前回で「誰が扱えるか」を押さえました。今回は「どうやって国境をまたぐか(輸出入)」と「どうやって受け渡すか(譲渡譲受)」です。
この記事にはもう1つ、法規全体に効く大事な話が入っています。「譲受証・譲渡証が必要なものは、原則2年間保存」という覚え方です。法規では「◯年間保存」という数字が山ほど出てきますが、原則を1つ決めて、そこからの例外だけ覚えれば一気に整理できます。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。
Contents
マインドマップで見る「輸出入・譲受譲渡」

輸出入
麻薬
原則:麻薬輸入業者・麻薬輸出業者は、その都度、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。
例外(患者の携帯輸出入):自己の疾病の治療目的であれば、厚生労働大臣の許可を受けて輸出入できる。
「その都度」がポイントです。一度許可をもらえば以後は自由、ではありません。
そして全面禁止のものがあります。
ジアセチルモルヒネ(ヘロイン)とあへん末の輸出入は全面禁止。
向精神薬
向精神薬は種別で段階的に緩くなります。
| 向精神薬 | 輸出入の扱い |
|---|---|
| 第一種 | その都度、厚生労働大臣の許可が必要 |
| 第二種 | 輸出入の届出でよい |
| 第三種 | 不要 |
| 患者の携帯輸出入 | 定められた範囲では許可不要 |
第一種=許可、第二種=届出、第三種=不要。規制の強さがそのまま手続きの重さに反映されています。
患者が海外旅行に持っていくとき
ここは国家試験の頻出ポイントで、麻薬と向精神薬で結論が正反対です。
| 患者の携帯輸出入 | |
|---|---|
| 麻薬 | 厚生労働大臣(地方厚生局長)の許可が必要 |
| 向精神薬 | 許可不要(定められた範囲内) |
| 覚醒剤原料 | 厚生労働大臣の許可が必要 |
第106回 問77はまさにこれを聞いています。「患者が自らの治療のために、2週間程度の海外旅行に携帯する場合、地方厚生(支)局長の許可が必要となるのはどれか」── 麻薬・向精神薬・あへん・覚醒剤・大麻の5つから選ぶ問題で、答えは麻薬でした。
問題文に「なお、地方厚生(支)局長は、厚生労働大臣から権限が委任されているものとする」と親切に書かれています。「地方厚生局長=厚生労働大臣」と読み替えられるようにしておきましょう。
譲受・譲渡
麻薬:譲受証と譲渡証を交換して2年保存
麻薬営業者は、麻薬を譲り渡すときに譲受証と譲渡証を交換しなければならない。受け取った証は2年間保存する。
「麻薬営業者」は前回に出てきた言葉で、施用者・管理者・研究者を除いた麻薬取扱者のことです。要は業者間のやりとりにこのルールがかかります。
例外1:麻薬小売業者から患者へ
麻薬小売業者 → 患者のときは、麻薬処方箋が譲渡証の代わりになるので、交換は不要。
患者さんに毎回「譲受証を書いてください」とは言いませんよね。麻薬処方箋がその役割を果たしている、という整理です。
例外2:麻薬小売業者どうしのやりとり
原則:麻薬小売業者間(薬局どうし)で麻薬を譲り渡すことはできない。
例外:同一都道府県の区域内で、共同して都道府県知事の許可を受けていれば可能。
さらに、許可を受けていれば何でもやりとりできるわけではなく、条件があります。
- 在庫が不足して調剤できないとき
- 譲り受けの日から90日を経過した麻薬を保管しているとき(いわゆる不良在庫)
麻薬は返品がきかないため、「同じ県内の顔の見える薬局どうしで融通し合えるようにする」という趣旨の制度です。
この論点は第101回 問75で、「麻薬小売業者の免許を受けている薬局における麻薬の取扱いのうち、事前に許可を受ける必要があるのはどれか」として問われています。家庭麻薬の廃棄・麻薬卸売業者からの購入・麻薬処方箋に基づく調剤・同一都道府県内の薬局間での譲渡譲受・調剤済麻薬の廃棄、の5つが並び、事前の許可が要るのは薬局間の譲渡譲受だけです。
向精神薬:そもそも交換の規定がない
向精神薬には、譲受証・譲渡証の交換規定がない。
向精神薬は麻薬ほど危ないイメージのものではない、という感覚で押さえると自然に入ります。ここは「ある/ない」の違いなので、比較問題で落としやすいポイントです。
記録と届出
麻薬小売業者
| 内容 | |
|---|---|
| 帳簿 | 譲受・譲渡した麻薬の品名・数量などを記載し、2年間保存 |
| 届出 | 都道府県知事に毎年届け出る |
向精神薬小売業者
| 内容 | |
|---|---|
| 記録 | 譲受・譲渡した向精神薬の品名・数量などを2年間保存 |
| 届出 | 規定なし |
そして、記録すら不要なものがあります。
記録が不要な向精神薬
- 第三種向精神薬
- 処方箋により調剤した向精神薬
「処方箋で調剤したものは記録不要」は意外に感じるかもしれませんが、調剤録など別の形で記録が残るためです。第三種はよく問われるので、ここだけは確実に。
麻薬と並べると、向精神薬の緩さがはっきりします。
| 譲受証・譲渡証 | 記録・帳簿 | 毎年の届出 | |
|---|---|---|---|
| 麻薬 | 交換が必要(2年保存) | 帳簿を2年保存 | 都道府県知事へ毎年 |
| 向精神薬 | 規定なし | 記録を2年保存(第三種・処方箋調剤分は不要) | 規定なし |
「保存期間は原則2年」という覚え方
法規を通して「◯年間保存」がたくさん出てくるので、講義では次の原則を立てています。
譲受証・譲渡証が必要なものは、原則2年間保存。 例外は毒物劇物の5年だけ。
具体的に並べるとこうなります。
| 対象 | 保存期間 |
|---|---|
| 麻薬の譲受証・譲渡証 | 2年 |
| 覚醒剤の譲受証・譲渡証 | 2年 |
| 覚醒剤原料の譲受書・譲渡書 | 2年 |
| 毒薬・劇薬の譲渡文書 | 2年 |
| 毒物・劇物の譲渡書面 | 5年 ← 例外 |
「原則2年、毒物劇物だけ5年」。まずこの1行を覚えて、あとは「そもそも書面が要らないもの」(向精神薬の譲受証・譲渡証など)を別枠で覚えれば、この単元の数字はだいたい整理できます。
ただし、実際の国家試験ではこれ以外の年数もまとめて聞かれます。調剤録は3年、特定生物由来製品の記録は20年など、法律をまたいだ数字の比較は、法規頻出「保存期間・年数」まとめで表にしてありますので、直前期にはそちらを使ってください。
まとめ
- 麻薬の輸出入はその都度、厚生労働大臣の許可。ジアセチルモルヒネとあへん末は全面禁止
- 向精神薬の輸出入は第一種=許可、第二種=届出、第三種=不要
- 患者の携帯輸出入は、麻薬=許可が必要、向精神薬=許可不要
- 麻薬営業者は譲受証・譲渡証を交換して2年間保存
- 例外は①麻薬小売業者→患者(麻薬処方箋でOK)、②麻薬小売業者間(同一都道府県内+知事の共同許可、在庫不足または譲受から90日経過)
- 向精神薬には譲受証・譲渡証の交換規定がない
- 麻薬小売業者は帳簿2年保存+都道府県知事へ毎年届出。向精神薬小売業者は記録2年保存のみで届出なし、第三種と処方箋調剤分は記録も不要
- 保存期間は原則2年、毒物劇物だけ5年
次は麻薬の現場実務:処方箋の記載事項・容器表示と封緘・保管管理のルールを読んでみてください。薬局で実際に麻薬を扱うときの話に入ります。
法規を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、法規という科目のほんの一区画です。実際には、薬機法の総則から薬局・製造販売業・医薬品の取扱い、そして社会保障制度までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全26回・約5時間34分。「この省令は誰に向けた基準なのか」「さっき出てきた登場人物が、どこで再登場するのか」が、条文の羅列ではなく流れとして入ってきます。バラバラに覚えていた制度が、1本の線になる感覚です。
法規のマインドマップPDF+解説授業セットは¥9,450。無料のサンプル動画とサンプルPDFがあるので、この「たどる」感覚が自分に合うかどうかは、先に確かめられます。