医薬品医療機器等法(薬機法)

薬機法の総則:法の目的と医薬品等の定義(日本薬局方・検定・広告規制・血液法)【薬剤師国家試験】

前の記事で薬機法の全体マップを見ました。ここからいよいよ中身に入っていきます。最初は総則です。

総則は地味に見えますが、ここを飛ばすと後が全部しんどくなります。理由ははっきりしていて、この先の薬局・販売業・製造販売業・開発といった条文の中に「医薬品等」という言葉が何十回と出てくるからです。「医薬品等」と見た瞬間に5つの製品がパッと浮かぶかどうかで、読むスピードがまるで変わります。

この記事では、①法の目的、②「医薬品等」の定義、③指定薬物の定義までを押さえたうえで、同じ「品質・有効性・安全性の確保」というテーマでつながっている日本薬局方・検定制度・広告規制・血液法まで、まとめて片付けてしまいます。マインドマップでは離れた場所にあるパートですが、性格が似ているので一緒に見たほうが記憶に残ります。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。

マインドマップで見る「薬機法の総則」

薬機法 総則のマインドマップ(法の目的・医薬品等の定義・指定薬物の定義・医薬品の分類)
薬機法 総則のマインドマップ(法の目的・医薬品等の定義・指定薬物の定義・医薬品の分類)

右上が法の目的、右側が医薬品等の定義と指定薬物の定義、そして左半分が医薬品の分類です。この記事では右半分を扱い、左半分の医薬品の分類は次の記事でまるごと1本使って整理します。

薬機法の目的(第1条)

薬機法が最終的に目指しているゴールは、ひとことで言えば保健衛生の向上です。そのために、次の3つを定めています。

目的の3本柱 中身
① 医薬品等の品質、有効性及び安全性の確保 この法律の本丸。以下の条文はほぼこれに関わる
② 指定薬物の規制 いわゆる危険ドラッグを取り締まる
③ 研究開発の促進に必要な措置 希少疾病用医薬品の支援などがここに入る

「保健衛生の向上のために、①品質・有効性・安全性の確保、②指定薬物の規制、③研究開発の促進をやる」。この3つを言えるようにしておけば十分です。

「医薬品等」とは何を指すのか(第2条)

ここが総則で一番大事なところです。「医薬品等」は次の5つを指します。

医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品

これはマストで暗記してください。この5つが揃ってはじめて「医薬品等」です。では、それぞれの定義を見ていきます。

医薬品

医薬品の定義は3つあり、どれか1つにでも当てはまれば医薬品になります。

  1. 日本薬局方に収められている物
  2. 人又は動物の疾病の診断・治療・予防に使用されることが目的で、機械器具等ではないもの
  3. 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的で、機械器具等ではないもの

3番目がピンと来ないかもしれませんが、たとえば避妊薬がここに入ります。病気を治すわけではないけれど、体の機能に影響を及ぼすので医薬品、という理屈です。

1番の「日本薬局方に収められている物は医薬品」という言い回しは、そのまま国試の選択肢になります。第106回では日本薬局方をテーマにした問題の中で、この定義が正しい記述として出ています。

医薬部外品

医薬部外品の定義は、特定の目的で使われるもので、かつ人体に対する作用が緩和なものです。目的の中身は全部覚える必要はありませんが、代表例だけ挙げておきます。

  • 吐き気、体臭、あせも、脱毛の防止などの目的で使われるもの
  • ねずみ、はえ、蚊などの防除の目的で使われるもの
  • 医薬品と同じ目的で使用されるもののうち、厚生労働大臣が指定した物

第111回では医薬部外品が正面から問われ、正解は「医薬品と同じ目的のために使用されるものがある」と「「はえ」や「蚊」の防除の目的で使用されるものがある」の2つでした。逆に「外用剤に限定される」「店舗で販売するには販売業の届出が必要」は誤りです。医薬部外品は飲むタイプもあるし、売るのに許可も届出もいりません。

化粧品

化粧品は、人の身体に塗擦・散布して使用し、人体に対する作用が緩和なものです。ここは2点だけ押さえてください。

  • 対象は「人」だけ。動物用のものは化粧品に入りません
  • 使用方法は外用のみ。飲む化粧品というものは、法律上は存在しません

医療機器

医療機器は、疾病の診断・治療・予防の目的、又は身体の構造・機能に影響を及ぼすことが目的の機械器具等であって、政令で定めるものです。

使用目的の部分は医薬品とまったく同じです。違いは「機器かどうか」と、最後に「政令で定めるもの」が付いていること。政令は内閣が定めるものなので、結局は政令が決める、という点を覚えておいてください。

医療機器で一番出るのはリスク分類です。

リスク分類 リスク 具体例
高度管理医療機器 高い ペースメーカー、透析器、コンタクトレンズ
管理医療機器 中くらい 電子血圧計
一般医療機器 低い ピンセット、メス

第107回では「コンタクトレンズが該当するのはどれか」がそのまま1問になっています。答えは高度管理医療機器。意外に感じるかもしれませんが、目に直接入れるものなのでリスクが高い、と考えると納得できます。

そしてもう1つ、リスク分類とは別の軸で決まるのが特定保守管理医療機器です。定期的なメンテナンスが必要な医療機器がこれにあたります。別の軸なので、高度管理医療機器の中にも、管理医療機器の中にも、一般医療機器の中にも特定保守管理医療機器はあります。 ここは販売業の許可の話(この先の記事)でまた出てくるので、いま押さえておくと得です。

再生医療等製品

再生医療等製品も、掲げる物のうち政令で定める物という形で定義されています。医療機器と再生医療等製品の2つは「政令で定める」で終わる、とセットで覚えてください。

国試では定義そのものより、再生医療等製品の特殊な扱いが問われます。

  • 条件及び期限付き承認の仕組みが規定されているのは再生医療等製品だけ(第105回)
  • 動物の細胞に培養その他の加工を施したものも該当する(第110回)
  • 人の体内で発現する遺伝子を含有させたものも該当する(第110回)
  • 製造販売業者は感染症定期報告を行わなければならない(第110回)

5つの違いを1枚の図で整理する

定義を1つずつ読むとバラバラに見えますが、2つの軸で切ると一気に整理できます。

医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器を「口から摂取するかどうか」と「薬局/販売業許可の要否」の2軸で整理した図
医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器を「口から摂取するかどうか」と「薬局/販売業許可の要否」の2軸で整理した図
  • 横軸:薬局・販売業の許可が必要かどうか。許可が不要な側は、作用が緩和なグループとほぼ一致します
  • 縦軸:口から摂取するかどうか

医薬品は口から摂取するものもしないものもあり、許可が必要。医薬部外品も口から摂取するものとしないものがありますが、作用が緩和なので許可は不要。化粧品は外用だけなので「摂取しない」側に寄り、許可も不要。医療機器は口からは摂取しませんが、許可が必要なものと不要なものの両方にまたがります。

縦軸と横軸が、そのまま「作用が緩和かどうか」の線にもなっているので、1枚で二重においしい図です。

指定薬物とは(第2条)

いわゆる危険ドラッグを規制するための区分です。定義は、中枢神経系の興奮・抑制又は幻覚の作用を有する蓋然性が高く、保健衛生上の危害が発生するおそれがあるものとして、厚生労働大臣が薬事審議会の意見を聴いて指定するものです。

名称に注意:2024年4月から「薬事審議会」になりました

以前は薬事・食品衛生審議会という名前でした。食品の規格基準づくりが消費者庁に移り、食品衛生分科会がなくなったことで、2024年(令和6年)4月1日から「薬事審議会」に変わっています(根拠は令和5年法律第36号)。

国家試験の表記も切り替わりました。第109回までは「薬事・食品衛生審議会」、第110回では「薬事審議会(*旧 薬事・食品衛生審議会)」と注記つき、第111回では注記なしの「薬事審議会」です。古い過去問や問題集では旧名称で出てきますが、同じものだと思って読んでください。この記事ではすべて新名称で書いています。

押さえるポイントは3つあります。

  1. 原則は薬事審議会の意見を聴いて指定する。ただし緊急の場合は、意見を聴かずに厚生労働大臣が指定できる
  2. 個別指定だけでなく、特定の構造を持つ物質をまとめて指定する「包括指定」もできる
  3. 規制は売る側と買う側の両方にかかる。医療等の用途を除き、売る側は製造・輸入・販売・授与などが禁止、買う側は所持・使用が禁止

第109回ではこの3点がそのまま出題されました。正解は「緊急を要する場合、薬事・食品衛生審議会(当時の名称)の意見を聴かずに厚生労働大臣が指定できる」と「個別指定と包括指定の2つがある」。誤りの選択肢として「所持の制限はない」が置かれていたので、買う側も所持が禁止という点は要注意です。

そしてもう1つ、引っかけの定番があります。麻薬・向精神薬・覚醒剤などは、それぞれ個別の法律で指定されているので「指定薬物」ではありません。 第109回でも「麻薬及び向精神薬取締法に基づき厚生労働大臣が指定する」「ヘロインは指定薬物に該当する」という誤りの選択肢が並んでいました。管理薬に関する規制の記事で詳しく扱います。

品質基準:日本薬局方と、それ以外の基準

ここからは「安全性・品質の確保」のパートに移ります。マインドマップでは別の枝ですが、総則の「品質・有効性・安全性の確保」を具体化した部分なので、続けて見ておきます。

医薬品医療機器等法の全体像マインドマップ(概要・総則・流通供給の仕組み・安全性品質確保)
医薬品医療機器等法の全体像マインドマップ(概要・総則・流通供給の仕組み・安全性品質確保)

品質基準は、大きく2つに分けて捉えてください。

イメージ 具体例
日本薬局方 一般的な基準 ―
局方以外の品質基準 専門的な基準 生物学的製剤基準、放射性医薬品基準

局方以外の基準は、保健衛生上特別の注意を要する医薬品又は再生医療等製品について設けることができる、という位置づけです。

日本薬局方の条文で押さえるところ

  • 厚生労働大臣は、医薬品の性状及び品質の適正を図るため、薬事審議会の意見を聴いて日本薬局方を定め、これを公示する
  • 厚生労働大臣は、少なくとも10年に1回、日本薬局方の全面にわたる検討が薬事審議会で行われるように諮問する
  • 実際の運用は5年ごとの全面改正

「法律上は10年に1回以上、実際は5年ごと」。この対比が問われます。第106回では日本薬局方の問題で「少なくとも10年ごとに全面にわたって見直されなければならない」が正しい記述として出ています。

ちなみに日本薬局方ができたのは明治時代です。江戸幕府が終わって西洋医学が入ってきたとき、薬の多くは外国からの輸入品でした。イギリスから来たものは英国薬局方、ドイツから来たものはドイツ薬局方……と基準がバラバラでは煩雑なので、「我が国にも1つ作ろう」となったのが始まりです。

検定制度

厚生労働大臣が指定する医薬品、具体的にはワクチンや血液製剤などが対象です。

  • 検定に合格したものでなければ、市場に出荷できない
  • 検定の結果には審査請求(不服申立て)ができない。科学的根拠に基づく結果だから、という理由です

なお、過去15年の本試験を検索した範囲では、この検定制度そのものを問う出題は見当たりませんでした。 余力があるときに「ワクチン・血液製剤が対象」とだけ押さえておけば十分です。

医薬品等の広告規制

覚えることは2つだけです。

  1. 誇大広告の禁止:何人も、医薬品等の名称・製造方法・効能・効果・性能に関して、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない
  2. 承認前の医薬品の広告の禁止

誇大広告で具体例として挙げられるのが、「医薬品等の効能・効果・性能について、医師その他の者がこれを保証したと誤解されるおそれのある広告」です。医師が「効きます」と太鼓判を押したように見せる広告はアウト、と押さえてください。

主語が「何人も」である点もポイントです。製造販売業者だけでなく、誰であっても禁止されます。

第99回では医薬品の広告が出題され、「堕胎を暗示する広告を行ってはならない」「医薬関係者以外の一般人を対象とする広告方法が制限される医薬品がある」が正しい記述、「広告の内容についてあらかじめ厚生労働大臣の許可を受けなければならない」「承認前の医薬品の広告を行うことができる」が誤りでした。事前の許可制ではなく、事後的に禁止されるという形である点に注意してください。

血液法(安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律)

こちらは薬機法そのものではなく別の法律ですが、内容が密接に関係するのでここで扱います。

基本理念

血液製剤は国内自給の確保が基本です。第106回では「国内自給確保の基本理念が法律で規定されているのはどれか」がそのまま1問になり、答えは血液製剤でした。

実際の自給率は製剤によって差があり、輸血用血液製剤は100%を達成している一方、アルブミン製剤や免疫グロブリン製剤は100%に届いていません。

基本理念には「安全性の向上への配慮」「適正な使用」「安定的な供給」「施策の公正の確保と透明性の向上」などが並びますが、第99回では「できるだけ低廉な価格で供給されるようにしなければならない」が理念に掲げられていないものとして出題されました。安さは理念に入っていません。

採血の制限

  • 原則:何人も、業として人体から採血してはならない
  • 例外:血液製剤などの原料にする目的、治療行為などの目的であれば採血できる
  • 有料での採血等は禁止(売血の禁止)

まとめ

  • 薬機法の目的は保健衛生の向上。手段は①品質・有効性・安全性の確保、②指定薬物の規制、③研究開発の促進
  • 「医薬品等」=医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品の5つ
  • 医薬品は3つの定義のうちどれか1つに当てはまれば医薬品。日本薬局方に収められている物は医薬品
  • 医薬部外品・化粧品は作用が緩和。化粧品は人だけ・外用だけ
  • 医療機器と再生医療等製品は政令で定めるもの。医療機器のリスク分類は高度管理>管理>一般で、コンタクトレンズは高度管理。特定保守管理医療機器は別の軸
  • 指定薬物は厚生労働大臣が薬事審議会(2024年4月に薬事・食品衛生審議会から改称)の意見を聴いて指定。緊急時は意見を聴かずに指定可、包括指定も可、買う側の所持・使用も禁止。麻薬・覚醒剤などは指定薬物ではない
  • 日本薬局方は少なくとも10年に1回の全面検討を諮問(実際は5年ごと)。検定の対象はワクチン・血液製剤など
  • 広告は何人も誇大広告禁止、承認前の医薬品の広告も禁止
  • 血液製剤は国内自給の確保が基本。業としての採血は原則禁止、有料採血も禁止

次は医薬品の分類(要指導医薬品・一般用医薬品・医療用医薬品)を国試レベルで整理を読んでみてください。総則の左半分にあたるパートで、ここも頻出です。

動画で学びたい人へ

この内容は、YouTubeの講義動画でも解説しています。該当箇所から再生されます。

法規を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、法規という科目のほんの一区画です。実際には、薬機法の総則から薬局・製造販売業・医薬品の取扱い、そして社会保障制度までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全26回・約5時間34分。「この省令は誰に向けた基準なのか」「さっき出てきた登場人物が、どこで再登場するのか」が、条文の羅列ではなく流れとして入ってきます。バラバラに覚えていた制度が、1本の線になる感覚です。

法規のマインドマップPDF+解説授業セットは¥9,450。無料のサンプル動画とサンプルPDFがあるので、この「たどる」感覚が自分に合うかどうかは、先に確かめられます。

-医薬品医療機器等法(薬機法)

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