医療保険制度の全体像で制度の枠組みを押さえたので、今度は現場が実際に守っているルールに入ります。それが療養担当規則です。
薬局で働くと毎日この規則の中で仕事をすることになりますし、国試でもよく出ます。「施設に対するルール」と「人に対するルール」に分けて整理するのが、この単元を崩さずに覚えるコツです。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。
現場が従う2つの規則
まず「規則」という言葉ですが、これは省令のことです。療養担当規則は健康保険法を根拠とする厚生労働省令で、健康保険法の添付ファイルのような立ち位置にあります。第101回 問323では「この規則の根拠となっている法律はどれか」が問われ、正答は健康保険法でした(医療法でも薬剤師法でもありません)。
現場が従う規則は2つあります。
| 通称 | 正式名称 | 対象 |
|---|---|---|
| 療担規則 | 保険医療機関及び保険医療養担当規則 | 医師系 |
| 薬担規則 | 保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則 | 薬剤師系 |
どちらも「施設(保険医療機関/保険薬局)」と「人(保険医/保険薬剤師)」の両方を対象にしているのがポイントです。内容がよく似ているので、マインドマップでも施設系のブランチと人系のブランチに振り分けてあります。この記事も、施設 → 人の順に見ていきます。
施設系:保険医療機関・保険薬局
指定のしくみ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 指定の申請 | 開設者が厚生労働大臣(地方厚生局長に委任)に申請する |
| 要件 | 原則として指定される。指定を拒否するときは地方社会保険医療協議会に諮問する |
| 有効期間 | 原則6年ごとに更新 |
| 指定の辞退 | 1ヶ月以上の予告期間を設ける |
6年ごとの更新が必要、という点を強く意識してください。このあと出てくる保険薬剤師の登録には有効期限がないので、施設は更新あり・人は更新なしという対比が試験のねらい目になります。
なお、薬機法の薬局開設許可も6年ごとの更新、販売業の許可も6年でした。「6年」は法規の中で何度も出てくる数字なので、まとめて覚えておくと効率的です。
保険薬局の責務
担当の範囲
- 薬剤、治療材料の支給
- 居宅における薬学的管理・指導
第99回 問75では、この「居宅における薬学的管理及び指導」の穴埋めが出題されています。
やってはいけないこと
- 保険医療機関と一体的な構造・一体的な経営をしてはならない
- 誘引の対償として金品等を保険医療機関・保険医に供与することの禁止(いわゆる賄賂の禁止)。「うちに患者さんを紹介してください」とお金を渡すのはダメ、ということです
実務上のルール
- 処方箋の確認:保険医等が交付した処方箋であること、処方箋や被保険者証等で療養の給付を受ける資格があるかを確認する
- 一部負担金の支払いを受ける
- 正当な理由がない限り、領収書・明細書を無償で交付する
- 処方箋、調剤録を3年間保存する
- 後発医薬品の備蓄に関する体制や、調剤に必要な体制の確保に努める
保険者への通知
次のいずれかにあたる場合は、意見を付して全国健康保険協会または当該健康保険組合に通知しなければなりません。
- 患者が正当な理由なく療養に関する指示に従わないとき
- 不正行為により療養の給付を受け、または受けようとしたとき
人系:保険医・保険薬剤師
登録のしくみ
健康保険法第64条に、「保険医療を担当する保険医または保険薬剤師は、厚生労働大臣(地方厚生局長等に委任)の登録を受けなければならない」と定められています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 登録の申請 | (歯科)医師・薬剤師が厚生労働大臣へ申請する |
| 有効期限 | 無期限。保険薬剤師の登録に更新はない |
| 登録の抹消 | 1ヶ月以上の予告期間を設ける |
ここは絶対に落とさないでください。保険薬局の指定は6年ごとの更新が必要ですが、保険薬剤師の登録は更新不要です。第98回 問148では「保険薬剤師の登録の有効期間は、6年である」が誤り選択肢として出題されています。
もう1つ、薬剤師名簿への登録(薬剤師免許)と保険薬剤師の登録は別物です。第104回 問71には「薬剤師名簿への登録を行えば、自動的に保険薬剤師として登録される」という誤り選択肢がありました。保険調剤を行うには別途の登録が必要です。
保険薬剤師の責務
調剤にあたって
- 患者の服薬状況および薬剤服用歴を確認しなければならない
- 後発医薬品:保険医等が後発医薬品への変更を認めているときは、患者に対して後発医薬品の説明をし、調剤するよう努める
使用医薬品
- 原則として、厚生労働大臣の定める医薬品以外を調剤してはならない(=薬価基準に収載されている医薬品。薬価基準制度の記事につながります)
調剤録の記載
- 遅滞なく、調剤録に当該調剤に関する必要な事項を記載する
- 調剤済みとなった処方箋または薬剤服用歴等に必要な事項を記入したもので代えることができる
保険医の責務
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 誘導の禁止 | 特定の保険薬局への誘導の禁止(施設系の「誘引の対償の禁止」と対になるルール) |
| 診察・投薬 | 後発医薬品の使用を考慮し、患者が後発医薬品を選択しやすくするための対応に努める |
| 処方箋の交付 | 使用期間は原則、交付の日を含めて4日以内 |
処方箋の使用期間「交付の日を含めて4日以内」は必ず覚えてください。「交付の日の翌日から」ではありません。実際の処方箋の様式にも「特に記載のある場合を除き、交付の日を含めて4日以内に保険薬局に提出すること」と印字されています。
後発医薬品については、施設系でも人系でも、保険薬剤師でも保険医でも、とにかく繰り返し出てきます。国が医療費削減をどれだけ前面に出しているかが条文から透けて見えるところです。
国試ではこう問われる
- 第100回 問144(療養担当規則):正しい記述として「保険薬局は、後発医薬品の備蓄に関する体制の確保に努めなければならない」「患者が不正行為により療養の給付を受けたときは、意見を付して全国健康保険協会又は当該健康保険組合に通知しなければならない」。誤り選択肢に「保険医療機関と一体的な経営を行うよう努めなければならない」(逆。禁止されています)。
- 第108回 問322(保険薬局の指定にあたっての留意点):正答は「当該医療機関と経営主体が同一とならないよう配慮する」。誤り選択肢は「専用通路を設置し、一体的な構造にする」「対価を支払って患者を誘導してもらう」「紹介された患者数に応じて紹介料を支払う」「初回利用の患者は一部負担金の支払いを免除する」。禁止事項がそのまま並んでいます。
- 第97回 問318:「保険薬局は、Aさんの経済状況を考慮して一部負担金を免除することができる」は誤り。一部負担金は必ず受け取るのがルールです。
- 第110回 問313:調剤録に関する出題。「薬局開設者は、薬局に調剤録を備えなければならない」「保険薬剤師が調剤を行う場合は、患者の服薬状況及び薬剤服用歴を確認しなければならない」が正しい記述として問われています。
まとめ
- 療養担当規則は健康保険法を根拠とする省令。医師系の療担規則と薬剤師系の薬担規則の2本立て
- 施設:指定は開設者が厚生労働大臣に申請。拒否は地方社会保険医療協議会に諮問。6年ごとに更新、辞退は1ヶ月以上の予告
- 保険薬局の責務:担当範囲は薬剤・治療材料の支給と居宅における薬学的管理・指導。一体的構造・経営の禁止、誘引の対償の禁止、一部負担金は必ず受け取る、領収書・明細書の無償交付、処方箋・調剤録は3年間保存
- 人:保険薬剤師の登録は厚生労働大臣へ申請。有効期限なし=更新不要。抹消は1ヶ月以上の予告。薬剤師免許とは別の登録
- 保険薬剤師は服薬状況・薬剤服用歴の確認、厚生労働大臣の定める医薬品以外は調剤しない、調剤録は遅滞なく記載
- 保険医は特定の保険薬局への誘導禁止、処方箋の使用期間は交付の日を含めて4日以内
次は健康保険法の保険給付を整理(現物給付・現金給付・償還払い)を読んでみてください。
法規を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、法規という科目のほんの一区画です。実際には、薬機法の総則から薬局・製造販売業・医薬品の取扱い、そして社会保障制度までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全26回・約5時間34分。「この省令は誰に向けた基準なのか」「さっき出てきた登場人物が、どこで再登場するのか」が、条文の羅列ではなく流れとして入ってきます。バラバラに覚えていた制度が、1本の線になる感覚です。
法規のマインドマップPDF+解説授業セットは¥9,450。無料のサンプル動画とサンプルPDFがあるので、この「たどる」感覚が自分に合うかどうかは、先に確かめられます。