前回の記事では非臨床試験について見てきました。動物などを使って安全性を確認したら、いよいよヒトを対象とする「臨床試験(治験)」に進みます。この記事では、治験の定義と、第1相〜第3相試験それぞれの対象・目的・方法の違いを整理していきます。
前回の記事(非臨床試験)へのリンクは、公開後にこちらへ追記予定です。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。
Contents
マインドマップで見る「臨床試験」の全体像

治験の定義
まず、治験とは何かを条文の言葉で確認しておきましょう。
医薬品、医療機器、再生医療等製品の製造販売の承認申請に際して提出すべき資料のうち、臨床試験の試験成績に関する資料の収集を目的とする試験
つまり治験とは、承認申請に必要なデータを集めるためにヒトで行う試験のことです。ここで得られたデータが、製造販売承認の申請書類に添付されることになります。
治験の主体:企業主導と医師主導
「治験」というと企業主導のものをイメージする人が多いと思いますが、近年は医師主導の治験も認められています。医師主導の治験は、既存薬の新しい使い方を試したり、対象患者数が少ないオーファンドラッグの治療法を開発したりする場合などに使われることが多いパターンです。
どちらの治験も、GCP省令に従って行われる必要があります。GCP省令は、法と倫理の記事で扱ったヘルシンキ宣言(人体実験に関する規定)を踏まえて作られたもので、治験での被験者の人権保護や試験成績の信頼性確保を目的とした基準です。GCP省令の中身については、この後の記事で詳しく整理していきます。
治験の法的規制(ざっくり)
薬機法には、治験を始めるための手続きについても定めがあります。厚生労働大臣に届出をした日から起算して30日を経過した後でなければ、治験を依頼したり、自ら治験を実施したりしてはならない、という規定です。この30日ルールと、もう1つの重要な規制であるGCP省令(治験を行うための基準)が、治験の法的規制の柱になります。
臨床試験の内容:第1相〜第3相の違い
治験は、大きく第1相・第2相・第3相の3段階に分かれています。それぞれ対象者・目的・方法が異なるので、順番に見ていきましょう。
第1相試験(臨床薬理試験)
- 対象:原則として少数の健常人
- 目的:認容性・安全性の評価、薬物代謝や相互作用の探索
「認容性」とは、薬の副作用をどれくらい許容できるかというチェックのことです。なお、抗がん剤のように確実に強い副作用が出ることが想定される薬の場合は、健常人ではなく少数の患者を対象とすることもあります。あくまで「原則」健常人、という点を押さえておきましょう。
第2相試験(探索的試験)
- 対象:少数の患者
- 目的:用法・用量(レジメン)の探索・推定
第3相試験(検証的試験)
- 対象:多数の、特定の適用疾患を持つ患者
- 目的:第2相で探索された用法用量について、有効性と安全性をより大規模に検証する
- 方法:無作為化二重盲検比較試験が多い
無作為化二重盲検比較試験とは、患者と処方する医師のどちらも、どちらのグループが本物でどちらがプラセボなのかが分からない状態にして比較する試験方法です。ランダムに2条件へ振り分けることで、思い込みによるバイアスを排除できます。
第4相試験(製造販売後臨床試験)
治験というと第1相〜第3相のイメージが強いですが、承認後に行われる試験は第4相(製造販売後臨床試験)とも呼ばれます。再審査・再評価の申請資料を収集する目的で行われる製造販売後調査の1つで、市販後に行われるためGCP省令に加えてGPSP省令の両方に準拠する必要があります。再審査制度・再評価制度については、承認後の制度を扱う記事で詳しく見ていきます。
まとめ
治験とは、承認申請に必要なデータを集めるためにヒトで行う試験のことで、企業主導・医師主導のいずれもGCP省令に従って実施されます。第1相(少数の健常人・認容性と安全性)、第2相(少数の患者・用法用量の探索)、第3相(多数の患者・有効性安全性の検証)と段階が進むにつれて、対象者の規模と試験の目的が変わっていく、という流れをまず押さえておきましょう。
次回は、治験の法的規制の中でも特にボリュームの大きい「GCP省令(治験を行うための基準)」について、準備・管理・実施の3つの基準に分けて整理していきます。
法規を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、法規という科目のほんの一区画です。実際には、薬機法の総則から薬局・製造販売業・医薬品の取扱い、そして社会保障制度までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全26回・約5時間34分。「この省令は誰に向けた基準なのか」「さっき出てきた登場人物が、どこで再登場するのか」が、条文の羅列ではなく流れとして入ってきます。バラバラに覚えていた制度が、1本の線になる感覚です。
法規のマインドマップPDF+解説授業セットは¥9,450。無料のサンプル動画とサンプルPDFがあるので、この「たどる」感覚が自分に合うかどうかは、先に確かめられます。