療報酬点数表・調剤報酬点数表によって点数に換算して請求し、保険者から支払いを受けます。これらの点数表は健康保険法に基づく厚生労働省告示です。

1点=10円という換算も、そのまま出題されたことがあります。

点数表の種類

支払い方式 点数表
出来高払い 医科診療報酬点数表/歯科診療報酬点数表/調剤報酬点数表
包括払い 診断群分類(DPC)点数表

出来高払いは「やったことを一つひとつ積み上げて請求する」方式、包括払いは「この病気でこの治療なら一括でいくら」とあらかじめ決めておく方式です。包括払いは主に病院で使われ、決められた範囲内でいかに効率よく治療するか、という医療の効率化を促すねらいがあります。

お金はどう流れるのか

診療報酬の流れ(被保険者が保険者に保険料を支払い、医療機関・薬局が診療・調剤を行い、被保険者が一部負担金を支払う。医療機関・薬局は審査支払機関に医療費を請求し、審査支払機関が保険者に審査済請求書を送って支払いを受け、医療機関・薬局に支払う)
診療報酬の流れ(被保険者が保険者に保険料を支払い、医療機関・薬局が診療・調剤を行い、被保険者が一部負担金を支払う。医療機関・薬局は審査支払機関に医療費を請求し、審査支払機関が保険者に審査済請求書を送って支払いを受け、医療機関・薬局に支払う)

図の番号の順に追ってみましょう。

  1. 被保険者(患者)が保険者に保険料を払う
  2. 医療機関・薬局が診療・調剤を行う
  3. 患者が一部負担金を払う
  4. 医療機関・薬局が審査支払機関に医療費を請求する
  5. 審査支払機関が審査済の請求書を保険者に送る
  6. 保険者が審査支払機関に支払う
  7. 審査支払機関から医療機関・薬局に支払われる

審査支払機関は次の2つです。

  • 社会保険診療報酬支払基金(被用者保険の分)
  • 国民健康保険団体連合会(国民健康保険・後期高齢者医療の分)

請求先は保険者ではなく審査支払機関、という点がよく問われます。「報酬の請求は厚生労働大臣に対して行う」という誤り選択肢も出たことがあります。

請求手続き

  • 医療費の請求は月単位で行う
  • 薬局が提出するのは次の2つ
提出書類 中身
調剤報酬請求書 その月の合計額を記載したもの(「いくらください」の総額)
調剤報酬明細書(レセプト) 患者ごとに、何をしたかを記載した明細

「請求書=合計、レセプト=患者ごとの明細」と対にして覚えてください。第97回 問319では「調剤報酬明細書は、月毎にまとめて記載しなければならない」という形で月単位であることが問われています。

改定の手続き

  • 厚生労働大臣が、中医協(中央社会保険医療協議会)の意見を聞いて改定する
  • 各点数表は2年ごとに改定される

診療報酬改定のたびに薬局や病院が慌ただしくなるのは、点数の付き方が変わって収益構造が動くからです。「中医協」「2年ごと」の2点はそのまま出題ポイントになります。

調剤報酬の中身

調剤報酬の構成(調剤報酬=調剤技術料(調剤基本料・薬剤調整料)+薬学管理料(服薬管理指導料・かかりつけ薬剤師指導料・在宅患者訪問薬剤管理指導料など)+薬剤料+(特定保険医療材料))
調剤報酬の構成(調剤報酬=調剤技術料(調剤基本料・薬剤調整料)+薬学管理料(服薬管理指導料・かかりつけ薬剤師指導料・在宅患者訪問薬剤管理指導料など)+薬剤料+(特定保険医療材料))

調剤報酬 = 調剤技術料 + 薬学管理料 + 薬剤料 +(特定保険医療材料)

区分 主な中身
調剤技術料 調剤基本料、薬剤調整料
薬学管理料 服薬管理指導料、かかりつけ薬剤師指導料、在宅患者訪問薬剤管理指導料など
薬剤料 薬そのものの代金(薬価に基づく)
特定保険医療材料 該当するものがあるとき

構成そのものと、それぞれの中身の代表例が問われます。第106回 問79では「保険薬局の調剤報酬に関する記述のうち正しいのはどれか」で、正答は「薬学管理料が含まれる」でした。

薬剤調整料の算定ルール

調剤技術料に含まれる薬剤調整料には、よく出る算定ルールがあります。

  • 内服薬は「1剤」につき算定する
  • 「1剤」とは、服用時点が同一であるもの。投与日数は関係ない
  • 算定できるのは3剤まで

たとえば朝食後・夕食後・就寝前・頓服の4つの服用時点があっても、算定は3剤分までです。「1剤=1つの薬」ではなく「1剤=同じ服用時点でまとめた1グループ」という点を取り違えないようにしてください。

名称の変更に注意。「薬剤調整料」は令和4年度の調剤報酬改定で、それまでの「調剤料」が再編されてできた区分です。第111回より前の過去問には「調剤料」という旧称で出題されているものがあります。過去問を解いていて「調剤料」が出てきたら、いまの薬剤調整料にあたる部分だと読み替えてください。

国試ではこう問われる

  • 第109回 問148(健康保険制度に基づく調剤報酬):正しい記述として「調剤報酬点数表は、保険薬局における保険調剤に関する算定の要件と点数を定めている」「地域医療への貢献を評価した加算が設けられている」。誤り選択肢に「調剤報酬改定は、3年に1度行われる」(正しくは2年に1度)「健康保険と国民健康保険では、それぞれ異なる調剤報酬点数表を用いている」(同じ点数表)。
  • 第106回 問79:正答は「薬学管理料が含まれる」。誤り選択肢に「薬剤料は薬剤の納入価格で算定する」(薬価で算定)「調剤基本料は、全ての保険薬局で同じ点数である」「報酬の請求は厚生労働大臣に対して行う」「薬局で自ら点数を定めて請求できる」。
  • 第98回 問316:「調剤報酬を決定する際、厚生労働大臣は中央社会保険医療協議会の意見を聴く」「調剤報酬点数表は、報酬額が点数で示されており、1点は10円である」。
  • 第103回 問315:請求・審査・支払いの流れの図問題。被保険者・保険薬局・保険者・支払基金(国保連合会)の4者の間で、どの矢印が「調剤報酬の請求」かを選ばせます。上の図の流れがそのまま出ていると思ってください。

点数の暗記ではなく、「誰が誰にいくら、どういう順番で」を押さえるのが得点源です。

まとめ

  • 医療費は厚生労働大臣が定める点数表で点数に換算して請求する。健康保険法に基づく厚生労働省告示、1点=10円
  • 点数表には出来高払い(医科・歯科・調剤)と包括払い(DPC点数表)がある
  • 請求先は審査支払機関(社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険団体連合会)。請求は月単位
  • 薬局の提出書類は調剤報酬請求書(合計)と調剤報酬明細書=レセプト(患者ごとの明細)
  • 改定は厚生労働大臣が中医協の意見を聞いて、2年ごと
  • 調剤報酬 = 調剤技術料(調剤基本料・薬剤調整料)+ 薬学管理料 + 薬剤料 +(特定保険医療材料)
  • 薬剤調整料は内服薬について1剤ごとに算定。1剤=服用時点が同一のもの、投与日数は無関係、算定は3剤まで

次は薬価基準制度とは?新薬の価格はどう決まるのかを読んでみてください。

法規を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、法規という科目のほんの一区画です。実際には、薬機法の総則から薬局・製造販売業・医薬品の取扱い、そして社会保障制度までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全26回・約5時間34分。「この省令は誰に向けた基準なのか」「さっき出てきた登場人物が、どこで再登場するのか」が、条文の羅列ではなく流れとして入ってきます。バラバラに覚えていた制度が、1本の線になる感覚です。

法規のマインドマップPDF+解説授業セットは¥9,450。無料のサンプル動画とサンプルPDFがあるので、この「たどる」感覚が自分に合うかどうかは、先に確かめられます。

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