前回は「何が麻薬なのか」を見ました。今回は「誰が扱えるのか」です。
麻薬取扱者は全部で11種類あり、一覧を眺めるとげんなりします。でも安心してください。国家試験で問われるのはごく限られたポイントだけです。「免許権者がどこで厚生労働大臣から都道府県知事に切り替わるか」と、「麻薬小売業者・麻薬施用者・麻薬管理者は誰がなれるか」、そして「免許の有効期間」。この3つに絞って押さえていきます。
この記事は、もともと解説授業の動画で話している内容を記事に起こしたものです。読むより耳から流し込みたい人は、解説授業のページに無料のサンプル動画があるので、先に雰囲気を確かめてみてください。
Contents
マインドマップで見る「取扱者と資格」

麻薬取扱者は11種類
条文の定義から確認します。
麻薬取扱者とは、麻薬輸入業者、麻薬輸出業者、麻薬製造業者、麻薬製剤業者、家庭麻薬製造業者、麻薬元卸売業者、麻薬卸売業者、麻薬小売業者、麻薬施用者、麻薬管理者及び麻薬研究者をいう。
麻薬営業者とは、麻薬施用者、麻薬管理者及び麻薬研究者以外の麻薬取扱者をいう。(麻薬及び向精神薬取締法 第2条)
「麻薬営業者」という言葉が後の記事(譲渡譲受)で何度も出てくるので、ここで押さえておきましょう。ビジネスとして麻薬を扱う人たちが麻薬営業者、医療や研究のために扱う人たち(施用者・管理者・研究者)はそこから外れる、という切り分けです。
免許権者は「消費者に近いかどうか」で切り替わる

| 免許権者 | 麻薬取扱者 |
|---|---|
| 厚生労働大臣 | 麻薬輸入業者、麻薬輸出業者、麻薬製造業者、麻薬製剤業者、家庭麻薬製造業者、麻薬元卸売業者 |
| 都道府県知事 | 麻薬卸売業者、麻薬小売業者、麻薬施用者、麻薬管理者、麻薬研究者 |
境目は「元卸売業者までが厚生労働大臣、卸売業者から先が都道府県知事」です。上流(製造・輸出入)は国、下流(流通・医療現場)は都道府県、という感覚で覚えられます。
実務上は、家庭麻薬製造業者と麻薬元卸売業者の免許は、厚生労働大臣から権限の委任を受けた地方厚生局長が出しています。国家試験では「厚生労働大臣」で構いませんが、問題文に「地方厚生(支)局長」と書かれていても同じことを指していると気づけるようにしておいてください。
誰がなれるのか(ここが本番)

覚えるのは、表のうち下の3行だけで十分です。
| 麻薬取扱者 | 定義 | 資格要件 | 免許権者 |
|---|---|---|---|
| 麻薬小売業者 | 麻薬処方箋により調剤された麻薬を譲り渡すことを業とする者 | 薬局開設者(薬局の許可) | 都道府県知事 |
| 麻薬施用者 | 治療の目的で麻薬を施用・交付し、麻薬処方箋を交付する者 | (歯科・獣)医師 | 都道府県知事 |
| 麻薬管理者 | 麻薬診療施設で麻薬を業務上管理する者 | (歯科・獣)医師、薬剤師 | 都道府県知事 |
麻薬小売業者=薬局
薬局開設者が申請すれば、都道府県知事が免許を与えます。定義の「麻薬処方箋により調剤された麻薬を譲り渡すことを業とする者」という言い回しは、そのまま問われたことがあります。
第106回 問76では「麻薬処方箋により調剤された麻薬を譲り渡すことを業とする者はどれか」と聞かれ、麻薬製造業者・麻薬卸売業者・麻薬小売業者・麻薬施用者・麻薬管理者の5つから選ばせています。定義の文言ごと覚えてしまいましょう。
麻薬管理者は薬剤師がなれる
施用者は医師系だけですが、管理者には薬剤師が入ります。ここが薬剤師国家試験で狙われるポイントです。「施用するのは医師、管理するのは薬剤師でもよい」と、役割で分けて覚えてください。
麻薬管理者を置かなければならない場合
麻薬診療施設(病院・診療所など)に麻薬施用者が2人以上いるときは、麻薬管理者を1人置かなければならない。
麻薬施用者が1人の場合は、その施用者が麻薬の管理業務も兼ねてよい。
「2人以上なら管理者を置く」という数字は頻出です。なお、薬局に麻薬管理者を置く義務はありません。麻薬管理者はあくまで麻薬診療施設のための役職です(実際、第111回の実践問題にも「薬局の開設者は、薬局に麻薬管理者を置き、管理させなければならない」という誤りの選択肢が出ています)。
免許の有効期間:麻薬は「翌々年の12月31日」
ここは計算問題として出しやすいところなので、丁寧にやります。
麻薬取扱者の免許の有効期間は、免許の日からその日の属する年の翌々年の12月31日までとする。(麻薬及び向精神薬取締法 第5条)
ポイントは2つ。①起算日は免許の日だが、②終わる日は12月31日で固定されている、ということです。だから「免許の日から3年」ではありません。
計算してみる
たとえば2026年1月19日に免許を受けたとします。
- 「その日の属する年」= 2026年
- その翌々年 = 2028年
- したがって有効期間は2028年12月31日まで
1月に取ったので、ほぼ最長の3年弱使えることになります。
逆に2026年12月20日に免許を受けた場合も、終わりは同じ2028年12月31日。こちらは約2年しかありません。
つまり有効期間は「最長でも約3年」。年の早い時期に免許を取った人ほど長く、年末に取った人ほど短くなります。「3年」と丸暗記せず、翌々年の12月31日という条文の形で覚えるのが安全です。
向精神薬取扱者:5年と6年

向精神薬のほうは、麻薬と違ってすっきりしています。
向精神薬輸入業者、向精神薬輸出業者、向精神薬製造製剤業者又は向精神薬使用業者の免許の有効期間は、免許の日から5年とし、向精神薬卸売業者又は向精神薬小売業者の免許の有効期間は、免許の日から6年とする。(麻薬及び向精神薬取締法 第50条の2)
| 向精神薬取扱者 | 免許権者 | 有効期間 |
|---|---|---|
| 向精神薬輸入業者・輸出業者・製造製剤業者・使用業者 | 厚生労働大臣(輸出入・製造) | 5年 |
| 向精神薬卸売業者・小売業者 | 都道府県知事 | 6年 |
製造系が5年、販売系が6年。この「5年・6年」の組み合わせは、毒物及び劇物取締法の登録有効期間(製造業・輸入業が5年、販売業が6年)とまったく同じです。あちらとセットで覚えると2回分得をします。
向精神薬小売業者は「みなし免許」
ここが麻薬との大きな違いです。
| 薬局が取扱者になる方法 | |
|---|---|
| 麻薬小売業者 | 薬局開設者が申請して、都道府県知事から免許をもらう |
| 向精神薬小売業者 | 薬局開設許可を受けると、自動的に免許を受けたものとみなされる |
麻薬は「ください」と言いに行く必要がありますが、向精神薬は薬局の許可を取った時点で自動的についてきます。申請が要るか要らないかで区別してください。
なお、第一種向精神薬を輸出入しようとするときは、その都度、厚生労働大臣の許可が必要です。輸出入の話は次の記事で第二種・第三種と並べて整理します。
まとめ
- 麻薬取扱者は11種類。うち施用者・管理者・研究者以外が麻薬営業者
- 免許権者の境目は「麻薬元卸売業者までが厚生労働大臣、麻薬卸売業者から先が都道府県知事」
- 麻薬小売業者=薬局開設者。定義は「麻薬処方箋により調剤された麻薬を譲り渡すことを業とする者」
- 麻薬施用者は(歯科・獣)医師のみ。麻薬管理者は薬剤師もなれる
- 麻薬診療施設に麻薬施用者が2人以上いるときは麻薬管理者を1人置く。薬局に麻薬管理者を置く義務はない
- 麻薬の免許の有効期間は「免許の日からその日の属する年の翌々年の12月31日まで」=最長でも約3年
- 向精神薬は製造系5年・販売系6年。小売業者は薬局開設許可で自動的にみなされる
次は麻薬・向精神薬の輸出入・譲渡譲受と保存期間の覚え方を読んでみてください。「2年間保存」という法規全体に効く原則が出てきます。
法規を、1枚の地図として頭に入れませんか
この記事の冒頭に載せたマインドマップは、法規という科目のほんの一区画です。実際には、薬機法の総則から薬局・製造販売業・医薬品の取扱い、そして社会保障制度までが、1枚の地図としてひと続きにつながっています。
解説授業は、その地図を端から端まで、実際にたどりながら話していく全26回・約5時間34分。「この省令は誰に向けた基準なのか」「さっき出てきた登場人物が、どこで再登場するのか」が、条文の羅列ではなく流れとして入ってきます。バラバラに覚えていた制度が、1本の線になる感覚です。
法規のマインドマップPDF+解説授業セットは¥9,450。無料のサンプル動画とサンプルPDFがあるので、この「たどる」感覚が自分に合うかどうかは、先に確かめられます。