毒物及び劇物取締法

毒物及び劇物取締法:営業者登録から譲渡手続きまで【薬剤師国家試験】

「薬学と社会」の最後の法律、毒物及び劇物取締法(毒劇法)です。

この法律が扱うのは医薬品ではないものです。シアン化水素、ヒ素、アンモニア、水酸化ナトリウム ── 工業用や農業用の薬品が中心で、薬局の日常業務にはあまり出てきません。それでも国家試験では毎年のように出題されます。しかも、毒薬・劇薬(薬機法)と名前が似ているせいで取り違えやすく、そこをわざと狙ってくる問題が多いのが特徴です。

この記事では登録から譲渡手続きまで、次の記事で表示・保管・廃棄・事故対応を扱います。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。

マインドマップで見る「毒物及び劇物取締法」

毒物及び劇物取締法のマインドマップ(規制対象物質・取扱者と取扱施設・譲渡手続き・交付制限・事故盗難の措置・情報提供・廃棄・取扱保管管理・特別な規制)
毒物及び劇物取締法のマインドマップ(規制対象物質・取扱者と取扱施設・譲渡手続き・交付制限・事故盗難の措置・情報提供・廃棄・取扱保管管理・特別な規制)

規制対象物質

区分 例
毒物 シアン化水素、ヒ素 など
特定毒物(毒物の中で特に強いもの) 四アルキル鉛 など
劇物 アンモニア、水酸化ナトリウム など

物質名そのものを細かく覚える必要はありません。ただし特定毒物という区分があること、その例が四アルキル鉛であることは押さえておきましょう。

特定毒物は「使える人」が限られる

特定毒物には、通常の毒物より一段強い規制がかかります。

特定毒物を使用できるのは、毒物劇物の製造業者と特定毒物研究者。 ただし、特定毒物使用者が品目ごとに政令で定める用途に供する場合は使用できる。

特定毒物研究者は、都道府県知事の許可を受けた人で、学術研究のために特定毒物を扱えます。ここは選択肢のすり替えに使われるので要注意です。

  • 第111回 問147では「特定毒物を使用することができるのは、毒物劇物取扱責任者又は特定毒物使用者である」という誤りの選択肢が出ています(正しくは特定毒物研究者)。
  • 第101回 問145では「特定毒物研究者は、特定毒物を学術研究以外の用途で使用することができる」という誤りの選択肢が出ています。
  • 第109回 問146では「特定毒物使用者は、特定毒物を品目ごとに政令で定める用途以外の用途に供してはならない」という正しい記述が出ています。

「研究者」と「使用者」と「取扱責任者」の3つが入れ替えられる、と覚えておいてください。

毒物劇物営業者と登録

営業者は3種類

製造業・輸入業・販売業の3つをまとめて毒物劇物営業者といいます。

業の種類 登録の単位 登録先 有効期間
製造業 製造所ごと 都道府県知事 5年
輸入業 営業所ごと 都道府県知事 5年
販売業 店舗ごと 都道府県知事等 6年

毒物又は劇物の製造業又は輸入業の登録は、5年ごとに、販売業の登録は、6年ごとに、更新を受けなければ、その効力を失う。(毒物及び劇物取締法 第4条)

製造系が5年、販売系が6年。前の記事で出てきた向精神薬取扱者の免許(製造系5年・販売系6年)とまったく同じ数字です。2つセットで覚えれば効率がいいところです。

第111回 問147にも「毒物劇物販売業者の登録の有効期間は6年である」という正しい記述が出ています。

販売業は3種類

販売業の種類 扱える範囲
一般販売業 全部OK
農業用品目販売業 農業用の品目のみ
特定品目販売業 特定の品目のみ(アンモニアなど)

一般販売業がいちばん上位で、下の2つは扱える品目が絞られている、という構造です。なお、一般販売業の登録にあたって品目を登録する必要はありません(全部扱えるので当然です)。第111回 問147では、この点が「毒物又は劇物の一般販売業の登録にあたっては、販売しようとする毒物又は劇物の品目を登録しなければならない」という誤りの選択肢になっています。

毒物劇物取扱責任者

原則:店舗ごとに専任で1人

毒物劇物営業者は、毒物又は劇物を直接に取り扱う製造所、営業所又は店舗ごとに、専任の毒物劇物取扱責任者を置かなければならない。(毒物及び劇物取締法 第7条)

この条文はほぼそのままの形で出題されます。第109回 問146でも正しい記述として登場しました。「直接に取り扱う」「ごとに」「専任の」という3つの修飾がポイントです。

資格要件

  • 薬剤師
  • 応用化学に関する学課を修了した者
  • 都道府県知事が行う毒物劇物取扱者試験の合格者

薬剤師はそのまま資格を満たします。なお、18歳未満の者は取扱責任者になれません。

例外:1人で兼ねてよい場合

毒物劇物取扱責任者の例外(製造業の建物と販売業の建物が隣接している場合は、白衣を着た担当者1人で兼任できる)
毒物劇物取扱責任者の例外(製造業の建物と販売業の建物が隣接している場合は、白衣を着た担当者1人で兼任できる)
  • 業の種類が複数あり、建物が隣接している場合(例:製造業と販売業が隣どうし)→ 1人でOK
  • 販売業の種類が複数あり、同一店舗にある場合(例:農業用品目販売業と特定品目販売業が同じ店舗)→ 1人でOK

どちらも「物理的に同じ場所なら、わざわざ人を分ける必要はない」という常識的な例外です。

届出は30日以内

取扱責任者を置いたときや変更したときは、30日以内に氏名を届け出る。

「30日以内」という数字は、麻薬の調剤済麻薬廃棄届(30日以内)と同じです。法規では30日がよく出てくるので、まとめて覚えておくと楽になります。

譲渡手続き

流れを図で押さえる

毒物劇物の譲渡手続きの流れ(製造業者・輸入業者から販売業者へは書面の保存のみ、販売業者から一般人へは書面と押印が必要)
毒物劇物の譲渡手続きの流れ(製造業者・輸入業者から販売業者へは書面の保存のみ、販売業者から一般人へは書面と押印が必要)

毒物劇物営業者(製造業者・輸入業者・販売業者)という四角い枠を意識してください。この枠の中どうしか、枠から外に出るかで手続きが変わります。

相手 必要なもの
営業者 → 営業者 書面の保存のみ
営業者 → 営業者以外(一般人など) 書面 + 押印

書面の記載事項

毒物・劇物の名称、数量、販売または授与の年月日、譲受人の氏名・職業・住所

保存は5年間

譲渡人は、この書面を販売または授与の日から5年間保存しなければならない。(毒物及び劇物取締法 第14条)

ここが法規全体の大例外です。前の記事でやったとおり、譲受証・譲渡証の類は原則2年間保存。毒物劇物だけが5年なのです。

実際、第101回 問145では「毒物劇物営業者は、毒物又は劇物の譲渡に係る書面を、販売又は授与の日から10年間保管しなければならない」という誤りの選択肢が出ています。数字をずらして聞いてくるので、5年という値を正確に覚えておく必要があります。

対象 保存期間
麻薬・覚醒剤・覚醒剤原料・毒薬劇薬の譲渡関係書類 2年
毒物・劇物の譲渡書面 5年

年数の全体像は法規頻出「保存期間・年数」まとめにまとめてあります。

交付制限:18歳未満

毒物劇物営業者は、毒物又は劇物を18歳未満の者その他一定の者には交付してはならない。(毒物及び劇物取締法 第15条)

ここが毒薬・劇薬(薬機法)との最大の引っかけです。

法律 対象 交付制限
薬機法 毒薬・劇薬 14歳未満
毒物及び劇物取締法 毒物・劇物 18歳未満

毒劇法のほうが規制が厳しい、という向きも一緒に覚えてください。講義では覚え方のイメージとして「シンナー遊び → 暴走族 → 高校生」で18歳を連想する、という話をしています。厳密な理屈ではありませんが、どちらが14でどちらが18かを取り違えないための引っかかりとしては十分です。

第111回 問147では「毒物劇物営業者は、毒物又は劇物を18歳未満の者に交付してはならない」が正しい記述として出ています。

引火性・発火性・爆発性のある劇物は身分確認

引火性、発火性または爆発性のある劇物を交付するときは、原則として身分証などで譲受人の氏名・住所を確認する。

第109回 問146では「興奮、幻覚、麻酔作用を有する毒物又は劇物を交付する場合、その交付を受ける者の氏名及び住所を確認しなければならない」という選択肢が出ています。条文上、交付時の確認義務がかかるのは引火性・発火性・爆発性のほうです。どちらの性質に確認義務が付くのかまで区別しておきましょう。

特別な規制(みだりな所持・摂取の禁止)

この法律には、通常の営業規制とは別に、乱用を防ぐための規定が置かれています。

対象 物質の例 規制の中身
興奮・幻覚・麻酔の作用があるもの トルエン、シンナー、接着剤 みだりに摂取・吸入し、またはこれらの目的で所持してはならない
引火性・発火性・爆発性のあるもの ナトリウム、ピクリン酸 正当な理由なく所持してはならない

物質名は深追いしなくて構いませんが、トルエンとナトリウム・ピクリン酸がどちらのグループかは押さえておきましょう。第109回 問146では「引火性、発火性又は爆発性を有し、業務その他正当な目的以外での所持が認められないものとして、トルエンが指定されている」という選択肢が出ています。トルエンは興奮等の作用のほうに指定されている物質です。

まとめ

  • 毒物劇物営業者は製造業・輸入業・販売業。登録は製造・輸入=5年、販売=6年で更新
  • 販売業は一般販売業(全部OK)・農業用品目販売業・特定品目販売業の3種類。一般販売業に品目登録は不要
  • 特定毒物を使用できるのは製造業者と特定毒物研究者(特定毒物使用者は政令で定める用途のみ)
  • 取扱責任者は直接取り扱う製造所・営業所・店舗ごとに専任で。建物隣接・同一店舗なら1人でOK
  • 取扱責任者の資格は薬剤師・応用化学の学課修了・毒物劇物取扱者試験の合格者。届出は30日以内
  • 譲渡は営業者間=書面のみ、営業者以外へ=書面+押印。書面は5年間保存(法規全体の例外)
  • 交付制限は18歳未満。毒薬劇薬(薬機法)は14歳未満と取り違えない
  • 引火性・発火性・爆発性の劇物は身分確認。トルエンは興奮等の作用のグループ

次は毒物及び劇物取締法:表示・保管・廃棄・事故時の対応まとめを読んでみてください。表示の色は毎年のように問われるところです。

法規を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、法規という科目のほんの一区画です。実際には、薬機法の総則から薬局・製造販売業・医薬品の取扱い、そして社会保障制度までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全26回・約5時間34分。「この省令は誰に向けた基準なのか」「さっき出てきた登場人物が、どこで再登場するのか」が、条文の羅列ではなく流れとして入ってきます。バラバラに覚えていた制度が、1本の線になる感覚です。

法規のマインドマップPDF+解説授業セットは¥9,450。無料のサンプル動画とサンプルPDFがあるので、この「たどる」感覚が自分に合うかどうかは、先に確かめられます。

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