前回の医薬品の表示事項と添付文書電子化(注意事項等情報)のポイントが土台になるパートです。生物由来製品には、通常の医薬品よりも厳しい特例が設けられています。なぜ特例が必要なのか、その理由から入ると、細かい規定が「だからこうなっているのか」と腑に落ちます。最後に再生医療等製品との比較まで一気に整理しましょう。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。
Contents
マインドマップで見る「生物由来製品の特例」

なぜ特例が必要なのか(趣旨)
通常、医薬品のリスクといえば副作用を考えます。ところが生物由来の原料を使う製品には、それとは別に感染のリスクがあります。
HIVやクロイツフェルト・ヤコブ病など、副作用以外にも感染リスクが医薬品にはあるため、安全対策の特例を設けることになった。
いずれも、血液製剤やヒト乾燥硬膜を介して実際に被害が起きた事例です。「感染だから特例がある」という一点を押さえておくと、この先の規定(記録を長期間保存する、感染症の定期報告をする、など)がすべて同じ方向を向いていることが見えてきます。
定義
生物由来製品
人その他の生物(植物を除く)に由来するものを原料・材料とする医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器のうち、保健衛生上特別の注意を要するものとして、厚生労働大臣が薬事審議会の意見を聴いて指定するもの。
覚えどころが3つあります。
- 植物は除く(植物由来のものは生物由来製品にならない)
- 対象は医薬品だけではない(医薬部外品・化粧品・医療機器も含む)
- 指定するのは厚生労働大臣、その際に薬事審議会の意見を聴く
なお、薬事審議会は2024年(令和6年)4月1日に「薬事・食品衛生審議会」から改称された現行の正式名称です。第109回までの過去問では旧名称で出題されているので、古い問題集を使っている人は注意してください。
特定生物由来製品
生物由来製品のうち、販売し、または授与した後に保健衛生上の危害の発生または拡大防止の措置が必要なものとして厚生労働大臣が指定するもの。
例としては人血液製剤など、ヒト由来のものが中心です。「生物由来製品の中のさらに厳しいグループ」という入れ子の関係になっている点が大事です。
製造所の管理
ここは通常の医薬品と比べると違いがはっきり出るところです。
生物由来製品の製造業者は、製造所ごとに厚生労働大臣の承認を受けた、医師、細菌学的知識を有する者その他の技術者を置かなければならない。
通常の医薬品の製造業では、製造管理者として薬剤師を置くのが原則でした(製造業許可の基本(外国製造業者の認定・原薬等登録原簿)を参照)。生物由来製品では、そこが医師・細菌学的知識を有する者その他の技術者に変わり、さらに厚生労働大臣の承認が必要になります。感染リスクを扱うのだから細菌学の知識が要る、と考えると自然です。
| 置く人 | 承認 | |
|---|---|---|
| 通常の医薬品の製造業 | 原則薬剤師 | ― |
| 生物由来製品の製造業 | 医師、細菌学的知識を有する者その他の技術者 | 厚生労働大臣の承認が必要 |
表示
直接の容器・被包

生物由来製品は、白地に黒枠、黒字で「生物」の文字を記載します。

特定生物由来製品は、白地に黒枠、黒字で「特生物」の文字を記載します。
色は毒薬・劇薬と違って、どちらも白地に黒枠、黒字です。国家試験では「白地に赤枠、赤字で『生物』の文字」のように色を入れ替えた誤りの選択肢が頻出で、第110回でも同じ形で出題されています。生物・特生物は黒と覚えてください。
製造番号・製造記号は省略不可
前回、通常の医薬品では容器が小さい場合に製造番号・製造記号の記載を省略できる特例があるという話をしました。生物由来製品では、この省略ができません。
理由は明快で、後から「どのロットを誰に使ったか」を追跡できなければ、感染が起きたときに手が打てないからです。
人の血液を原料とする場合
特定生物由来製品のうち人の血液を原料とするものは、さらに
- 採血国名
- 採血の方法(献血か非献血か)
を記載しなければなりません。
添付文書(注意事項等情報)
特定生物由来製品の場合、「原材料に由来する感染症を完全に排除することはできない」旨を記載しなければならない。
ここはそのまま問われます。「完全には排除できない」という正直な記載を義務づけているところに、この制度の思想が表れています。
情報提供:「理解を得るよう努める」
特定生物由来製品を取り扱う医師その他の医療関係者は、特定生物由来製品の使用の対象者に対し適切な説明を行い、その理解を得るよう努めなければならない。
ポイントは、同意までは求めていないことです。「適切な説明」と「理解を得るよう努める」までです。この後に出てくる再生医療等製品との最大の違いがここなので、太字で頭に入れておいてください。
感染症定期報告
生物由来製品の製造販売業者等は、厚生労働大臣に定期的に報告する義務がある。
努力義務ではなく義務です。
記録・保存の義務
医療機関・薬局の管理者は、使用した患者と使用した薬(製品名・製造番号またはロットなど)が後から分かるように記録します。後で追跡できるようにする、という趣旨です。
保存期間は、特定生物由来製品かどうかで大きく変わります。
| 製造販売業者 | 医療機関 | |
|---|---|---|
| 特定生物由来製品 | 30年間 | 20年間 |
| 生物由来製品 | 10年間 | 規定なし |
30年というのは非常に長い期間です。クロイツフェルト・ヤコブ病のように潜伏期間が極端に長い感染症を想定しているため、これだけの年数が設定されています。
特定生物由来製品は30年/20年、生物由来製品は10年/規定なし。この4つの数字はそのまま出題されるので、表ごと覚えてしまいましょう。
再生医療等製品との比較
再生医療等製品にも、ほぼ同じ枠組みの規制がかかっています。違うのは1か所だけなので、そこだけ覚えれば済みます。
| 項目 | 特定生物由来製品 | 再生医療等製品 |
|---|---|---|
| 情報提供 | 適切な説明を行い、その理解を得るよう努める | 適切な説明を行い、同意を得るよう努める |
| 感染症定期報告 | 製造販売業者等に報告義務 | 同じ |
| 記録・保存の義務 | 製造販売業者30年/医療機関20年 | 同じ(指定再生医療等製品) |
再生医療等製品のほうが一段きつい(同意まで求める)と覚えてください。
また、生物由来製品に「特定生物由来製品」という上位グループがあったのと同じように、再生医療等製品にも指定再生医療等製品という区分があります。名前が違うだけで、保存期間などの数字は同じです。
| 製造販売業者 | 医療機関 | |
|---|---|---|
| 指定再生医療等製品 | 30年間 | 20年間 |
| 再生医療等製品 | 10年間 | 規定なし |
まとめ
- 特例の趣旨は感染リスク(HIV、クロイツフェルト・ヤコブ病など)
- 生物由来製品は植物を除く生物に由来。医薬品だけでなく医薬部外品・化粧品・医療機器も対象。厚生労働大臣が薬事審議会の意見を聴いて指定
- 特定生物由来製品は、生物由来製品のうち販売・授与後の措置が必要なもの(人血液製剤など)
- 製造所には厚生労働大臣の承認を受けた医師、細菌学的知識を有する者その他の技術者を置く
- 表示は白地に黒枠、黒字で「生物」「特生物」。製造番号・記号は省略不可
- 人血液が原料なら採血国名・採血方法(献血/非献血)も記載
- 特定生物由来製品の添付文書には「原材料に由来する感染症を完全に排除することはできない」旨
- 情報提供は理解を得るよう努める(同意までは求めない)
- 記録の保存は特定生物由来30年/20年、生物由来10年/規定なし
- 再生医療等製品は同意を得るよう努める点だけが違う
これで薬機法の大きな柱は一通り終わりです。次は覚せい剤取締法を麻薬取締法と比較しながら整理(規制対象・輸出入・保管管理)を読んでみてください。「管理薬に関する規制」に入り、麻薬と比べながら覚醒剤の規制を整理していきます。
法規を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、法規という科目のほんの一区画です。実際には、薬機法の総則から薬局・製造販売業・医薬品の取扱い、そして社会保障制度までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全26回・約5時間34分。「この省令は誰に向けた基準なのか」「さっき出てきた登場人物が、どこで再登場するのか」が、条文の羅列ではなく流れとして入ってきます。バラバラに覚えていた制度が、1本の線になる感覚です。
法規のマインドマップPDF+解説授業セットは¥9,450。無料のサンプル動画とサンプルPDFがあるので、この「たどる」感覚が自分に合うかどうかは、先に確かめられます。