薬機法が終わり、ここからは「管理薬に関する規制」に入ります。麻薬・向精神薬・覚醒剤・大麻・あへん、そして毒物劇物と、似たような規制がずらっと並ぶゾーンです。
この単元でいちばん効率がいい勉強の仕方は、1つの法律を軸に決めて、残りを「そこからどれだけズレているか」で覚えるやり方です。軸になるのは麻薬及び向精神薬取締法(麻向法)。覚醒剤取締法は、その麻薬の規制と厳重さがよく似ています。項目立て(規制対象物質 → 輸出入 → 所持・譲渡譲受 → 使用 → 保管管理 → 廃棄 → 事故の届出)もほぼ同じなので、並べて比べるのがいちばん早いです。
この記事では覚醒剤取締法を先に1本で通し、そのあとの記事で麻向法を詳しくやっていきます。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。
Contents
マインドマップで見る「覚醒剤取締法」

法律名は「覚せい剤」ではなく「覚醒剤」
細かい話ですが先に片付けておきます。この法律は長らく「覚せい剤取締法」という表記でしたが、常用漢字表への対応で改正され、令和2年(2020年)4月1日から「覚醒剤取締法」が正式名称になりました(東京都保健医療局)。古い過去問や参考書には「覚せい剤取締法」と書かれていますが、同じ法律です。この記事では現行の「覚醒剤取締法」で統一します。
規制対象物質:覚醒剤と覚醒剤原料
この法律が縛っているのは覚醒剤と覚醒剤原料の2つです。ここが出発点なので、物質名は必ず覚えてください。
覚醒剤:アンフェタミンとメタンフェタミン
覚醒剤 = フェニルアミノプロパン(アンフェタミン)、フェニルメチルアミノプロパン(メタンフェタミン)およびその塩類など
この2つはマストです。アンフェタミンの基本骨格が「フェニルアミノプロパン」で、そこにメチルが入るとメタンフェタミン(フェニルメチルアミノプロパン)になる、という対応で覚えると名前がつながります。
覚醒剤原料:まずこの4つ
覚醒剤原料はもっと数がありますが、次の4つを先に覚えて、他は問題で出てきたときに「これもだったのか」と足していけば十分です。
| 覚醒剤原料 | 除外される濃度 | 何に使われる薬か |
|---|---|---|
| エフェドリン | 10%以下は除く | 葛根湯・麻黄湯など麻黄を含む漢方によく入っている。アドレナリン受容体作動薬 |
| メチルエフェドリン | 10%以下は除く | 同上 |
| セレギリン | ― | パーキンソン病でレボドパと併用して作用を増強する |
| フェニルプロパノールアミン | 50%以下は除く | かつて鼻づまりに使われたが、現在は承認取消し |
濃度の除外規定は、そのまま問われる可能性があります。エフェドリン系は10%、フェニルプロパノールアミンは50%。ここだけ数字を押さえておきましょう。
フェニルプロパノールアミンはなぜ承認が取り消されたのか
フェニルプロパノールアミン(PPA)は、α₁受容体を刺激して血管を収縮させる作用から、鼻づまりの薬として一般用医薬品にも広く入っていました。しかし脳出血の報告が相次ぎ、承認後の安全対策の記事でやった再評価制度にかけられた結果、承認が取り消されています。「一般用医薬品にまで入っていた薬が、後から回収される」という、再評価制度の具体例として覚えておくと一石二鳥です。
過去の国家試験でも、「次の物質の原体のうち、覚醒剤原料として規制されているのはどれか」という問い方でフェニルプロパノールアミンが問われています(第100回 問75)。リゼルギン酸・サフロール・無水酢酸(いずれも麻薬向精神薬原料)やアンフェタミン(こちらは覚醒剤そのもの)と並べられるので、覚醒剤なのか、覚醒剤原料なのか、麻薬向精神薬原料なのかを区別できるようにしておいてください。
輸出入:覚醒剤は「例外なしの全面禁止」
ここが麻薬との最大の違いです。
| 輸出入の扱い | |
|---|---|
| 覚醒剤 | 全面禁止(例外なし) |
| 覚醒剤原料 | 原則禁止。ただし輸入業者・輸出業者が厚生労働大臣の許可を受ければ可能 |
| 覚醒剤原料(患者の携帯) | 自己の疾病の治療目的なら厚生労働大臣の許可を受けて可能 |
なぜ覚醒剤だけ例外がないのかというと、覚醒剤は覚醒剤原料から合成できるからです。わざわざ完成品を輸入する理由がない。だから最初から「例外なし」で切ってあります。
一方、覚醒剤原料の輸出入は、麻薬とまったく同じ扱いです(その都度の厚生労働大臣の許可、患者の携帯も許可)。ここは「原料のほうが麻薬と同じ」と覚えてください。
所持・譲渡・譲受:政府発行の証紙で封かん

覚醒剤
- 政府発行の証紙で封かんして譲渡・譲受する
- 業者間は譲受証・譲渡証をやりとりし、2年間保存
- 患者等への施用の場合は譲受証・譲渡証は不要
図を見てわかるとおり、覚醒剤が流れるのは「覚醒剤製造業者 → 施用機関 / 研究機関」までで、そこから患者・被験者に渡って終わりです。薬局は出てきません。覚醒剤は薬局まで下りてこない薬だからです。
そのため、麻薬にある「患者に渡すときは開封して交付または譲渡」という開封の規定が、覚醒剤にはありません。封かんの義務はあるのに開封の規定はない ── この非対称さが、麻薬との細かい違いとして押さえどころになります。
覚醒剤原料
覚醒剤原料のほうは、病院や薬局が医薬品である覚醒剤原料を譲り受けるのはOKで、普通の医薬品と同じように扱えます。表示や封に関する特別な規定もありません。業者間では譲受証・譲渡証をやりとりし、施用の場合は不要、というのは覚醒剤と同じです。
使用の制限
覚醒剤:原則、何人も使用してはならない
次の場合のほか、何人も覚醒剤を使用してはならない。
例外:覚醒剤製造業者、覚醒剤施用機関の医師、覚醒剤研究者、これらから交付を受けた者
例外があるとはいえ、そこにさらに制限がかぶさります。
- ❌ 医師の自己治療のための使用はできない
- ❌ 処方箋により薬局から交付を受けることはできない
後者の理由は前の節と同じで、覚醒剤は薬局に流通しないからです。「覚醒剤は処方箋では受け取れない」とセットで覚えておきましょう。
覚醒剤原料:かなり緩い
医師、歯科医師、獣医師、薬剤師が業務のために使用または調剤することができる。
覚醒剤原料は医薬品として現場で普通に使われるものなので、ここは大きく緩みます。セレギリン(パーキンソン病)が処方箋で出てくる場面を思い浮かべれば納得できるはずです。
保管・管理:「麻薬と一緒はOK、覚醒剤原料はダメ」
| 保管の方法 | |
|---|---|
| 覚醒剤 | 鍵をかけた堅固な場所。覚醒剤原料とは別に保管する(麻薬とは一緒でOK) |
| 覚醒剤原料 | 鍵をかけた場所 |
ここは国家試験の定番です。麻向法の側から見ると「麻薬は、麻薬以外の医薬品(覚醒剤を除く)と区別して保管する」となっていて、裏を返せば麻薬と覚醒剤は一緒に保管してよい。しかし覚醒剤原料は一緒にできません。
実際、第107回 問146では「医薬品である覚醒剤原料について、薬局における法令に基づく取扱いとして正しいのはどれか」という問題で、
- 「かぎをかけて薬品庫に保管する」(正しい)
- 「麻薬と一緒に保管できる」(誤り)
- 「薬局で調剤するためには、覚醒剤施用機関としての指定を受ける必要がある」(誤り)
- 「処方箋に基づき調剤し、患者に譲渡することができる」(正しい)
という形で、まさにこの区別が問われています。一緒にしていいのは「麻薬と覚醒剤」だけ。覚醒剤原料を混ぜたら×、と覚えてください。
廃棄と事故の届出
廃棄
| 廃棄の手続き | |
|---|---|
| 覚醒剤 | 都道府県知事に届け出て、当該職員の立会いのもと行う |
| 覚醒剤原料(原則) | 同上 |
| 覚醒剤原料(例外) | 調剤した医薬品である覚醒剤原料を廃棄したときは、事後に届出でOK(都道府県知事へ30日以内) |
原則(事前届出+立会い)は麻薬とまったく同じです。例外の考え方も麻薬と同じで、いったん患者の手に渡ったもの(患者が服用しなくなって返却された残薬など)は、立会いなしで廃棄して30日以内に事後届出でよい、という整理になっています。
ここも第107回 問146に、「使用期限が切れた調剤前のものを廃棄した場合、30日以内に都道府県知事に届け出る」という誤りの選択肢が出ています。事後届出でよいのは調剤済みのほうで、調剤前(未調剤)の在庫は原則どおり事前届出+立会いです。この引っかけは要注意です。
事故の届出
覚醒剤も覚醒剤原料も、免許権者等(指定権者等)に届け出る。
たとえば薬局開設者であれば、免許権者は都道府県知事なので、都道府県知事に届け出ます。「自分に免許をくれた人に報告する」と考えれば迷いません。
麻薬との比較表(ここだけ覚えれば通る)
最後に、麻向法と並べて整理します。細かい条文を全部覚えるより、違うところだけを頭に入れるほうが効率的です。
| 項目 | 覚醒剤 | 覚醒剤原料 | 麻薬 |
|---|---|---|---|
| 輸出入 | 全面禁止(例外なし) | 厚労大臣の許可で可 | 厚労大臣のその都度許可 |
| 患者の携帯輸出入 | ― | 厚労大臣の許可 | 厚労大臣の許可 |
| 封かん | 政府発行の証紙 | 規定なし | 政府発行の証紙 |
| 患者へ渡すときの開封 | 規定なし | ― | 開封して交付・譲渡 |
| 譲受証・譲渡証の保存 | 2年 | 2年 | 2年 |
| 保管 | 鍵をかけた堅固な場所 | 鍵をかけた場所 | 鍵をかけた堅固な設備内 |
| 麻薬と同じ場所に保管 | OK | NG | ― |
| 廃棄(原則) | 知事へ届出+立会い | 知事へ届出+立会い | 知事へ届出+立会い |
| 廃棄(例外) | ― | 調剤済みは30日以内に事後届出 | 調剤済みは30日以内に事後届出 |
| 事故の届出 | 免許権者等 | 免許権者等 | 免許権者 |
まとめ
- 法律名は令和2年4月1日から「覚醒剤取締法」(旧「覚せい剤取締法」)
- 覚醒剤はアンフェタミン・メタンフェタミン、覚醒剤原料はエフェドリン(10%以下除く)・メチルエフェドリン(10%以下除く)・セレギリン・フェニルプロパノールアミン(50%以下除く)
- 輸出入は覚醒剤=全面禁止(例外なし)、覚醒剤原料=麻薬と同じ扱い
- 譲渡譲受は政府発行の証紙で封かん。開封の規定は覚醒剤にはない
- 使用は原則禁止。医師の自己治療と処方箋による薬局からの交付は不可
- 保管は覚醒剤=鍵をかけた堅固な場所。麻薬と一緒はOK、覚醒剤原料はNG
- 廃棄は知事へ届出+立会いが原則。調剤済みの覚醒剤原料だけ30日以内の事後届出
- 譲受証・譲渡証の保存は2年(毒物劇物の5年と混同しない)
次は麻薬及び向精神薬取締法における「麻薬」の定義と大麻の法改正を読んでみてください。この単元の軸になる法律で、しかも2024年12月に大きな改正が入ったところです。
法規を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、法規という科目のほんの一区画です。実際には、薬機法の総則から薬局・製造販売業・医薬品の取扱い、そして社会保障制度までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全26回・約5時間34分。「この省令は誰に向けた基準なのか」「さっき出てきた登場人物が、どこで再登場するのか」が、条文の羅列ではなく流れとして入ってきます。バラバラに覚えていた制度が、1本の線になる感覚です。
法規のマインドマップPDF+解説授業セットは¥9,450。無料のサンプル動画とサンプルPDFがあるので、この「たどる」感覚が自分に合うかどうかは、先に確かめられます。