治験(臨床試験)の記事で少し触れた「GCP省令」。治験の法的規制の中でも特にボリュームが大きく、薬剤師国家試験でも頻出のテーマです。ここでは、GCP省令の全体像と、登場人物の関係図をまず押さえておきましょう。個々の基準の詳しい中身は、この後に続く3本の記事で1つずつ整理していきます。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。
マインドマップで見る「GCP省令」の全体像

GCP省令とは何か
GCP省令(医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令)は、法律と倫理規範の記事で扱ったヘルシンキ宣言(人体実験に関する規定)を踏まえて作られた基準です。治験における
- 被験者の人権保護
- 試験成績の信頼性の確保
を目的として定められています。企業主導・医師主導、どちらの治験もこのGCP省令に従って行われます。
GCP省令は時系列で3つに分かれる
GCP省令の中身は、時系列に沿って大きく3つの基準に分かれています。
- 治験の準備に関する基準(治験を始める前に、依頼者がやっておくべきこと)
- 治験の管理に関する基準(治験の実施中に、依頼者がやるべきこと)
- 治験を行う基準(実施医療機関側で求められること・治験に関わる人たちの役割)
「今、準備の話をしているのか、管理の話をしているのか、実施医療機関の話をしているのか」を意識しながら読むと、情報量が多いパートでも迷子になりにくくなります。
治験に関わる人たちの関係図
GCP省令の中身に入る前に、治験にはたくさんの登場人物が出てくるので、先に全体の関係図を見ておきましょう。

登場人物をざっくり整理すると、次のようになります。
| 登場人物 | 立場 | 役割 |
|---|---|---|
| 治験依頼者 | 企業(製薬会社など) | 新薬を開発したい主体。実施医療機関と治験の契約を結ぶ |
| CRO(開発業務受託機関) | 治験依頼者側 | 治験依頼者から業務委託を受け、CRA(モニタリング担当者)を実施医療機関に派遣する |
| CRA(モニタリング担当者) | 治験依頼者側 | 治験が計画どおりに行われているかを監視し、治験データを回収する |
| 実施医療機関の長 | 医療機関 | IRBの意見を踏まえて治験を行うかどうかを判断する |
| IRB(治験審査委員会) | 医療機関 | 倫理的・科学的に治験実施の適否を審議する |
| 治験責任医師 | 医療機関 | 被験者への文書説明・文書同意の取得、症例報告書の作成などを行う |
| 治験薬管理者 | 医療機関 | 実施医療機関の長が指定し、手順書に従って治験薬を管理する(薬剤師が担うことが多いが、資格上の決まりはない) |
| CRC(治験協力者) | 医療機関側(SMOから派遣) | 治験責任医師をサポートする(被験者のスケジュール管理、説明同意の補助、症例報告書作成の補助など) |
| SMO(治験施設支援機関) | 医療機関側 | 実施医療機関と業務委託契約を結び、CRCを派遣する |
| 被験者 | ― | 治験責任医師から文書説明を受け、文書で同意する |
似た略語(CRO・CRA・CRC・SMO)が並んで混乱しやすいところですが、図の中でどちら側(治験依頼者側か、医療機関側か)にいるかを意識すると整理しやすくなります。CROとCRAは「企業側」、SMOとCRCは「医療機関側」とセットで覚えるのがおすすめです。
この後の3記事で扱う内容(予告)
この関係図を頭に入れたうえで、次の3本の記事でGCP省令の中身を順番に見ていきます。
- GCP省令「治験の準備に関する基準」を整理(治験薬概要書・事前交付禁止):業務手順書、治験薬概要書・治験実施計画書の作成、治験薬の事前交付禁止など、治験が始まる前に依頼者がやるべきこと
- GCP省令「治験の管理に関する基準」を整理(治験薬の表示・モニタリング・監査・記録の保存):治験薬の表示ルール、モニタリングの実施、監査、記録の保存など、治験の実施中に依頼者がやるべきこと
- 治験実施医療機関の基準と治験関係者(CRO・SMO・CRC・IRB)の役割整理:IRBの構成要件、治験責任医師の要件、被験者の同意の取り方など、実施医療機関側で求められること
まとめ
GCP省令は、ヘルシンキ宣言を踏まえて作られた「被験者の人権保護」と「試験成績の信頼性確保」のための基準で、時系列に沿って準備・管理・実施の3つに分かれています。まずは今回の関係図で登場人物の立ち位置を頭に入れておくと、この後の3記事で出てくる細かいルールも「誰が」「いつ」やるべきことなのかが整理しやすくなります。
次はGCP省令「治験の準備に関する基準」を整理(治験薬概要書・事前交付禁止)を読んでみてください。
法規を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、法規という科目のほんの一区画です。実際には、薬機法の総則から薬局・製造販売業・医薬品の取扱い、そして社会保障制度までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全26回・約5時間34分。「この省令は誰に向けた基準なのか」「さっき出てきた登場人物が、どこで再登場するのか」が、条文の羅列ではなく流れとして入ってきます。バラバラに覚えていた制度が、1本の線になる感覚です。
法規のマインドマップPDF+解説授業セットは¥9,450。無料のサンプル動画とサンプルPDFがあるので、この「たどる」感覚が自分に合うかどうかは、先に確かめられます。