医薬品医療機器等法(薬機法)

承認後の安全対策(市販直後調査・再審査制度・再評価制度・副作用感染症報告)を時系列で整理【薬剤師国家試験】

非臨床試験から治験を経て、ようやく製造販売承認が下りて市販される。でも、話はそこで終わりません。治験は限られた人数・限られた期間でしか行えないので、市販後に初めて見えてくることがたくさんあるからです。今回はその「承認後の制度」をまとめて見ていきます。制度の名前を1つずつバラバラに覚えようとすると混乱するので、時系列で並べて覚えるのがコツです。

この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。

マインドマップで見る「承認後の制度」

承認後の制度のマインドマップ(再審査制度・再評価制度・市販直後調査・製造販売後調査等・副作用感染症報告制度)
承認後の制度のマインドマップ(再審査制度・再評価制度・市販直後調査・製造販売後調査等・副作用感染症報告制度)

まずは時系列で全体像をつかむ

承認後の制度の時系列図(承認→市販直後調査→安全性定期報告→4〜10年後に再審査→必要に応じて再評価、承認後ずっと副作用・感染症報告)
承認後の制度の時系列図(承認→市販直後調査→安全性定期報告→4〜10年後に再審査→必要に応じて再評価、承認後ずっと副作用・感染症報告)

図のように並べてみると、それぞれの制度の立ち位置がはっきりします。

時期 制度
承認直後 市販直後調査(6ヶ月)
承認後〜再審査まで 安全性定期報告
承認から4〜10年後 再審査制度
その後、必要に応じて 再評価制度
承認後ずっと 副作用・感染症報告制度

「今どの時期の話をしているのか」を意識しながら、以下を読み進めてください。

再審査制度:新薬の点検

対象は新医薬品

再審査制度のイメージは新薬の点検です。対象となるのは新医薬品で、定義は次のとおりです。

既承認の医薬品と有効成分・分量・用法用量・効能効果等が明らかに異なる医薬品

新医薬品にはさらに新有効成分医薬品、新効能医薬品、希少疾病用医薬品など細かい分類がありますが、分類名そのものを暗記する必要はありません。大事なのは、分類ごとに再審査期間が違うという点です。

覚えるべき期間は2つだけ

  • 新有効成分医薬品:原則8年
  • 希少疾病用医薬品:原則10年

まず8年を基準として頭に置き、希少疾病用医薬品はそれより長い10年、と覚えます。なぜ長いのかというと、希少疾病用医薬品は患者数が少なく開発も困難なため、優遇する趣旨だからです。期間が長い=データを集める猶予が長い=優遇、という理屈で覚えると忘れにくくなります。

安全性定期報告

再審査を受けるまでの間、製造販売業者は安全性定期報告を行わなければなりません。

承認後2年間は半年ごと、以降は1年ごとに、再審査期間が終了するまで報告する。

報告する内容は、後で出てくる使用成績調査などの情報です。

再評価制度:古い薬の点検

再審査が「新薬の点検」なら、再評価は古い薬の点検です。

すでに承認が与えられた医薬品について、現時点の医学・薬学等の水準に照らして、存在する価値があるかを必要に応じて判断する制度。

昔の基準で承認された薬が、今の水準で見ても有効性・安全性に問題ないかを確認する、という趣旨です。「必要に応じて」というのがポイントで、見直しが必要になった医薬品の範囲は厚生労働大臣が指定します。指定されたら受けなければなりません。

なお、国家試験では再審査と再評価の説明を入れ替えた選択肢が出ます。「再評価制度とは、新医薬品の承認後一定の期間を定めて有効性・安全性等の確認を行うものである」という記述は、再審査制度の説明なので誤りです。新しい薬=再審査、古い薬=再評価をセットで覚えてください。

市販直後調査:承認直後の6ヶ月

目的とソリブジン事件

市販直後調査は、市販された直後に重篤な副作用が起きていないかを調査・情報収集する制度です。医療機関に慎重な使用を要請することも含まれます。

この制度のきっかけになったのがソリブジン事件です。抗ウイルス薬のソリブジンがフルオロウラシル系抗がん剤と相互作用を起こし、発売後3ヶ月ほどの間に多数の死亡者が出た薬害事件で、これを契機に「市販された直後こそ重点的に見る必要がある」という発想が制度化されました。

期間と基準

  • 期間:販売開始後6ヶ月間
  • 調査の基準:GVP省令(製造販売業許可の更新要件にもなっている省令)

「6ヶ月」がどこから数えて6ヶ月なのかは、必須問題でそのまま問われたことがあります。承認からではなく販売開始からです。

GVP省令については製造販売業許可の種類とGQP・GVP・QMS基準で扱っているので、あわせて確認しておくと整理しやすくなります。

製造販売後調査等(GPSP省令)

再審査・再評価の申請資料は、どこからともなく出てくるわけではありません。製造販売後調査等で集めたデータが、その申請資料の一部になります。

使用成績調査

医療機関から収集した情報を用いて、診療における副作用の発現状況と品質・有効性・安全性の情報を検出・確認する調査。

使用成績調査は大きく2つに分かれます。

種類 対象
一般使用成績調査 使用する者の条件なし
特定使用成績調査 小児・高齢者・妊産婦など

特定使用成績調査の対象は、治験の第1相〜第3相で除外されやすく、データが集まっていない人たちです。だからこそ市販後に改めて調べる、という流れを押さえておくと、どちらがどちらか迷いません。

製造販売後臨床試験

臨床試験の第Ⅳ相とも呼ばれるもので、市販後に行う臨床試験です。市販後の試験ではありますが臨床試験でもあるため、GCP省令とGPSP省令の両方を遵守する必要があります。

GPSP省令

GPSP(Good Post-marketing Study Practice)省令は、製造販売後の調査・試験の基準を定めた省令です。

再審査・再評価の申請資料は、この基準に適合する調査や試験で収集されたものでなければならない。

GCP(治験)、GVP(市販直後調査を含む安全管理)、GPSP(製造販売後の調査・試験)と、似た略語が並ぶところです。どの時期の・何の基準かで整理してください。

副作用・感染症報告制度

報告制度は2つあります。誰から誰への報告なのか、義務なのか努力義務なのかを区別するのが最大のポイントです。

①企業報告制度(製造販売業者からの報告)

医薬品等の製造販売業者は、副作用・感染症等による疾病・障害・死亡を知ったときは、厚生労働大臣に報告しなければならない(義務)。

このとき、医療関係者は協力するように努める(努力義務)とされています。

報告の期限にはランクがあります。

期限 内容
15日以内 死亡など重篤なもの
30日以内 その他

②医薬品・医療機器等安全性情報報告制度(医療関係者からの報告)

医療関係者は、保健衛生上の危害の発生・拡大防止の必要があるときは、厚生労働大臣に報告しなければならない(義務)。

制度名が長いので覚えにくいのですが、「医療関係者から国へ」の報告ルートがこの制度、と押さえてください。こちらは努力義務ではなく義務です。①で医療関係者が「協力するよう努める」となっていたのと混同しないようにしましょう。

集まった情報はどう使われるか

  • 厚生労働省・PMDAなどから:安全性情報が発出される
    • 緊急安全性情報(イエローレター)
    • 安全性速報(ブルーレター)
  • 製造販売会社等から:医療関係者等へ情報を提供する努力義務
  • 医療関係者は、適正使用の確保のため、提供される情報を収集・検討・利用する努力義務

イエローレターとブルーレターの色と名前の対応は、そのまま問われることがあります。緊急=イエロー、速報=ブルーです。

製造販売業者・国等の責務

最後に、回収や廃棄に関する規定です。その他的な扱いですが、たまに出題されます。

誰が 何を
製造販売業者 自主的に回収するときは、回収に着手した旨を厚生労働大臣に報告
厚生労働大臣 緊急命令(医薬品の販売等の一時停止命令を出せる)
厚生労働大臣・都道府県知事 廃棄・回収の命令を出せる

緊急命令は厚生労働大臣のみ、廃棄・回収の命令は都道府県知事も出せる、という違いに注意してください。

まとめ

  • 承認後の制度は時系列で覚える(市販直後調査→安全性定期報告→再審査→再評価、副作用・感染症報告はずっと)
  • 再審査=新薬の点検、新有効成分医薬品は原則8年、希少疾病用医薬品は原則10年(優遇)
  • 安全性定期報告は承認後2年は半年ごと、以降1年ごと
  • 再評価=古い薬の点検、対象は厚生労働大臣が指定
  • 市販直後調査は販売開始後6ヶ月、基準はGVP省令、きっかけはソリブジン事件
  • 使用成績調査は一般/特定に分かれ、特定使用成績調査は小児・高齢者・妊産婦など
  • 再審査・再評価の申請資料はGPSP省令に適合した調査・試験で集めたものでなければならない
  • 報告制度は2つ。企業報告(15日/30日)と医薬品・医療機器等安全性情報報告制度。どちらも報告自体は義務
  • 緊急命令は厚生労働大臣、廃棄・回収の命令は厚生労働大臣と都道府県知事

これで「医薬品等の開発」は一区切りです。次は毒薬・劇薬の表示ルールと交付制限14歳未満(処方箋医薬品との違いに注意)へ進みましょう。

法規を、1枚の地図として頭に入れませんか

この記事の冒頭に載せたマインドマップは、法規という科目のほんの一区画です。実際には、薬機法の総則から薬局・製造販売業・医薬品の取扱い、そして社会保障制度までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。

解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全26回・約5時間34分。「この省令は誰に向けた基準なのか」「さっき出てきた登場人物が、どこで再登場するのか」が、条文の羅列ではなく流れとして入ってきます。バラバラに覚えていた制度が、1本の線になる感覚です。

法規のマインドマップPDF+解説授業セットは¥9,450。無料のサンプル動画とサンプルPDFがあるので、この「たどる」感覚が自分に合うかどうかは、先に確かめられます。

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