管理薬に関する規制(麻薬・覚せい剤など)

大麻草栽培規制法とあへん法をまとめて整理(麻薬シリーズ最終回)【薬剤師国家試験】

麻薬関係の最終回です。ここまで麻薬の定義・免許・輸出入と譲渡譲受・現場実務と、麻薬及び向精神薬取締法(麻向法)を4本に分けて見てきました。

今回扱うのは、その麻向法と隣り合っている大麻草の栽培の規制に関する法律(大麻草栽培規制法)とあへん法です。どちらも「麻薬そのもの」ではなく「麻薬のもとになる植物」を規制する法律で、出題量はそれほど多くありません。ポイントを絞ってさっと片付けましょう。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。

マインドマップで見る「麻薬関係」

麻薬関係のマインドマップ(令和6年12月施行の大改正・麻薬及び向精神薬取締法・大麻草栽培規制法・あへん法)
麻薬関係のマインドマップ(令和6年12月施行の大改正・麻薬及び向精神薬取締法・大麻草栽培規制法・あへん法)

大麻草の栽培の規制に関する法律

法律の名前と目的

2024年(令和6年)12月12日の改正で、旧「大麻取締法」が「大麻草の栽培の規制に関する法律」(略称:大麻草栽培規制法)に改称されました。改正の経緯は麻薬の定義の記事で詳しく扱っています。

この法律は、大麻草の栽培の適正を図るために必要な規制を行うことにより、麻薬及び向精神薬取締法と相まつて、大麻の濫用による保健衛生上の危害を防止し、もつて公共の福祉に寄与することを目的とする。(第1条)

「麻薬及び向精神薬取締法と相まって」という文言がそのまま条文に入っているのがポイントです。大麻という物質の規制は麻向法、大麻草を育てることの規制はこちらの法律、という役割分担になっています。

定義:大麻草と大麻

大麻草とは、カンナビス・サティバ・リンネをいう。(第2条)

大麻とは、大麻草(その種子及び成熟した茎を除く)及びその製品をいう。

学名の「カンナビス・サティバ・リンネ」は、そのまま出題される可能性があるので音で覚えておきましょう。

なぜ「種子と成熟した茎」が除かれるのか

除外される部分が何に使われるかを知っていると、丸暗記せずに済みます。

部位 扱い 用途
葉・花穂 大麻に該当 いわゆるマリファナ
成熟した茎 除外 麻縄・麻布などの繊維
種子 除外 麻の実(食用)、七味唐辛子など

成分的に問題がない部位だから外されている、というだけの話です。

「その製品」の線引き

大麻に該当する製品:乾燥した葉など、大麻草の形状が残っているもの

大麻に該当しない:エキス剤など、形状が残っていないもの → こちらは麻向法で成分として規制される

形が残っていれば大麻草栽培規制法の「大麻」、形が残っていなければ麻向法でΔ⁹-THCという成分として規制される。どちらかの法律から漏れることはない、という二段構えになっています。

大麻取扱者は3種類

大麻取扱者 目的 免許権者
第一種大麻草採取栽培者 大麻草から製造される製品の原材料を採取する(繊維・種子など) 都道府県知事
第二種大麻草採取栽培者 医薬品の原料を採取する 厚生労働大臣
大麻草研究栽培者 研究目的 厚生労働大臣

覚え方はシンプルで、「医薬品や研究が絡むほうは厚生労働大臣、繊維や種子だけなら都道府県知事」です。第二種と研究栽培者はTHCの高い大麻草を扱う可能性があるため、国が直接管理するという整理になっています(東京都保健医療局)。

旧制度との違いに注意

改正前の大麻取締法では、大麻取扱者は「大麻栽培者」と「大麻研究者」の2種類で、いずれも都道府県知事の免許でした。免許が3種類になり、免許権者が分かれたのは今回の改正によるものです。古い問題集で勉強するときは読み替えてください。

あへん法

いちばん大事なのは「国の独占」

あへん法で真っ先に覚えるべきはここです。

あへんの輸入、輸出、収納、売渡の権能は、国に専属する。

具体的には、あへんの輸入・輸出、けし耕作者および甲種研究栽培者からの一手買取、麻薬製造業者および麻薬研究施設の設置者への売渡を、国が独占しています。

講義では「厚生労働省の人がインドへ行って1年分のあへんを買ってきて、それを麻薬製造業者に売る」というイメージで説明しています。実態とは多少ずれますが、「民間が勝手に売買できない」という感覚をつかむには十分です。

定義

ケシ(Papaver somniferum)の植物図。花・葉・茎・けし坊主(さく果)・種子の形態が描かれている
ケシ(Papaver somniferum)の植物図。花・葉・茎・けし坊主(さく果)・種子の形態が描かれている

(図版:Köhler’s Medizinal-Pflanzen(1897年)より。パブリックドメイン)

けし

植物としての「けし」は、パパヴェル・ソムニフェルム・エルおよびパパヴェル・セティゲルム・ディーシーをいう。

学名が2つ並ぶだけですが、そのまま出題される可能性があるので名前だけは覚えておいてください。

あへん

けしの液汁が凝固したものおよびこれに加工を施したもの(医薬品として加工を施したものを除く)。

けしがら

けしの麻薬を抽出することができる部分(種子を除く)。

けし坊主(さく果)の外皮に傷をつけると乳液がにじみ出てきて、それが固まったものがあへんです。ただし、けしがらは「外皮だけ」ではありません。麻薬を抽出できる部分はすべてけしがらに含まれる、というのが定義のポイントです。種子は除かれるところも忘れずに。

けし栽培者は3種類

けし栽培者 内容
けし耕作者 けしの栽培をする人
甲種研究栽培者 あへんの採取を伴う研究
乙種研究栽培者 あへんの採取を伴わない研究

甲種が「採取あり」、乙種が「採取なし」。甲乙の順番と、採取のあり/なしの対応だけ押さえてください。

吸食は全面禁止

あへん・けしがらの吸食は、何人も禁止(全面的禁止)。

大麻草栽培規制法とあへん法は、どちらも「植物を育てる側の法律」なので、免許の種類と免許権者が問われやすい単元です。そこだけは表で押さえておきましょう。

管理薬の5法律を1枚に

ここまでで管理薬の法律が出そろいました。最後に全体像を並べておきます。

法律 規制の中心 主なキーワード
麻薬及び向精神薬取締法 麻薬・向精神薬という物質 別表第一+大麻、家庭麻薬、麻薬施用者、封かん
大麻草栽培規制法 大麻草を栽培する行為 カンナビス・サティバ・リンネ、第一種/第二種/研究
あへん法 あへんの流通 国の独占、けし耕作者、甲種/乙種、吸食禁止
覚醒剤取締法 覚醒剤・覚醒剤原料 アンフェタミン、輸出入全面禁止、覚醒剤原料
毒物及び劇物取締法 医薬品ではない毒物・劇物 登録、18歳未満、書面5年保存

なお、第107回 問21では薬物事犯の検挙人数の推移を示したグラフから、覚醒剤取締法・大麻取締法・麻薬及び向精神薬取締法・あへん法・毒物及び劇物取締法のどれかを答えさせる問題が出ています。法律の名前が5つ並ぶ問題は、それぞれが何を取り締まっているかを知らないと絞れません。この表の左2列だけでも頭に入れておくと効きます。

まとめ

  • 旧大麻取締法は大麻草の栽培の規制に関する法律(大麻草栽培規制法)に改称。目的は「麻向法と相まって」大麻の濫用による危害を防止すること
  • 大麻草=カンナビス・サティバ・リンネ。大麻=大麻草(種子と成熟した茎を除く)およびその製品
  • 除外される種子は麻の実、成熟した茎は繊維。形状が残らないエキス剤は麻向法で成分規制
  • 大麻取扱者は第一種(都道府県知事)・第二種(厚生労働大臣)・大麻草研究栽培者(厚生労働大臣)
  • あへん法の中心は国の独占(輸入・輸出・収納・売渡)
  • けし=パパヴェル・ソムニフェルム・エル/パパヴェル・セティゲルム・ディーシー
  • あへん=けしの液汁が凝固したもの、けしがら=麻薬を抽出できる部分(種子を除く)
  • けし栽培者はけし耕作者・甲種(採取あり)・乙種(採取なし)。吸食は全面禁止

次は毒物及び劇物取締法:営業者登録から譲渡手続きまでを読んでみてください。「薬学と社会」の最後の法律です。

法規を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、法規という科目のほんの一区画です。実際には、薬機法の総則から薬局・製造販売業・医薬品の取扱い、そして社会保障制度までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全26回・約5時間34分。「この省令は誰に向けた基準なのか」「さっき出てきた登場人物が、どこで再登場するのか」が、条文の羅列ではなく流れとして入ってきます。バラバラに覚えていた制度が、1本の線になる感覚です。

法規のマインドマップPDF+解説授業セットは¥9,450。無料のサンプル動画とサンプルPDFがあるので、この「たどる」感覚が自分に合うかどうかは、先に確かめられます。

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