勉強のポイント
鉄欠乏性貧血は、ヘモグロビンを作る材料のヘム鉄が不足して起こる貧血です。
ポイントは2つ。
- 鉄代謝=体の中の鉄の運搬
→鉄欠乏性貧血特有の検査値の変動が理解できる。 - 鉄の力価:2価・3価、体が必要なのはどっちか?
→治療薬や相互作用を理解できる。
鉄代謝と検査値
そもそも貧血とは
最終段階のヘモグロビンが減った状態で「貧血」と診断されます。
貧血状態でのヘモグロビンの検査値は、
Hb:~11g/dlを覚えておきましょう。
鉄欠乏の指標
鉄欠乏の指標は大きく分けると2つあります。
- 鉄代謝
:鉄の貯蔵や運搬に係る指標 - 赤血球恒数
:赤血球自身の「出来栄え」(大きさや中身)についての指標
鉄代謝
鉄代謝については、運送会社を考えればイメージ付きやすいです。
鉄は、肝臓や脾臓に貯蔵され(貯蔵鉄=フェリチン)、
トランスフェリン(上記のトラック)によって運搬され、
最終的にHbが合成されます。
指標
- トランスフェリンにFeを積んでいるものを血清鉄
- トランスフェリンにFeを積んでいないものを不飽和鉄結合能
- トランスフェリン(トラック)の台数が総鉄結合能
という3つの指標を使って貧血の診断をしていきます。
結果
鉄欠乏性の場合、頑張って鉄を運びたいので、
①まず、総鉄結合能(トランスフェリンの台数)は増えます。
②運び出すので貯蔵鉄(フェリチン)は減る
③不飽和鉄結合能(荷台の空いてるトラック)は増え
血清鉄(鉄を積んでるトラック)は減る。
赤血球恒数
赤血球恒数からわかることは、赤血球の大きさと中身の量です。
鉄欠乏性貧血の患者の
赤血球のイメージは、「小さくてカスカスなシュークリーム」です。
指標が3つあり、鉄欠乏性貧血では、3つすべての値が下がります。
アルファベットの略語も覚えてください。
(M=平均、C=濃度、V=体積、H=ヘモグロビン)
- 平均赤血球色素量MCH:中身のヘモグロビンの量です。
中身のカスタードが少ない - 平均赤血球容積MCV:赤血球の大きさ
シュークリームの皮も小さい - 平均赤血球色素濃度MCHC:ヘモグロビンの量/赤血球の体積
シュークリームの大きさに対するカスタードの量は少ない
治療
化学や生物でも出てきますが、ヘモグロビンに使われるヘム鉄はFe²⁺の二価の鉄です
食べ物から鉄分を取る時、Fe²⁺が吸収されます。
- 動物の赤身肉に含まれるのはFe²⁺で、吸収されやすいです。
- ほうれん草などの植物に含まれているのは3価の鉄Fe³⁺です。
Fe³⁺+e-→Fe²⁺に還元して取り込まれます。
つまり、植物由来の鉄を摂取→吸収するときに効果を発揮するのが
抗酸化作用(=還元作用)を持つビタミンCです。
治療薬は2価の鉄剤
- 経口では
クエン酸第一鉄、硫酸鉄を使います。 - 注射剤では
シデフェロンを使います。
また、鉄を入れすぎてしまった場合は、解毒薬としてデフェロキサミンを使います。
キレートして鉄を排出します。
デ:出す
フェロ:鉄
補足:
・第一鉄=2価の鉄(Fe²⁺)
・第二鉄=3価の鉄(Fe³⁺)