総則の後半、医薬品の分類です。ここは法規の中でもトップクラスに出題される場所で、しかも実務ともそのままつながります。
正直に言うと、この単元は覚えることが多くてしんどいパートです。ただ、分類の全体像と「要指導医薬品と第一類医薬品は何が違うのか」という一点さえ押さえてしまえば、残りは枝葉です。しかもこの違いには、ちゃんとした歴史的な理由があります。理由から入ると丸暗記より圧倒的に楽なので、この記事ではその順番で進めます。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。
Contents
マインドマップで見る「医薬品の分類」

前回は右半分を扱いました。この記事は左半分の「医薬品の分類」です。
まずは分類の全体像
医薬品は、大きく3つに分かれます。
| 大分類 | 中分類 | 小分類 |
|---|---|---|
| 薬局医薬品 | 医療用医薬品 | 処方箋医薬品 / それ以外(処方箋医薬品以外の医療用医薬品) |
| 薬局製造販売医薬品 | ― | |
| 要指導医薬品 | スイッチOTC / ダイレクトOTC / 毒薬・劇薬 | ― |
| 一般用医薬品 | 第1類 / 指定第2類 / 第2類 / 第3類 | ― |
条文上の定義の書き方にもクセがあり、「薬局医薬品とは、要指導医薬品及び一般用医薬品以外の医薬品をいう」という引き算の形で定義されています。第110回の必須問題では、まさにこの穴埋めがそのまま出題されました(答えは「一般用医薬品」)。薬局医薬品=引き算で定義される、と覚えておいてください。
要指導医薬品のうちスイッチOTC・ダイレクトOTCは、一定期間が過ぎると一般用医薬品に移行します。要指導医薬品は永住権のあるカテゴリーではなく、いわば「仮のポジション」だというイメージを持っておくと、この後の話が入りやすくなります。
なぜ「要指導医薬品」というカテゴリーができたのか
ここは試験に直接は出ないパートです。でも、この経緯を知っていると規制の違いが全部腑に落ちるので、少しだけお付き合いください。
もともと、要指導医薬品というカテゴリーはありませんでした。いまの要指導医薬品にあたるものは、全部第一類医薬品に入っていたのです。そして当時は、省令によって一般用医薬品のネット販売がほぼ禁止されていました。
これに対して、ネット通販事業者のケンコーコムなどが「この省令は違法ではないか」と厚生労働省を相手に裁判を起こします。そして最高裁判所が「違法」と判断しました。これを受けて薬事法が改正され、一般用医薬品はネット販売が全面解禁されます。
困ったのは厚生労働省のほうです。スイッチ直後の品目や劇薬まで、すべてネットで売られるのは避けたい。そこで、当時の一般用医薬品の中から「要指導医薬品」という新しいカテゴリーを切り出して、そこだけは対面販売に限るという形にしました。
つまり、要指導医薬品というカテゴリーは「ネット販売させないため」に生まれたわけです。だから、
- 要指導医薬品は特定販売(ネット販売)が絶対に禁止
- 情報提供に加えて「指導」まで義務
という2点が出てきます。「要指導」という名前なのだから指導しないわけがない、という覚え方で十分です。一方、分かれた片割れの第一類医薬品はネット販売できる。ただし販売の担当者は薬剤師に限る、という整理になっています。
販売時のルールを表で比較する
ここが一番細かいところですが、国試で一番点になるところでもあります。マインドマップの表をそのまま載せます。

上から順に見ていきます。
① 担当者
| 担当者 | |
|---|---|
| 要指導医薬品 | 薬剤師 |
| 第一類医薬品 | 薬剤師 |
| 指定第2類・第2類・第3類 | 薬剤師又は登録販売者 |
要指導と第一類はもともと同じ分類だったので、ここは同じ扱いです。
② 情報提供等(原則)
| 情報提供・指導 | |
|---|---|
| 要指導医薬品 | 情報提供及び指導が義務(書面又は電磁的記録) |
| 第一類医薬品 | 情報提供だけ義務(書面又は電磁的記録) |
| 指定第2類・第2類 | 情報提供は努力義務 |
| 第3類 | ― |
要指導は「提供+指導」、第一類は「提供だけ」。 この1行がこの単元の心臓部です。
③ 情報提供等の例外
例外は2種類あります。
(a) 薬剤師等に販売するとき 要指導医薬品・第一類医薬品とも、情報提供は不要です。相手がプロなので当然ですね。
(b) 一般消費者である購入者から「説明は要らない」と意思表明があったとき ここが混乱しやすいところです。
| 購入者が「説明不要」と言ったとき | |
|---|---|
| 要指導医薬品 | 情報提供及び指導の義務は残る(やらなければならない) |
| 第一類医薬品 | 適正に使用されると認められる場合は、情報提供の義務なし |
要指導だけは、断られても指導しなければいけません。 「要指導と書いてあるんだから指導するでしょ」で押し切れます。
④ 年齢や他の薬剤の使用状況等の確認
| 確認 | |
|---|---|
| 要指導医薬品・第一類医薬品 | 薬剤師に確認させなければならない(義務) |
| 指定第2類・第2類 | 薬剤師又は登録販売者の確認は努力義務 |
| 第3類 | ― |
第108回の必須問題では「一般消費者に対する要指導医薬品の日常の販売について、正しいのはどれか」が出題され、正解は「使用する者の年齢を確認しなければならない」でした。誤りの選択肢として「インターネットで販売できる」「配置による方法で販売できる」「情報提供は薬剤師又は登録販売者が行う」が並んでいます。要指導医薬品の3つのNGが1問に詰まっている、よくできた問題です。
⑤ 記録の保存
| 記録の保存 | |
|---|---|
| 要指導医薬品・第一類医薬品 | 義務(2年間) |
| 指定第2類・第2類 | 努力義務 |
2年間という数字は、薬局開設者の遵守事項の記事でも出てきます。セットで覚えてください。
⑥ 相談時
購入者から相談があったときは、要指導医薬品も一般用医薬品も、すべて情報提供が義務です。ここだけは分類に関係なく全部「must」。売る側から声をかけるかどうかには差がありますが、聞かれたら必ず答える、という点は共通です。
⑦ 特定販売(ネット販売)
| 特定販売 | |
|---|---|
| 要指導医薬品 | 不可(対面販売のみ) |
| 一般用医薬品(第1類〜第3類) | 可 |
貯蔵・陳列のルール
条文の文字だけ追うと分かりにくいので、店舗の見取り図で覚えてしまいましょう。

大前提として、混在させてはいけません。 要指導医薬品と一般用医薬品を混ぜない、第1類・第2類・第3類を混ぜない、というのが出発点です。
そのうえで、置き場所のルールが3つあります。
要指導医薬品・第一類医薬品
- 原則:購入者が直接手に取れない、店舗の内部の陳列設備に置く(条文上は「陳列設備から1.2m以内の範囲に購入者等が進入できない区画」)
- 例外:鍵をかけた陳列設備に入っていればOK
指定第二類医薬品
- 原則:情報提供を行う設備から7m以内の範囲に置く
- 例外:鍵をかけた陳列設備に入っていれば、7mの外でもOK
指定第二類だけ、なぜか距離指定があります。「何かあったらすぐ声をかけられる位置に置け」という趣旨です。
専門家不在時
薬剤師・登録販売者がいないときは、医薬品を陳列している区画を閉鎖できるようにしておく必要があります。
まとめ
- 医薬品は薬局医薬品・要指導医薬品・一般用医薬品の3つ。薬局医薬品=要指導医薬品及び一般用医薬品以外の医薬品という引き算の定義
- 要指導医薬品は、ネット販売を禁止するために第一類から切り出されたカテゴリー。だから特定販売は不可で、指導まで義務
- 担当者は要指導・第一類=薬剤師、指定第2類以下=薬剤師又は登録販売者
- 要指導=情報提供+指導が義務、第一類=情報提供だけ義務
- 購入者が説明を断ったとき、要指導は義務が残り、第一類は免除される場合がある
- 年齢等の確認は要指導・第一類で義務、記録の保存は2年間
- 相談されたときは、すべての分類で情報提供が義務
- 陳列は混在させない。要指導・第一類は内部の陳列設備、指定第二類は情報提供設備から7m以内、どちらも鍵をかけた陳列設備なら例外
これで総則は終わりです。次は薬局の定義・開設許可・管理者の義務を薬機法から整理に進みます。医薬品の流通・供給の仕組みを、一番川下にある薬局からさかのぼっていきましょう。
動画で学びたい人へ
この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。
法規を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、法規という科目のほんの一区画です。実際には、薬機法の総則から薬局・製造販売業・医薬品の取扱い、そして社会保障制度までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全26回・約5時間34分。「この省令は誰に向けた基準なのか」「さっき出てきた登場人物が、どこで再登場するのか」が、条文の羅列ではなく流れとして入ってきます。バラバラに覚えていた制度が、1本の線になる感覚です。
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