公定価格の3つ目、薬価基準制度です。診療報酬・調剤報酬のしくみが「行為の値段」だったのに対して、こちらは「薬そのものの値段」を決める制度になります。
薬剤師国家試験では、薬価基準の2つの性格と新薬の薬価算定方式が繰り返し問われます。ここは図の形で覚えてしまうのが早いので、算定方式のフローチャートを頭に焼き付けてしまいましょう。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。
Contents
薬価基準には2つの性格がある
| 性格 | 意味 |
|---|---|
| 品目表 | 保険医療で使える薬のリスト。原則として、製造販売承認を受けても収載されるまで保険では使えない |
| 価格表 | 薬剤費算定の基礎となる価格 |
「使えるかどうか」と「いくらか」の両方を決めているのが薬価基準です。
ここで、健康保険法の保険給付で出てきた保険外併用療養費の評価療養に「薬機法承認後・保険収載前の医薬品」という項目があったのを思い出してください。あれは薬価基準に収載されていないから保険で使えない、という状態を指しています。制度同士がここでつながります。
また、療養担当規則の保険薬剤師の責務にあった「原則、厚生労働大臣の定める医薬品以外は調剤してはならない」も、この薬価基準に収載されている医薬品を指しています。
薬価基準に収載されるまで
手順
- 製造販売承認を取得する
- 製薬企業が厚生労働省に申請する
- 中医協(中央社会保険医療協議会)の意見を聞いて、厚生労働大臣が収載する
診療報酬の改定と同じく、ここでも中医協が登場します。
収載時期
- 新薬は承認後、原則60日以内(通常、年4回)
収載されるまでの間は保険で使えず、自費または評価療養の扱いになってしまうため、速やかに収載する必要がある、という理屈です。「60日」という数字はそのまま出題されます。
品目の収載方法
| 方式 | 対象 | |
|---|---|---|
| 原則 | 銘柄別収載方式 | 販売名ごとに収載する |
| 例外 | 統一名収載方式 | 日本薬局方収載品の一部、生薬原末、生物学的製剤など |
原則は銘柄別、と押さえておけば十分です。
新薬の薬価はどう決まるか

まず類似薬があるかないかで2つに分かれます。
類似薬があるもの:類似薬効比較方式
| 方式 | 対象 | 価格の決まり方 |
|---|---|---|
| 類似薬効比較方式(Ⅰ) | 類似の既存薬が少ない(新規性に富む)もの | 類似薬の薬価を基礎に、補正加算を上乗せできる |
| 類似薬効比較方式(Ⅱ) | 類似の既存薬が多い(新規性に乏しい)もの | 類似薬のうち最も低い1日薬価に合わせられる |
(Ⅱ)は補正加算がつきません。「似たような薬がもう十分あるのだから、一番安いものに合わせてください」という扱いです。(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは、加算がつくかどうかと覚えるのが実戦的です。
類似薬がないもの:原価計算方式
製造原価・販売費・営業利益などを積算して算定します。こちらも補正加算の対象です。
補正加算の種類
画期性加算・有用性加算・市場性加算・特定用途加算・小児加算・先駆加算など。「新しさ」「使いみちの希少性」「開発の難しさ」を評価して価格を上乗せするしくみです。
最後に外国平均価格調整
上記の方式で算出した価格に対して、最後に外国平均価格調整をかけて価格が確定します。日本の薬価が諸外国と極端に離れないように調整する手続きです。
後発医薬品・バイオ後続品の薬価
| 区分 | 原則 |
|---|---|
| 後発医薬品 | 先発医薬品の薬価の50% |
| バイオ後続品 | 先発品の70% |
バイオ後続品のほうが高いのは、製造が難しく開発コストが大きいためです。「後発品5割、バイオ後続品7割」とセットで覚えてください。
薬価改定
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 薬価基準に収載されている全医薬品 |
| 時期 | 原則2年ごとの診療報酬改定に合わせて。中間の年も薬価差が大きいものは改定あり |
| 方式 | 市場実勢価格加重平均値調整幅方式 |
中間年改定について。マインドマップは「原則2年ごと、中間の年も薬価差が大きいと改定あり」と押さえています。実際に令和3(2021)年度から、診療報酬改定のない中間年にも薬価改定(中間年改定)が実施されるようになりました。「原則2年ごと」という骨格を押さえたうえで、「いまは中間年にも行われている」と補足しておきましょう。
なぜ改定するのか
薬局が薬を仕入れるとき、卸から買う価格(市場実勢価格)は、薬価より安いのが普通です。この差が薬価差益になります。差が大きくなりすぎると「保険から支払われる金額が実態より高すぎる」ということになるので、実勢価格に合わせて薬価を下げるわけです。
市場実勢価格加重平均値調整幅方式
名前が長いだけで、やっていることは名前のとおりです。
- 薬価調査:卸売販売業者から市場実勢価格を調査する
- 加重平均を計算する
- 調整幅を加える
加重平均の計算例を見てみましょう。
- S社:1個100円で5万個販売
- M社:1個110円で1万個販売
加重平均 = (100円 × 5万個 + 110円 × 1万個) ÷ 6万個 ≒ 101.6円
ここに調整幅を加えたものが新しい薬価になります。単純平均(105円)ではなく、数量で重みづけした平均である点がポイントです。
国試ではこう問われる
薬価基準制度は、理論問題で繰り返し出題される定番テーマです。
- 第102回 問147:正しい記述として「薬価とは、国により決定される医薬品の公定価格である」「医療用医薬品であっても、薬価基準に収載されていないものがある」。誤り選択肢に「薬価基準は、医療法に基づく厚生労働大臣告示として公表される」(正しくは健康保険法)「新医薬品の薬価算定は、原価計算方式を原則とする」(原則は類似薬効比較方式)「薬価改定は、5年ごとに行うよう定められている」。
- 第105回 問150:正しい記述として「薬価基準は、保険医療で使用できる品目表と価格表の2つの性格を持つ」「新医薬品の薬価は、類似薬がある場合は、その薬価を参考に決められる」。誤り選択肢に「製造販売の承認から遅くとも30日以内に薬価基準に収載される」「既収載品の薬価は、年間販売量が多いものに限り定期的に見直される」「後発医薬品の薬価は、製造販売業者が自由に決められる」。
- 第108回 問149:正しい記述として「医療用医薬品として承認された医薬品であっても、薬価基準に収載されていないものがある」「新医薬品の薬価算定において、医薬品の有用性や市場性の観点で加算される制度がある」。
- 第107回 問77:製造業 → 製造販売業 → 卸売販売業 → 保険薬局 → 患者 という流通の図で、「薬価どおりの価格による取引はどれか」。薬局から患者に渡る段階だけが薬価で、卸から薬局へは市場実勢価格での取引です。
「原価計算方式が原則」という誤り選択肢が複数回出ているので、原則は類似薬効比較方式、類似薬がないときだけ原価計算方式という順序をしっかり押さえてください。
まとめ
- 薬価基準には品目表(保険で使える薬のリスト)と価格表(薬剤費算定の基礎)の2つの性格がある。根拠は健康保険法
- 収載は製造販売承認 → 企業が厚生労働省に申請 → 中医協の意見を聞いて厚生労働大臣が収載。新薬は承認後、原則60日以内
- 収載方法は原則銘柄別収載方式、例外が統一名収載方式
- 新薬の算定は、類似薬があれば類似薬効比較方式(Ⅰ)(補正加算あり)/(Ⅱ)(最も低い1日薬価に合わせる)、類似薬がなければ原価計算方式。最後に外国平均価格調整
- 後発医薬品は先発品の50%、バイオ後続品は70%が原則
- 薬価改定は収載全品目が対象。原則2年ごと(令和3年度からは中間年にも実施)、方式は市場実勢価格加重平均値調整幅方式
次は医薬分業の歴史とかかりつけ・健康サポート・地域連携・専門医療機関連携薬局を1本で整理を読んでみてください。
法規を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、法規という科目のほんの一区画です。実際には、薬機法の総則から薬局・製造販売業・医薬品の取扱い、そして社会保障制度までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全26回・約5時間34分。「この省令は誰に向けた基準なのか」「さっき出てきた登場人物が、どこで再登場するのか」が、条文の羅列ではなく流れとして入ってきます。バラバラに覚えていた制度が、1本の線になる感覚です。
法規のマインドマップPDF+解説授業セットは¥9,450。無料のサンプル動画とサンプルPDFがあるので、この「たどる」感覚が自分に合うかどうかは、先に確かめられます。